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あけましておめでとうございます。


年も明けたので、前回のあらすじを書いときます。


___


我は転生したらしい。

ここはきっと前世から遠く離れた未来だな。(間違い)

これから我は主人やアルダス様のような騎士を目指して頑張るのである!



 あの決意表明から数日後。

 我は食卓に座って窓辺一杯に咲く花をボーと見ていた。

 花は確か、か... かわらなでしこ、だとかいう名前だったはずだ。母上がこの前言っていた。

 ひらひらしていて可愛らしい花である。


「ねぇ、まーちゃん。いい加減元気出してよ」


「...ああ、そうだな...」


「ほら、お姉ちゃんと遊ぼ?」


「...ああ、そうだな...」


「ねぇってば!」


「...ああ、そうだな...」




 ───────




 さて、では現状理解が追いついていない皆々のために、あの後のことを少々語ろうか。


 決意表明の後のことを、な。



 あの後、姉上はひとしきり混乱してから、気まずそうに視線を泳がせて、


「えーっと、まーちゃん。あのね。騎士は、今、存在しないと思うんだ」


 と言った。


 その予想外の言葉に我が己の耳を疑っている間に、姉上はご丁寧な事に、母上にまで確認をとってきてくれて......。



 どうしよう。

 思い出したらなお一層 落ち込んできたぞ。



 ま、まぁ、その時もまた、今と同じように落ち込んだのだ。

 いや、今よりも、か。


 数日間何もする気が起きないくらいには落ち込んだのだ。


 何せこの約3年間の人生で、ようやっと決めた目標を一瞬で否定されたのだからな。

 短時間で決めた目標とはいえ我なりに結構しっくりときていたのだ。


 そして現在、である。



「ほら、“ ぽじてぃぶ ” に、考えようよ」


「...ああ、そうだな...」


「んん〜!もう!話を、聞けぇー!」


「...ああ、そうだ、にゃっ...!?」



 突然両頬に衝撃が走ったかと思えば、窓辺──右斜め前を向いていた視線を顔ごと強制的に真横に向けられた。

 我の右隣には姉上の席があって、子供用に座高の高くなっているそれに立ち上がった姉上が我の両頬に手を伸ばして挟んでいる。



「...姉上?やめた方がいいのではないか?落ちたら、危ないぞ?」


「そ、それはそうかもだけど...。そうじゃなくて!私は!話を聞けって言ってるの!」


「話なら、ちゃんと聞いているが...」


「聞いてない!あと口調!」


「む...」


「ねぇ、ほら、“ ぽじてぃぶ ” に考えよ? “ ぽじてぃぶ思考 ” だよ」


「...ぽじてぃぶ...?」


「え、えっとね。ま、前向きに、って意味だよ。うん」


「...前向き、ね」



 この状況をどうやって前向きに考えろと言うのだろうか。

 何をどう考えたって、現実として “ 騎士 ” という職業自体がないのであるから、騎士にはなりようがないではないか。


 そう考えた我の思考が伝わったのか、姉上は不満そうな顔をして我の頬から手を離し、とりあえずといった様子で椅子に座りなおした。


 ひとまず “ 危ない ” ということは聞いてもらえたようで、なによりである。



「むぅ、分かってないでしょ」


「...だって、現実問題、騎士は存在しないのだから...」


「そうじゃなくて。...うーん、何というか、まーちゃんは “ ()()()騎士 ” になりたいわけじゃないんでしょ?」


「騎士にはなりたいけど......ただの?」


「えっと、つまりね。まーちゃんは “ ()()()()()()()()()騎士 ” になりたいんじゃないかってこと」


「うん、そうだよ」


「だったらさ、“ 騎士 ” にこだわらなくても “ アルダス様みたいな人間(ひと) ” になればいいじゃん」


「...アルダス様みたいな、人間(ひと)?」


「うん。だって多分まーちゃんには “ 騎士 ” より “ アルダス様みたいな ” の方が重要なんでしょ?」


「......そうだね。それも、いいかもしれないね。...いや、それがいいぞ!!」



 考えてみればそうだ。

 我が騎士になろうと思った原点は、『折角人間になったのだから、主人やアルダス様のようになろう』ではないか。

 ならば別に騎士に(こだわ)る必要はないではないか。


 ハハッ。

 騎士が存在しないという事実に衝撃を受けすぎて失念していたぞ。


 しかし流石は姉上だな!こんな事を気がつかせてくれるだなんて。


 我より遥かに歳下なのになぁ。

 ...ぬぅ、我もしっかりとしなくては。



「それにね。日本には、警察とか自衛隊とか騎士に似た職業があるんだよ。もし騎士が諦めきれないならそれを目指してみてもいいんじゃないかな」



 意気込みながらも椅子から飛び降りると、姉上が食卓に頬杖をついて優しげに微笑みながらそう言った。


 そうだな。それもあるではないか。

 思えば騎士が存在しないのなら、その代わりの職業があるはずだった。


 それを目指そう。そうしよう!


 よし、そうと決まったら訓練しなくてはな。

 公明正大、清廉潔白、文武両道。素晴らしき人間になるべく特訓である。

 まずは何から始めるか......文字の勉強か?

 ああ、そうしよう!体力づくりをするにも何の予定もたてていないからな。


 では、さしあたり絵本の置いてある子供部屋に向かうとするか!



「ああ、そうだな!ありがとう姉上!大好きだ!」


「──にゅ!?ちょ、ちょっと待って、まーちゃん!それ、もう1回言って!口調なおしてもう1回!!ねぇ待って!」



 背後で姉上が何かを言っていた気もするが、興奮していた我はそれに気がつく事が出来なかった。


短いのにこんなに待たせて申し訳ないです...。

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