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エルフ賢者の子育て日記  作者: 剣の道
第一章 新生児編
15/35

15.エルフ賢者と洗礼①

 私が仕事を始めてから3日。ようやくEランクに昇格した。冒険者ランクも薬師ランクも両方だ。お金もそこそこ増えたのでソウタの産着、肌着なんかも買い足した。


 実は古着屋に行ったんだけど、驚きの事実! 子供の服って高い! 古着なのに! 1着5000ピコとか。最初はアンナとかのママ友に貰おうかと思ったんだけど、渋るからなんでかと思ったらそういう理由。


 でも仕方ないからさ、買ったよ。汚れもので更に安くなってるやつをね。『清潔』で新品同様の白さになったけど布の痛みまでは如何ともしがたかった。


 それから撹拌ビンとか薬研とか乳鉢のポーション作りに必要な道具類。くぅ~痛かったよ。しかしこの後ガッポリ稼ぐためには初期投資は必要だ。


 それでも数万ピコはまだ持ってるからちょっと一休み中。そんな時マーサさんが私に言うんだよ。


「カーヤさん。ソウちゃんはちゃんと洗礼受けてるのかい?」


 洗礼? ……おお、人族が5大神の加護を願ってやるやつか! ううん。やってない。だってソウタは主神の加護付いてると思うから。


「え? やってないですよ?」


「ああ、そんなこったろうと思ったよ。カーヤさん種族が違うから知らない可能性もあるかと思って聞いたんだよ」


「そう? 一応知ってるけど重要?」


 マーサさんは額に掌を当ててダメだこりゃ見たいなポーズ。え~そんなに? だって加護付いてるよ? おっといけない、これは内緒にしとかないといけないやつだ。


「あのねぇ。洗礼受けてないのはそれこそ人間じゃないって扱いになるんだよ。ものすごい迫害とかに会うからやっておきな。種族が違えばそこまでじゃないけど人間社会で暮らして行くなら絶対必要だから」


 そう言うもんか? なんか馴染みが無いから実感は湧かないけどマーサさんが言うんだから必要なのだろう。うんやっとこう。


「そう。ならやっとくよ。神殿に行けばやってくれる?」


「そうだね~。本当は予約とかしておいた方が良いんだけど、急ぎでやってくれると思うよ。カーヤさんエルフだからさ」


 実を言うと私は神官とか言うのが好きじゃない。絶対うそつきだもの。私は精霊視があるから加護とかも若干見えるんだ。


 大抵の神官には加護付いてないんだよね。神聖魔法とか言ってるけど普通の真言魔法と魔方陣の組み合わせだし。


 でも全部って訳じゃない。たま~に居るんだ。加護付いちゃってる人。そう言う人って大抵は位が低かったりするんだけど本人も気付いていない時もある。


 まあいいや。ちょっと行ってこよう。ソウタを袈裟がけに抱いて主神殿を目指す事にした。当然ソウタの洗礼は主神を祭る神殿だよ。寵児なんだから他に行くわけにはいかないよ。


 この街では領主館と並ぶ大きさの主神殿。名前は知らない。だって私はエルフの賢者だ。この世のすべてを解明するのが目的だ。


 神が居て大きな力を持っている事は知っているが神でさえ理を捻じ曲げたりはしない。理の内に居るってことだ。ならばその理ってのはなんだってこと。


 あ、いけない。そんな話はどうでもいいんだった。主神殿は領主館の横、街の北側の小高い丘の上にある。坂道を上ってようやく到着する。


 まあ神殿に着いたはいいけど、ひとけがない。普通参拝するのは、街の中央にある分殿の方なんだよね。こっちは特別な時にしか来ないからひとけもない。


「すいませーん。あの~洗礼って言うのをしたいんですけど。誰かいませんか~」


「はい。ご予約の方ですか? おかしいですね、今日は洗礼の予約なかったと思うんですけど……」


「あ、すいません。予約してないです。私の不注意で洗礼してなかったので急ぎ来たのです」


「まあ、大変! 生まれて直ぐにしないといけないものなのに! ――っ! あなたエルフ!」


「ええ。私じゃなくって縁あってこの子を育てる事になったのです。人族と習慣が違うものですからよく分かってなかったみたいで、お願いできますか?」


「ちょっとお待ちになってくださいね。洗礼だと私みたいな見習いじゃいけませんから司祭様のご都合を確認しないと。でも早くしないといけないし」


「え~と。あなたでいいですよ? だって加護持っていらっしゃるでしょう?」


「え? 加護? え? 何を言って……。え~~~~~!!! 私加護持ちですか!?」


「シィ~~~。そんな大声で言うとどこかに監禁されて聖女様とか言われちゃいますよ」


「――っ!」


「エルフは加護が少しだけ見える人が居るんですよ。私もその一人です。あなた、お願いできますか?」


「で、でも。私、見習いですよ?」


「見習いでも加護を持ってる方に洗礼して貰えた方がいいです。馬鹿なエルフが司祭様じゃなくても安くしてほしいとか司祭様の手を煩わせたくないとか適当にでっち上げて下さい。」


「……司祭様に確認してきますからちょっと待って下さい」


 おお、居たね~。まさか加護持ちが居るとは思わなかったよ。あの子きっと凄い事すると思うな~。ソウタと同じ加護持ちだもんね。でも寵児だからソウタの方が上なんだよ。えへん。

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