表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフ賢者の子育て日記  作者: 剣の道
第一章 新生児編
9/35

9.エルフ賢者と宿屋

「ワイバーンを狩ってきたら買い取ってもらえるのか?」


 私はこんな規則に従うつもりはサラサラないのでそう質問を投げかけてみた。


「ランク外討伐になりますので厳しい罰則がありますけど、買い取りますよ? 半値以下になりますけど……、一応言っておきますけどランク外討伐は降格や最悪退会処分の対象です」


「……。ならポーションの販売はどうだ?」


「あのですね。どこの田舎から出て来たか知りませんけど、どこの誰とも分からない人が作ったポーションなんて売れませんよ。効果があるのかすらわからないのに! ましてや何が入っているかもわからないんですから。そこらの孤児が作ったポーション飲みます?」


「……いや、飲まんな」


「ですよね」


「では、ポーションを売るにはどうしたらいいんだ? 私は見ての通り赤子を抱えているんだ。早急に稼ぎを出さねばミルクも飲ませてやれない」


「もちろん、ちゃんと薬師ギルドのライセンスをお持ちの方が作った物なら買い取りますよ。えーと。お乳出ないんですか?」


「私が産んだんじゃない。そもそもソウタは人族だ。……そうか。薬師ギルドはどこにあるんだろうか?」


「3軒隣にありますけど……登録料かかりますよ? まあカーヤさんはエルフですし薬師ギルドの登録はお勧め致しますけどお金、大丈夫ですか? 宿とか決まってます? お子さんもいるんですから行き当たりばったりじゃなくちゃんと計画的に物事を進めた方がいいですよ?」


「……」


 ちくせう。小娘に馬鹿にされるとは!! 言い返したいけど正論だ。宿も決まってないし、貰い乳もどうしよう。ポーションで荒稼ぎも出来ない現状手詰まりだ。いやいや、ここは奮発して薬師ギルドに行くべきだろう。


「ふぅ~。しょうがないですねぇ~。良い大人なんですからもう少しちゃんとしましょうよ。お子さん可哀そうですよ?」


 んぐ! キーー。そう言いながらもサラサラと木片に何やら書きつけたものを差しだしてくる。


「ここの宿屋に行ってみてください。受付嬢のサーシャの紹介で来たって言えば対応してくれますから。マーサさん、宿の女将さんですね、に相談すればお乳も何とかしてくれますから。」


「おお~! 気がきくな。正直助かる。さっそく行ってみよう。ではなサーシャ。」


「はいはい。お仕事がんばってくださいね。」


 サーシャ嬢に紹介された宿屋に向かって大通りを進んで中央広場から小道に入って、やや裏道に続く辺りにあるこじんまりとした宿屋に到着した。


「すまんが誰か居ないか?」


 そう声をかけると奥からでっぷりと太……げふんげふん。大柄な年配の女性が姿を現す。


「はいよ。お泊りですか?」


「ああ、受付嬢のサーシャから紹介を受けたのだが」


 そう言って渡されていた木片を渡す。木片の文字にささっと目を通した女将さんがため息一つ。


「うちはお困り相談所じゃないんだけどねぇ~。まったくサーシャったら。で、大体の事情は分かったけど物置小屋なら200ピコで使ってもいいよ。どうする?」


 物置小屋か……。背に腹は代えられない。この後薬師ギルドに登録料を取られる事を考えると出費は出来るだけ抑えねば。


「すまんがそこでお願いする。200ピコだな。3日分ほど頼む。」


 600ピコを渡して案内された部屋は本当に物置だった。3畳ほどの部屋に荷物が積まれている。マーサさんと二人で荷物をどけてみると小ぶりながらベッドが出て来た。


「あとは水拭きでもすれば何とか住めるだろう」


「いや、それなら。清潔(クリーン)で一発だ」


 生活魔法を唱えて埃やら汚れを掃除する。さすがに湿ったベッドはどうにもならないが寝る寸前に乾燥(ドライ)をかければいいだろう。


 渦を巻いて汚れや埃が私の前に集まってくる。そのまま魔力制御でゴミ箱にひょいっと入れて掃除完了だ。


「へぇ~。上手なもんだね。うちでもたまに生活魔法屋に頼むけど、こんなに上手じゃないねぇ~。そうだ! アンタ仕事してみないかい? うちの厠と厨房に魔法をかけておくれよ。……そうだね。腕次第だけど朝晩の食事付きでどうだい?」


「ぜひ!」


 荷物をベッドに置いて古老の杖は壁に立て掛けておく。もちろんソウタは抱っこ布に包まったまま私が連れて行く。次に連れて行かれたのは厠だ。


 ふむふむ。まあ奇麗にしている方だが如何せん年季が入っている。頑固な汚れもあるようだしここはちょいと魔力を多めにつぎ込んで清潔(クリーン)。キュルキュルッと渦を巻いて集まる汚れはそのまま便器にゴーだ。


「はい。終わったよ」


「まあ! 凄いじゃないアンタ! えーと、カーヤさんだっけ? 新品みたいじゃないか! そりゃ傷とかはあるけど汚れはキレイサッパリなくなってるよ」


 マーサさんは大喜びみたいだ。ふふふ、魔法は得意なのだよ。さあ、次行ってみようか! と得意満面で考えていたこともあったよ。厨房はさらに酷かった。


「こ、これは!」


「さすがにこいつは無理かねぇ~?」


 何十年分なんだと言うほどの油に埃が積み重なって真っ黒になって、さらにソースが垂れた痕やらもう表現に困る。よーし、やったろうじゃないか。賢者なめんなよ!


「厨房から皆さん出て! 秘伝のソースやらがあるなら外に持ち出して、蓋の出来るものは蓋して貰ってちょっと多めに魔力を練り込むから。人は入らないで、人体に影響あるかもしれないから」


 ふんぬと魔力を練り込んで清潔(クリーン)清潔(クリーン)生活魔法の二重展開。こんなの賢者になって攻撃魔法以外で初めてやったよ。


 ぞわぞわ、ベリベリってな具合に汚れが取れる取れる。うぉ~、こんなに取れたの見るの初めてかもしれない。染み一つなく新築かってな位にキレイになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ