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ショートコメディ『〇〇くん』

ショートコメディ『冷汗くん』

作者: かげる

 汗っかきではない彼の名は冷汗れいかんくん。なのに、なぜ、名前が冷や汗なんだろう。冷や汗をかくって、意味がわからない。私は、文字通り冷や汗をかいたことがない。汗はかくが、冷や汗という汗はかいたことがないのだ。


「俺もそうだよ。冷や汗かいたことない。なのに名字が冷汗だなんて、誤解されてしまうね」


 きっと彼は、緊張したり、恥ずかしい気持ちになったことがないのだろう。だから汗をかかない。冷や汗をかかないのだろろう、と想像した。


「その想像は違う。俺は、緊張しいだけど、冷や汗という汗はかかない。恥ずかしくても同様だろうと思う。そんな精神状態に、汗なんかかかないよ。それどころじゃない」


 なるほど。たしかに、冷汗くんの言う通りだ。冷や汗という汗は、かかないのかもしれない。それどころではないのかもしれない。


 では、暑いときに流れる汗はどうだろう。彼の名の通り冷たい汗が流れるのではないだろうか。キンキンに冷えた……。


「そんなわけあるか! 俺をなんだと思ってるんだよ! キンキンに冷えた汗って! どんだけ温暖化しちゃった世界だよ、身体機能が発達し過ぎだ! キンキンに冷えた汗って! 温度調節機能が極端な身体!」

「……」


 なんか、つっこんでくれた。さっきから、私の独り言を返してくる……。冷汗くん、君が冷たい人間でないことは確かだよ。うん。私のようなクズとは大違いだ。日頃から、死ねとか言っちゃうクズとは大違いだ。君の心は、ハートフルだよ。死ね。


「俺に死ねとか言うやつは、ハートフルじゃない!」


 確かに。心と身体が冷えきった私と、心と身体と汗が温かい冷汗くんでは、比べくもない。絶対的で絶大な差が生じているのだろう。冷汗なのに、汗が温かい……。


「汗が温かいなんて、そんなわけあるか!」


 うん。やっぱりそこは、つっこむよね。うんうん。それでも、心と身体が温かい件については、つっこまないんだ……。へえ……。


「いや、つっこまないから。否定しないから、肯定してるとは限らないだろ。〇〇さんとの意思の疎通、難しすぎだろ。なんで、そこまで言われないといけないんだ。俺は、ただ、ツッコミたいことに向けてつっこんだだけだ」


 ……責められた。いや、責められたというか、それが彼にとっての常識なのだろう。なにも悪くない。悪いのは私だ。クズの私だ。地の文が、なぜか会話文になってしまう私が、悪いのだ。冷汗くん死ね。


「だから、なんで、自分を責めるかな。だからなんで死ねって言うの!?」


 ごめん。口が勝手に……。どうやら人間に自由意志はないらしい。哲学の時間だ。 

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