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突撃☆紅蓮隊!! 1―1. 浮遊塔の焼き鳥

「勇者から魔王に転職したので世界征服始めました」の外伝となります。(略して勇魔王)


カケルメインの冒険は今後外伝として書いていきます。

ここからは紅蓮隊は三人での活動・冒険が多くなるので本編では「こんな事がありました。」位にして外伝で書いていきます。



赤く色づいた窓から射す光が部屋の中を真っ赤に染める。

天井にぶら下がる豪華な室内灯はその光を失っていて、補助的に設置された魔導ランプと太陽の光が頼りなんだけど。

赤く色づいた光がその片方が失われようとしている事を物語っていた。


少し落ち着いてきたところで室内を改めて見渡す。

端から端まで僕たちみたいな子供の足とは言え、全速力で10秒位は掛かりそうだから相当大きい。

よく見ると部屋の中にはテーブル等の調度品が設置されていて綺麗な装飾品が壁に飾られていた。

窓は大きいが分厚く強化ガラスが、嵌め込まれているようだ。


この部屋には元々は僕らに倒されたゴブリンのパーティーがいたんだけど、意外にも室内は綺麗に清掃され整えられている。

いくつかの調度品に掛けられた禁止マークが、つい先日までここが観光客に解放された遺跡であることを物語っていた。


本当に観光施設のなかなら問題はなかったのだけど。

少し前にワイバーンの群れがここに巣を作り、その頃から塔は閉鎖されて魔物や魔獣が蠢く巨大なダンジョンと化してしまったらしい。


僕ら魔王アルベルトの配下である紅蓮隊は、師匠でもあるアルベルトと共にそのワイバーンの肉を獲りに来た筈だった。

だけど、そのアルベルトは今はここにいない。


「掃除しておいてね。」


そんな言葉を残してアルベルトは立ち去ってしまった。

こうして僕ら紅蓮隊の三人は巨大な塔の1階に取り残されている。

上の階から時折聞こえる叫び声にもにた音とガタガタという何かが走る音が僕の不安を掻き立てる。

アルベルトはこの部屋には結界を張ったと言っていたけど、それでもやっぱり僕らみたいな子供だけだと不安になる。


「カケル!!シルフィ!!す~っごいフカフカにゃ!気持ちいいにゃぁ。」


小さめの猫耳をぴょこぴょこさせながらウェンディがソファーの上でショートカットの黒髪を激しく揺らしながらピョンピョンと跳ねている。

ウェンディは基本的に、元気で考えるより先に体が動いているタイプの女の子だ。


昔、あれを家でやった時にカグヤ姉さまの顔が鬼の形相になったことは今でもはっきりと思い出せる。

あんなに高そうなソファーの上でなんてことを、、、ってか。


「ウェンディ!さわっちゃダメって書いてあるじゃないか!」

「じゃあカケルはずっと立っていれば良いにゃ!ウェンディは優雅に座ってくつろいでおくにゃ!」


口を尖らせて悪態をつくと、シルフィに顔を向けた。


「シルフィもこっちに来てくつろぐにゃ~。」

「え、わ、私は~、、、。」


シルフィが伏し目勝がちに僕を見てふわふわとした癖のある肩まで伸びる栗毛を指で弄りながらモジモジし始めた。

ウェンディとは正反対で大人しくあまり活発な感じてはない。

座りたいけど僕に遠慮しているのだろうな。


「これからどうしよっか。」


僕はそういいながらウェンディの正面の椅子に座る。


「あ。」


シルフィは驚いたように僕を見る。


「なんだ、結局座るのにゃ。」

「うるさい!」


ウェンディが勝ち誇った顔で僕を見てくるのがもの凄くウザイけど、今は我慢だ!


「シルフィも座って作成会議しようよ。」

「あ、は、はい。」


僕に促されてシルフィも椅子に座った。


「カケルはバカだにゃ~。」

「いきなり、なんだよ!」


いきなり馬鹿にされた、しかもウェンディに!

これほどの屈辱があるだろうか!!


「会議ってなんにゃ?お掃除しろって言われたにゃ?だから掃除すれば良いにゃ。」


頭が痛くなる!


「掃除って、この塔の魔獣とか全部倒しておけって事なんだよ!普通に掃除するって意味じゃない!」

「全部のお部屋を綺麗にする為に魔獣も倒すのにゃ、何か違うかにゃ?」


くそ!絶対に違うのにやろうとしていることが同じな事が腹が立つ!


「わ、わかった!もう、それで良いから!魔獣退治の作成会議ね!」


イライラを必死に押さえ、深い深呼吸をする。

こんな事で喧嘩していて一つも先の階に進めないなんて絶対にダメだ!

アルベルトが帰った来たときに未だ一階でボンヤリ遊んでいる僕らを見たときに何て思うだろう。

そして紅蓮族が魔王アルベルトの配下になっただけでなく、僕が弟子にしてもらえた事を心の底から喜んでくれた姉の顔を思い出す。

あの夜の出来事は忘れない、、、絶対に。

僕は姉さまの、そして、ついでにアルベルトの期待にも応えなくちゃいけないんだ!!


「と、とりあえず戦い方はさっきのゴブリンと同じで良いと思うんだ。シルフィが強化をかけてくれたら僕が先行してターゲットを取る。その間にウェンディがヒーラみたいな遠隔を倒す!」

「はい!」

「じゃ、話してないで早く上に上るにゃ!!」


ウェンディが上に上りたくてウズウズしている。

多分、、、いや、絶対に、僕の話は聞いていないんだろうなぁ。


「カケル君、と、とりあえず上の様子を見に行こう?」

「わかったよ。」


僕が半ば諦めにも似た想いで立ち上がると、ウェンディはピョンッと跳ねて、シルフィはゆっくりと立ち上がった。


「さ、行こう!僕達の力をアルベルトに見せつけてやろう!」

「全部やっつけるのにゃ!お役にたつにゃ!」

「き、気をつけて進もうね。」


三人の誰も、この部屋にとどまろうと言う意見持っていないようだ。


「精霊達よわたし達を守って!防御魔法:《精霊の加護スピリッツプロテクション》」

「猛き精霊よ我が刃となれ!強化魔法:《ダイレクトアタッカー》」


シルフィが効果時間の切れた強化魔法を再びかけ直してくれる。

見た目にも戦闘向きじゃないシルフィでさえ震えながらも先に進もうとしている。


僕達が一番恐れているのは魔獣でもワイバーンでもなく、あの二人に見放され捨てられちゃう事だ。


特にシルフィは、つい最近家族を全て失ってアルベルトとアイリさんに拾われたってウェンディが言っていた。

帰る場所を失ったばかりシルフィにとって、あの二人に捨てられちゃう事は僕ら以上の恐怖なんだろうな。


勿論、あの二人がそんな事をする訳がないんだけど。

僕は悔しくって情けなくなって唇を噛み締めた。


早く強い大人になりたいな。

そしたら僕もシルフィを守ってあげられるのに。


僕は悔しさを噛み締めながら一歩一歩階段を上り始めた。

カケル君達の成長は今後外伝に描かれていく事になると思います。

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