プロローグ
___駿河 馬鈴(3歳♀)は “ できる子 ” であった。
3歳の子供にしては滅多に騒がないし、ものの分別だってそれなりについて、周囲の人が “ 賢い ” と認める子供であった。
言葉を覚えるのだって早かった──これには少々問題もあったが......しかしそれでも “ 賢い子 ” である事に違いはなかった。
好き嫌いだってしないし、駄々っ子になんてそうそうならない。
世話を焼かせるような事だって滅多にしないし、むしろ同い年の子供と一緒に置いておけば彼女の方が世話を焼いている始末であった。
とはいえこれくらいの “ できる子 ” であればさして特別でもない。
何もない子供でもこれくらいはあっておかしくない程の “ 賢さ ” である。
しかし彼女は違った。
この “ 賢さ ” にはちゃんとした理由があった。
彼女には、前世の記憶がまるっとそのまま綺麗に残っていたのである。
それはやろうと思えば “ できる子 ” を超えて “ 天才 ” さえも超えて “ 鬼才 ” になれる程の大きなアドバンテージだと言えるだろう。
しかし、それほどのアドバンテージがありながらも彼女が “ 鬼才 ” でも “ 天才 ” でもなく “ できる子 ” の域に収まってしまっているのは、
その彼女の前世の記憶がこの現代とは全く異なる世界──つまり、異世界の記憶であるからに他ならない。
しかも、馬の。___
ちなみに私が何もない子供にあっておかしいと思う “ 賢さ ” は、生まれた時から言葉を理解しているとか、何も説明しなくても初めから理解しているとか、10人の人の話を一度に聞けるとかそんな感じです。