one
口数が少なく無愛想で目つきが悪い。
体がでかくて周りに敬遠されがちな和弘は、
実は案外わかりやすい。
きっと今日も言葉足らずで誰かに不本意な誤解をされたのだろう。
この夏の最高気温をたたき出しているであろう暑さに加え時折吹く風も生暖かく、不快感ばかりが募る学校の帰り道。
半袖ワイシャツの肩口で豪快に汗を拭う私の隣を歩く和弘は随分としょぼくれた顔をしている。
「コンビニ寄っていい?」
心ここに在らずな様子の彼の肩をトンっと叩き足を止めさせる。
返事を待たずコンビニに向かう私の後ろをのろのろ着いてきた彼の行先は少し日陰になるコンビニのゴミ箱の横。
前に、中に入ればいいのに、と言ったら買うのがないから入らなくていいと、正論なような律儀なような…なんとも反論しにくい返しをされたので、寒かろうが暑かろうが外で待たれても気にしないことにしている。
そんな彼に軽く手を振り私は店内へと足を踏み入れた。外の暑さが嘘のような涼しい空気。じとじとまとわりつく暑さが消え呼吸が軽くなる。
アイスケースを覗いてお菓子売り場を見渡し並ぶジュースを流し見してスイーツコーナーで足を止める。
――やっぱり今日はアイスにしよう。
店内を一通り歩きあれこれ悩んだ末にひんやりと冷えるアイスケースから濃厚チョコレートのアイスを2つ。
使い古した財布から額面ピッタリの小銭を払いレジ袋を断った変わりに雑にシールが貼られた2本のアイスを手に持って外へ出る。
自動ドアが開いたことにも私が近づいたことにも気が付かず、しかめっ面をして下を向いてる和弘はやはり何か後悔してるんだろう。
見た目に似合わず繊細すぎる彼の機嫌の取り方を私はよく知っている。
「はい!」
アイスを1つ視界に入るように差し出すとゆっくりと顔をあげて
「葵はさすがだな」
っていつもと同じように少しだけ照れたように笑うから私もいつもと同じようにこう言って得意げに笑ってみせる。
「当たり前でしょ」って。
当たり前に決まってる。
…だって今日のご要望は君の顔に書いてあるんだから。
『甘いものが欲しい』って。
何年君の要望を見続けていると思ってるのか。
心の中を知る術はないけれど、私に見せてくれるのなら君の要望は私が叶えてあげる。
何年も前に言った私の言葉をまだ君は覚えているのだろうか。
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