19.エルフ賢者と開眼
2話連続更新です。一度やってみたかっただけです。W
見習い神官と別れて次の日。マーサさんに相談してみた。そう、ソウタの目がまだ開いてないんだ。気になるだろ? 普通どのくらいで開く物なのかも知らないからそこら辺から聞いてみたい。
宿屋の一階にある食事処兼飲み屋(?)のテーブルに座ってソウタをあやしながら目の前であっちに行ったりこっちに行ったり忙しそうな女将さんを見詰める。
「ねぇねぇ、マーサさん。おーい、女将さん今日もきれいだね」
「なんだい。なんだい。気色悪いじゃないか。アンタがお世辞なんか使うの見たことないよ。そもそもエルフに綺麗とか嫌味かって感じだからね」
「あー、うん。その聞きたい事があるんだ。今、時間良い?」
「まあ、仕込みは旦那がやってるし、宿の前の掃除も終わったから、本当はベッドメイクなんだけどなんだい?」
「ソウタなんだけど、いつ目が空くの?」
「……そんなの気にした事ないさ。いつの間にか開くもんじゃないのかい?」
「そうだけど。普通はどのくらいなのかと思ってさ。ソウタを拾ってから1週間以上経つんだけどそろそろじゃない?」
「どうだかねぇ~。アンタ、ママ友居るだろう? そっちに聞いてみた方が早いんじゃないかい? なんせあたしが子育てしてたのはもうずいぶん昔の事だからね」
「そっか~。ありがとう。アンナに相談してみる」
女将さんへの聞き込みに失敗したから、次は順当にアンナだね。あの娘の坊やは半年ほど経ってるから完全に目が開いてるだろう。
と言う事でやってきましたアンナ宅。
「こんにちは~、アンナ居るかーい」
「はーい。どなたー?」
声と同時に扉が開く。いつも通りのアンナ。特に子供の世話をしていたとかの様子はない。
「カーヤです。ちょっとお邪魔してもいい?」
「おお、カーヤさん。あれ? また誰だかわかんなくなっちゃった?」
「いや、お乳の件は大丈夫だ。別件なんだ。ちょっと聞きたくて」
「ふーん。まあいいや、どうぞ。カーヤさんのお陰で掃除が楽になったから結構暇してるんだよね」
おじゃましまーす。キョロキョロして誰も居なさそうなのも確認しておく。まあ、誰か居てもいいんだけど姑さんとか居たら嫌じゃない?
居間のソファーに腰をかけると、アンナが台所に行ってお茶の準備をしてくれる。結構優雅じゃないか。お茶って結構な高級品だよ?
「はい、おまたせ。どうぞ。へへへー。凄いでしょ? お茶。旦那が頑張ってるからってママ友とお茶会でもしなよって買ってくれたんだ」
「おお、太っ腹な旦那さんだな。結構するだろ?」
「まあね」
そう言って指を一本立てた。10000ピコ! そんなに出したのか!
「うっそ! 10000! 超高級品じゃないか」
「~のところを5000ピコ」
「や、それでも高級品! 良いの飲んじゃって?」
「うん。カーヤさんのお陰だからね。トイレ掃除で決まったね。匂いが無いのは効果てき面でさ。姑さんも何も言わなくなったし、最近やさしいんだよね」
「おお、良かったじゃないか。私は姑が居ないから分からないけど結構ガチバトルなのか?」
「まあ、ちょいちょいね。それより何かあったんじゃないの?」
「ん? あ、ああ。ソウタの目がね。そろそろ開くものなのか聞きたくて来たんだ。お宅の坊っちゃんならもう開いてるんだろ?」
「そりゃうちは、半年も経つからね。ソウちゃんずっと目瞑ったままなの?」
「うん。まだ一回も瞳を見た事がないかな。そろそろじゃないかと思うんだけど、普通はどの位で開くものなんだ?」
「結構個人差が在るみたいなんだよね。うちので言えば完全に開いたのは2週間位だけど、その前にちょいちょい開けたりしてたかな。」
「そっか。ちょいちょい開けてたのか。なんかの病気かな? 医者とか連れていかないとダメかな?」
「いやいや、個人差があるって言ったじゃん。1ヶ月くらいかかる子もいるみたいだよ?」
「そっか。医者とか知ってる?」
「いやいや、だからね。まだ病気かどうかは早いって。まだ1週間でしょ? もう少し様子見でもいいんじゃない?」
「そっか。ポーションとか飲ませた方が良いのかな?」
「いやいや、ダメでしょ。赤ちゃんにポーションなんてダメだって。あ、そう言えば目やにとか脂(?)が目についてると赤ちゃんの力じゃ開けられなくなっちゃうらしいよ? ほら、脂とかって固まると硬くなるじゃない?」
「――!!! でどうすればいいの?」
「ちょ、ちょっと顔近いって。今やってみるからさ」
そう言ってアンナは席を立つと箪笥の中を物色し始めた。えーと、手拭はどこだったかなとか聞こえる。
「あったあった。ちょいこれを濡らして、カーヤさん魔法で温められる?」
「お安い御用だ。加熱」
「ふぉ~~~~~。あっつ~~~~~。カーヤさん手加減してよ! こんなに加熱したら使えないじゃんよ。持つことも出来ないよ」
「あ、ごめん。気合入り過ぎた。冷却」
「人肌、人肌だからね。冷まし過ぎちゃダメだからね。よ、よーし。ストップ!」
熱過ぎる手拭を今度は魔法でゆっくり冷やして行った。アンナが触りながら温度を確かめつつ冷やしたので大丈夫だろう。
「よしよし。これでソウちゃんの瞼を拭ってあげる。優しく優しく、目だから十分注意してね」
「う、うん。この端っこの方もやるの?」
「そこが重要じゃないかな。だってその辺、大人でも目ヤニが溜るでしょ?」
「お、おっけー。へこんでるから結構怖いね。ズブッとかなっちゃったらどうしよう」
「ひぃ~。怖い事言わないでよカーヤさん。そっと、そっとだよ。あたしだってやったことないから良く分かんないからさ」
何とか拭う事が出来ました。するとどうでしょう。今までピクリともしていなかったのにまあ、まるで花が開く様にぱちりと目を開けましたよ。
結局、脂で瞼がひっついちゃって開ける事が出来なかったんだ




