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宇宙艦隊所属パイロットの奥様は魔女  作者: ディープタイピング
第13章 第二子誕生と魔女変革編
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#95 妹セシリアの家出と魔女登録制度

「両舷前進最微速、王都宇宙港第47番ドックまで、あと800!」

「繋留ビーコン捕捉、進路修正、右2.3度!」


地球(アース)760に帰ったのは、会戦から2日後のことだった。


やっと王都宇宙港に帰ってきた。これでしばらくは、安穏とした日々を送れるはずだった。


が、家に帰ると、ちょっとした騒動が起こっている。


「…でさ、あんた、これからどうするつもりよ。」

「私、働く!どうにかしてこの王都に住むの!もうヴェスミア王国なんて田舎は真っ平御免よ!」


戦から帰ってきた私のことなどそっちのけで、リビングでマデリーンさんとやりあってる声が聞こえる。相手は、マデリーンさんの異母妹、セシリアさんだ。


「…何やってんの?」


帰って来たばかりで事情が飲み込めない私は、マデリーンさんに聞いた。


「ああ、おかえり。あのさ、聞いてよ。セシリアのやつ、ヴェスミア王国の首都グラスターを出て来ちゃったのよ!」

「ええっ!?それってもしかして、家出じゃないの?」

「そう、父上に行き先も告げず来ちゃったらしいのよ…全く、伯爵家の令嬢が家出しちゃうなんて、どうなってるのよ!」


同じく家出経験のあるマデリーンさんに言われても説得力がないが、ともかく、セシリアさんは家を出て来たらしい。


「私嫌なのよ、ヴェスミア王国なんて!未だに牛車が人を運んでるのよ!こっちは宇宙港も大きいし、王都には車だって走ってるし、おまけに店や学校だってできたというじゃない!もう私、決めた!絶対この王都に住んでやる!」

「何言ってんのよ!あんたが生活できるわけないでしょう!諦めてグラスターに帰りなさいよ!」

「そういうお姉様だって、15の時に家を出て、こうして優雅に暮らしてるじゃないの!だったら私だってなんとかなるわよ!」

「うう…い、言ってくれるわね…」


おとなしい性格の妹さんだと思ったが、意外と気が強い人だったらしい。それにしても、マデリーンさんと張り合うとは、やはりこの2人は姉妹だ。


「ともかく、王都に住む住まないは別として、今夜はどうするの?」

「野宿だってなんだってしますよ!ここまで来る間に私、バス停や茂みの中で野宿して来たんですよ、男爵様!」


ああ、やっぱり気が強い妹だ。母親が違うらしいが、ここまで強気なところがそっくりということはこの性格、父親譲りなのか?


「いや、王都で野宿はまずい。うちに余っている部屋があるから、そこで寝泊まりすればいいよ。」

「ちょ…ちょっと、あんた!ダメよそんなの!甘やかしちゃダメでしょう!」

「お姉様は黙ってて!って、本当にいいんですか、男爵様!?お部屋借りても!」

「いいよ。ただし、条件がある。」

「じょ、条件!?まさか私に愛妾になれというんじゃ…」

「そんなこと要求するわけないでしょう。あなたの父上、エグバード伯爵様に連絡する。それが条件。」

「ええっ、父上に!?そんなことしたら、連れ戻されちゃうじゃないの!」

「セシリアさんが王都にいるんなら、エグバード伯爵様だってこのうちにいてくれる方が安心してもらえると思う。その間に、王都で住む場所を見つけるなり、グラスターに帰るなり、決めればいいでしょう?」

「ううっ、そ、そうですね…分かりました。じゃあ、その条件で…」


セシリアさんはこの条件をのんだ。カロンさんにお願いして、適当な空き部屋に案内してもらう。


「…あんたまさか、セシリアを側室にでもするんじゃないでしょうね。」


マデリーンさんまでこんなことを言ってきた。私は応える。


「もし側室を迎える気だったなら、セシリアさんじゃなくても候補はいたでしょうが。でも今までだってそんなことしていないし、今後もそんなつもりはないよ。」


だいたいこの屋敷には、カロンさんにクレアさん、少し前にはレアさんだってこの屋敷に住んでいた。普通の男爵ならば、確実に一人くらい愛妾にしていてもおかしくはない状況だが、私はそれをしていない。それを知っているマデリーンさん、少しは納得してくれたようだ。


そこで私は、スマホでエグバード伯爵に連絡する。


「…というわけで、今うちにいるんですよ。しばらくこちらで預かるので、心配なさらないようお願いします。」

「ああ、そうか。ダニエル男爵殿のもとに行ってたとはな。分かりました。セシリアのこと、よろしく頼みます。でも男爵殿、お主がよければ、セシリアをマデリーンに次ぐ第2夫人として迎えてくれても、わしゃ一向に構わないのだが…」


どうしてここの星の人は、すぐに愛妾だの側室だのと勧めたがるのか?とりあえず私は、丁寧に断っておいた。


ということで、セシリアさんはこの屋敷にしばらく住むことになった。30もある部屋のうち、まだ使われていない14の部屋の1つをセシリアさんに貸すことにした。


で、セシリアさんはその翌日から活動を開始する。手始めに、宇宙港の横の街を散策し始めた。


どうやらセシリアさんには、一つの願望があるようだ。それは、活躍する女性になること。我々風に言えば、キャリアウーマンになりたいらしい。


王国最強魔女のマデリーンさんの妹らしい願望だが、これと言って特技があるわけではないらしい。マデリーンさんの妹とはいえ、魔女ではない。


街に出たところで、何かが見つかるわけでもなく、ただ毎日珍しいものを見て回るだけの日々が続く。こんなので、本当に何かが見つかるのだろうか?


セシリアさんと一緒に街に出たことがある。好奇心旺盛なセシリアさんは、周りをきょろきょろと見ている。それに合わせて、ユリエルもきょろきょろしている。好奇心旺盛なこの2人、見る方向があまりにも同じすぎて面白い。


「ねえ、そろそろ諦めたら?ただ毎日街を見てるだけで、あんたのいう活躍する女なんてものにはなれないわよ。」

「うるさいわね、お姉様ったら!いいのよ、絶対見つけてやるんだから!」


気の強い姉妹同士、張り合う毎日が続く。


ところでこの王国では、魔女にとって新たな動きがあった。それは、魔女の登録制度が始まろうとしていた。


最近の魔女ブームや、重力子エンジンの改良技術への貢献で、魔女をこの星の「資源」として保護し、育成しようという動きが出始めていた。そのためには、魔女の実態を把握しなくてはならない。そこで行われるのが、この登録制度というわけだ。


魔女として登録されれば、生活困窮者ならば生活の保護が受けられる。また、就職や学校の斡旋もある。今まではどちらかといえば冷遇されていた魔女達だが、立場は一転、急に優遇へと動く。


魔女を資源扱いするのはどうかと思うが、これで魔女の待遇が上がるきっかけになればと、私は思う。


しかし、魔女を登録するにあたって問題がある。


それは、魔女が素直に登録に応じない可能性が高いということだ。


なにせ今まで散々差別の対象とされてきた魔女という存在。魔力の弱い二等魔女なら、わざわざ魔女であることを隠して生きているケースも多いだろう。それを国家権力に握られることに抵抗を覚える魔女は多い。


そこで、王国最強魔女の登場である。マデリーンさんが登録したとなれば、王国中の魔女達の心は傾くのではないか?それに、マデリーンさんは「王都魔女会」のリーダーでもある。魔女会に所属する魔女が一斉に登録すれば、より王国の魔女たちの決断を促すはずだ。


というわけで、早速マデリーンさんは魔女登録に向かう。


王国で最も有名な魔女が、魔女登録名簿の第1号として登録する様子をテレビで放送することになった。続いてロサさんやサリアンナさん、クレアさんやレアさん、ミリアさんなど、王都魔女会の皆さんも登録することになった。


そこには、アンリエットさんやエマニエルさんといった、これまでは魔女であることを隠していた貴族のお嬢さんも含まれる。これを機に魔女であることを公にするようだ。


テレビカメラの前で調子よくふるまうマデリーンさん。登録用紙に名前等を記入し、それを役場の窓口に持っていく。


「じゃあ、この王国最強の魔女で、勇者の私、マデリーンは、ただいまから魔女として登録します!」


などといちいち解説して窓口に向かうマデリーンさん。


「はい、受付はこちらです。」


窓口の女性が手招きをする。マデリーンさんはその手招きに導かれ、窓口に向かう。


マデリーンさんは窓口に書類を渡そうとする。その時だった。


「…なんであんた、ここにいるのよ…」

「はい?どうなさいましたか?お姉様。」


なんとその窓口にいたのは、セシリアさんだったのだ。

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