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記憶を失った僕と彼女たち  作者: 天笠愛雅
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予知夢

でもさ愛斗」


「ん?」


「予知夢ってやつでしょ?ただ事じゃないよ」

芽衣が、暗闇の中で心配そうに愛斗を気に掛ける。


「それは自分でも感じてるよ」


「誰かそういうのに詳しい人とかいるかなぁ」


「いやぁ、いないだろ…」


「そうだよね。信じてもらえるとも限らないし…」


「とりあえず自分で考えてみるよ」

2人の家が近くなってきたので、愛斗が別れの挨拶に持っていく会話を挟む。


「分かった。何かあったら言ってね」


「うん、芽衣もね」


「ありがとう、色々…」


「いや、気にしないで」


「でも、感謝してる。本当に轢かれてたらって思うと…」


「いいんだよ、そんなこと考えなくて。生きてるだけで十分なんだから。忘れていいよ、この事は」


「生きてるだけか…」

愛斗の家の前に着くと、芽衣はゆっくり立ち止まって、愛斗が言った言葉をしみじみと繰り返した。


「ん?」

愛斗は芽衣が何でその言葉を繰り返したのか分からなかった。


「愛斗が言うと説得力あるなぁって…」


「あぁ、そういうことね」

自分はかつて交通事故に遭った。だが、記憶というものを代償にしたが、幸いにも命を落とさなかった。

その事実が芽衣の中で、今回の事と繋がったのだろう。

愛斗はそう解釈した。


「だから、今日の事は忘れないから」


「ご自由にどうぞ」

芽衣は真剣に言っているのだろうが愛斗は半笑いでそう返した。


「じゃあそうさせて頂きます」

愛斗のふざけが混じった返事に、少し角が立った言い方で芽衣は応える。


「じゃあね、また明日」

愛斗はそんな芽衣に臆せず挨拶をする。


「うん、じゃあね!」

何事も無かったかのように芽衣は返し、そして2人はそれぞれの家に帰って行った。


愛斗は黙って家を出て行ったので、家族にどう思われているか心配だった。

しかし、心配なのは家族も同じだろう。

玄関を開けると美咲が仁王立ちで立っていた。


「どこ行ってたの?」

今回の美咲は、何の遠慮もなく訊いてくるようだ。


「ちょっとそこまで」

よくあるでたらめな言い訳だ。

この言い訳で通用する訳がないと、愛斗は自分で分かっていた。

でも、それは違った。


「あ、そう。お疲れ」

門番のように廊下に立っていたので、ちゃんとした理由を聞くまでどかないものかと思っていたので、すんなり美咲がどいてくれた事に愛斗は逆に驚いた。

靴を脱いで美咲の横を通り過ぎる。


「芽衣さんになんかあったんでしょ?」

愛斗は心臓がキュッとした。

自分の心が見透かされているようで。


「なんもなくはないよな。うん」


「まあ別に聞きはしないけど」


「そうか…」


「おやすみ、お兄ちゃん」

不気味なおやすみだ。寝ている間に刺されそうだと思うほどに。


「お、おう。おやすみ」

愛斗は義妹から逃げるように自分の部屋に戻った。

そしてベッドに突っ伏すように倒れこむと、そのまま眠りについた。

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