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エルフ賢者の子育て日記  作者: 剣の道
第一章 新生児編
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21.エルフ賢者とパーティー編成②

「ジーン、ずいぶん疲れているようだが大丈夫か?」


「ああ、金がなくてな……」


 バッとサーシャの方を振り向くと困ったような表情で言い訳をしてくる。


「あのですね。一昨日は手で引き千切った様なぐちゃぐちゃの薬草を持ち込まれて使えるものがほとんどない状態で、昨日はボアを持ち込まれたんですけど一刀両断されていて毛皮から内臓まで真っ二つでこれまた処理の方が手間が掛っちゃって売り物にならなかったんですよ」


 ソウタ、お前本当に加護持ってる? 母ちゃんがやっちまったのかい? ソウタを見詰めて思わず確認しちゃった。


 登録が済んで傍で話を聞いていたカエデが凄いです~とか目をキラキラさせてるけど聞かなかった事にしよう。


「じゃあ、行こうか……」


「はい!」「……」


 やけに元気なカエデと無言のジーンを引き連れて肩を落とした私はギルドを後にする。まずは基本の薬草採取からだ。街の外の出て、森に向かって半刻ほどで到着する。


「じゃあ、薬草であるセラム草の採取から教えるから良く見て覚えてくれ。これがセラム草だ。葉っぱと茎をまとめて持つ。ちょうど地面のところにナイフを入れて切り取る。簡単だろう?」


 二人は熱心に私の教える事を聞いていたようだ。関心関心。しかし一向に採取を始めようとしない。


「さあ、まずはセラム草の採取だ。やってみよう」


「あの、ナイフないです」「……ない」


 思わず膝がくず折れたのは仕方ない事だと思う。採取に来てナイフが無いふ? ぷぷっ。笑えないから! 仕方ないから私の大ぶりのナイフをジーンに小ぶりの予備ナイフをカエデに渡して始めさせた。


 私? 私くらいになるとナイフは無くても爪でちょいと切れば何とかなるんだよ。いやいや、普通の人でも出来るよ。


 しばらく見ていたけど、どうしてどうして上手くできるじゃないの。教えれば出来る娘たちじゃない。


「あ、ジーン。それ違うから。セイム草って言って似てるから気を付けて」


 三人でしばらく黙々と採取を続ける。だんだんと慣れて来たのか採取速度も上がって50束を越えた当りで私の『索敵』に反応があった。


「二人共手を止めて。『索敵』に反応があるんだ。ボアの番かな。狩るよ」


 二人を連れて森の奥に入っていく。居た! やっぱり番だ。


「(ジーン、一匹やれる? カエデはみてて。良く見ておくんだよ。どうやって狩るのかの見本だから)」


「(はい!)」「(任せろ粉々にしてやるよ)」


「(おい!)」


 すっ飛んで行きそうなジーンを『身体強化』と「筋力増強」で無理やり止める。カエデが私の姿を見て両手で口を押さえてびっくり眼で見詰めている。


「(粉々にすんな! キレイに狩れよ)」


「(……やればいいんだろ?)」


「(違うわ! やるんじゃなくて狩るんだよ)」


「(……どう違う?)」


「(狩ったら食べるの! 毛皮も売るの! キレイに殺さないと売れないの!)」


「(……難しいかもしれん)」


「(……じゃあ首を刎ねて。他にはかすり傷一つ付けないで。いい?)」


「(わかった)」


 まあ、結果、2匹ともジーンが首を一瞬で刎ね飛ばしたんだけどね。ロープで足首を縛って木に吊るして血抜きだ。


「ふぅ~。何とかなった。いい、良く聞いて。狩りは食べるためとか利用するためにするの。命を頂くんだから最大限利用出来るように少ない傷で斃すのが鉄則。分かった!」


「はい!」「……」


 まず刎ね飛ばした頭を回収する。顎の関節にナイフを入れてタンと頬肉を回収しておく。あとは血抜きが終わってからだな。


「じゃあ、こいつは後で解体するから、薬草採取―セラム草―を終わらせてしまおう」


 森の奥に入ったので群生地を発見した。解毒草も多数あったのでセラム草と同じ取り方で良い事を伝えてそちらも集めさせる。


 群生地なので採取が早い。早々にセラム草は100束完了し、間もなく解毒草も完了した。ここまでは簡単なんだよ。雑草刈り取るのと変わらないからな。問題はここからやや複雑になってくる。


 三日月草と満月草の群生地、―私もお世話になった―に移動して次のレクチャーに移る。


「うん、順調に数をこなせたな。セラム草と解毒草は簡単だから安いんだ。次は三日月草、これだ。これは葉っぱだけ刈り取る。茎に沿ってナイフを入れて行くんだ。こっちが満月草。これは逆に茎の部分だけを取る。葉っぱを手で開いて、双葉の上の部分辺りでナイフを入れる」


 二人は私の手元を見てやや眉間にしわが寄る。おいおい、そんなに複雑なことしてないよ? 一応もう一度最初から教えておく。今度は大丈夫そうなので、一気に集めさせる事にする。


 小一時間ほどでセラム草、解毒草、三日月草、満月草の採取をマスターした事になる。満足そうな表情を浮かべ、やり切った感が凄いなこの二人。


「じゃあ、集めた薬草を回収してボアのところに戻ろう。とっくに血抜きは出来ているだろうから解体だ。」


 二人が薬草の束を両手いっぱいに抱え、ポトポト落としては拾いを繰り返している。うん、知ってた。ナイフが無いふな人たちだもの雑納袋やら革袋なんて持ってきてる筈が無いよね。


「あー、これにまとめて入れて、運ぼう。薬草が痛まないように丁寧に入れるんだよ」

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