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記憶を失った僕と彼女たち  作者: 天笠愛雅
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カオス

家に着いた愛斗は、誰とも話さずに、無心で自分の部屋へ向かった。

ベットに深く座り、深い溜め息をつくと、ほんの数十分前に起こったことが本当に無意味に感じられた。

来ていないと分かってても、スマホを見て茜からの連絡を気にする。

どちらが悪いと一概に言えるわけではない。それぞれの言い分や思うことがあってのこの結果だ。

でも今の愛斗は、自分から連絡をしようと思えなかった。


「お兄ちゃん!ご飯は!?」

下から美咲の声が聞こえてくる。

正直、今は誰とも話したくない。

けれど体は正直で、アイスコーヒーしか飲んでいないから、お腹は空いている。

仕方なく愛斗は重い腰を上げ、ダイニングに行った。


「お帰り。いつの間に帰ってたんだね」

義兄の顔を見て、安心したかのような表情で美咲は言った。


「うん」


「ほら、食べよー」

いつもの無邪気な義妹は、どこか愛斗を慰めてくれるような気がした。

美咲にそんなつもりはないのだろうが、それでも愛斗は、今、義妹がいてくれて良かったと思えた。

美咲も母も、何も愛斗に訊かなかった。食事とテレビの音が聞こえるだけ。

愛斗はそんな無機質な時間に、違和感も感じず、むしろそれが良いとすら思えた。

いつも通り美味しい母の料理も、あまり味がしない。

夕食を食べ終えると、愛斗はすぐに部屋に戻った。

愛斗がふぅ、と息を吐いて横になると、スマホと目が合い、通知が来ていることに気づいた。

茜か?と一瞬思ったが、違った。


今日は本当にありがとう!


芽衣からのメッセージだ。

もはや応援に行ったことが今日のことだとは思えなかった。色々ありすぎた。

芽衣の応援、夏海の過去、茜の呼び出し...。

まさに混沌とも言える1日だった。

時刻は21時半くらい。

寝てもいい時間なので、芽衣への返信は寝たということにして明日しよう。

そう考えて愛斗は目を閉じた。

愛斗は、2度目の風呂には入らず、そのまま眠りについた。


「今日は本当に最悪だったな」

芽衣は街頭に照らされた暗い道を1人で歩いていた。

試合のことを忘れようとしても、忘れられない。

周りの暗さが余計に試合への考えを深くさせる。

芽衣がそうやって歩いていると、曲がるべき道を間違えて直進してしまった。

違和感に気づき、回れ右をして本来の道へと曲がる。


プーー!!!


芽衣には、クラクションの音が聞こえた。

が、彼女が気がついた時には、真っ赤なアスファルトが街頭に照らされて(うっす)らと見えていた。

そして、すーっと力が抜けていく。

目が閉じていく。

意識が遠のいていく。


アスファルトを芽衣の血が染めていく。

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