SS01.エルフ賢者とエルフ式魔力操作法再び
SSの一発目です。次あ最後になります。最後まで楽しんで頂けたらと思います。
私の名はジーン。傭兵から冒険者への転職組だ。これでも傭兵協会ではそこそこ名の知れた方だ。そこいらの男では目も合わせようとしない。
そんな私だが、まあ、色々あって冒険者に鞍替えをして1カ月ほどか。Dランク冒険者試験を受けることになった。試験自体は問題なく合格した。
その時のカーヤさんは圧巻だった。最後の一太刀は、魔道師が放っていいものではない。トロルの首が一撃のもとに飛ぶなんて!
「カーヤさん、あの技は習っていない。白く光ってた」
「ああ、マジック・ソードだね。切れ味が凄かったろう?」
「教えて」
「ああ、構わないぞ。しかしあれを習得するには更なる魔力操作が必要だよ?」
私は震え慄いた。更なる『エルフ式拷問法』……だと!? これは悩む。カエデは切れ味には興味がないようだ。
しかし私は決断した。習得すべきであると。この時、決断した事を後悔する羽目になるとは思わなかった。
「カエデはいいのか? マジック・スフィアもあるぞ?」
この一言でカエデの参加も決定された。愚かな奴だ。この時の私はそんなことは、思いもしなかったがな。
まずは私達の実力を確認する事になった。カーヤさんとの対人戦闘だ。カーヤさんが使うのはやや大きな扇子だ。これで叩かれたなら部位欠損を受けた事になるそうだ。
私もカエデも達磨にされた。両手足を部位欠損した状態と言う事だ。……おかしいカーヤさんが早すぎる。あっという間の出来事だった。パシパシパシと叩かれて部位欠損扱いだ。
部位欠損をしたと言う事で両手足を縛られ後ろ手に四肢を拘束された。口にはボールが付いた猿轡までされ床に転がされている。
ここまでされてから気が付いたが、この後エルフ式拷問法がなされるのでは? ヤバい! 私は必死に暴れたが、この状態にされてからでは抵抗は無駄だった。
「さて、始めようか。エルフ式魔力操作法特別編だ」
私もカエデも慄いた。まんまと罠に嵌ったのだ。実力を確かめるなど必要ではなかった。私達をこの状況に追い込むために必要なだけだったのだ。
「まずはおさらいだ。ちゃんと出来ていればすぐに終わるぞ」
まずはカエデからだ。体は弓なりになり何やら叫んでいるようだが、この得体のしれない猿轡のせいで意味をなしていなかった。
カエデのおさらいはかなりの時間を要した。ばかな! 完璧に覚えたはずだ! なのになぜ! こうもカエデが魔力操作にてこずる!
「やっぱり、五体の感覚があるとやり難いよな?」
そう言う事か! この前は体の感覚を奪われた状態だった。だからか! やけにはっきりと魔力を感じられたのは!
「まあ、こんなものだろう。カエデ、上手いぞ。じゃあ特別編行ってみようか」
ばかな、ばかな、ばかな! これが特別編じゃないだと! ここまでがおさらい? うそだ、うそだ。カエデは十分苦しんだじゃないか!
私が見ている前でカエデが剥かれていく。あ、あれはなんだ!? ロウソクか! あんな太いロウソク見た事が無い!
「特別編は痛みじゃないぞ。熱さだ」
くっ! 殺せ! いっその事殺してくれ! カエデ、カエデ、意識はあるのか? ビクビクと痙攣を繰り返している。
ザバーっと水をぶっかけられ意識を回復した。カエデの目が恐怖を訴えているが、この拷問に終わりはない。習得するかしないかだ。
「よしよし。カエデ上手いぞ。じゃあ、次は三半規管を殺してからやるぞ」
そう言ってカエデが宙に吊り下げられ、恐ろしいほどの速さで回転させられている。そこにあのぶっといロウソクが垂らされ、魔力操作の開始だ。
気を失ったのか? カエデが動かなくなった。カーヤさんが振り返る。床に転がされたまま一部始終を見ていた私と目が合う。私は思わずフルフルと首を振ってしまった。
「やあ、おまたせ。ジーン。君が覚えたかったマジック・ソードを覚えようか?」
ここからの記憶が無い。おさらいは、カエデ以上に酷いものだったのに。まだ序の口だなんて。なんで私はマジック・ソードを覚えたいなんて思ってしまったんだろう。
意識が朦朧とする。私はなにをしているんだ。あっつ! いやいや嘘です。ちゃんと分かってるからカーヤさん止めて~~~。
無事私たち二人は、マジック・ソードとマジック・スフィアを習得できました。




