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記憶を失った僕と彼女たち  作者: 天笠愛雅
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今日も

だけど、茜の何に気づけばいいのか。

自分で言うのはおこがましいが、彼女は僕のことが好きだ。その好きという感情はそれ以上ない感情であって、それ以上気づいてあげれるものはあるのか。美咲の話を聞いて分かったような気でいたが、それは違ったようだ。

いや、違くない。美咲は言っていた。

素直に感謝してほしい。特別なことじゃないと。

些細なことに気づけばいいのだ。それは分かったはず。好きとか嫌いとかが全てじゃない。優しさや思いやりが、好きという感情に結びつく。

もちろん一目惚れという言葉もあるが、現時点で、愛斗は茜に惚れてはいない。優しさを与える側も与えられる側も、どちらもその愛によって好きという感情に変化する。愛と恋は別物だ。

それを信じて愛斗は茜と接しなければならない。ましてや愛斗に惚れている茜を傷つけるような軽率な言動は避けるべきだ。それが思いやり。

愛斗は自分のベッドに仰向けになってそんなことを考えていた。


明日も会おう。それが些細なことだと思うから。


翌朝、愛斗が学校の階段を見上げると昨日と同様に、茜がそこにいた。

愛斗は迷うことなく茜に近づき声をかけた。


「おはようございます」


茜は踊り場で立ち止まって振り返り、1段下にいる愛斗を見つめた。


「おはよう、愛斗」


愛斗は茜を見た瞬間に気づいたことがあった。髪を切ったと。そこまで思い切って切ったという訳ではない。整えたくらいだ。しかし愛斗は、その些細な変化に気づくことができたのだ。


「髪、切りました?」


「あ、うん。切ったわよ」

茜は少し驚いたような表情を見せたが、すぐに微笑んだ。


「愛斗が気づいてくれるなんて思ってなかったけど」


「僕だってそのくらいできるんですよ」


「そっか。で、何か用があったんじゃない?」


今日の目的は会うということ。茜に会った今、今日の目標は達成した。だが、それだけでは素っ気ないので、昨日のように誘ってみる。


「今日も放課後...」


続けて、どこか行きませんか、と言おうとした時だった。


「ごめんね、今日は用事があるの」

と、断られてしまった。


全て上手くいくわけじゃない。今日は茜のちょっとした変化に気づけたことだけでも十分だった。


「分かりました。ではまた」


「じゃあね」


そう言って2人は別れた。


「振られた?」

後ろから一緒に登校した芽衣がニヤニヤしながら声をかけてくる。


「なわけないだろ」

少しキレ気味で答えたが別にキレている訳ではない。むしろ今は機嫌がいいかもしれない。自分の成長が嬉しくて。

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