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#26 戦いの後

3日かけて、地球(アース)760に着いた。


王都上空にさしかかる頃、いつもの飛行物体をレーダーが捉える。距離6000、速力85。


だが、今回は飛行物体が一つ多い。そちらは速力70。多分、ロサさんだ。


「艦長、これよりいつもの任務に参ります。甲板への立ち入り許可をお願いします。」

「相変わらずだなあ。そろそろああいうのをやめるように言ってやってくれ。おかげで、もう1人増えてしまったじゃないか。まあ、あちらの旦那さん共々、甲板への立ち入りを許可する。」

「ありがとうございます。では…行ってまいります。」


アルベルト少尉にも声をかけて、甲板に向かう。


上空1000メートルほどだが、風は強い。まずは私の妻から飛んできた。


「ちょ…ちょっと!?何あの黒いのは!何があったのよ!」


艦の左側にある被弾痕にマデリーンさんも気づいたようだ。


「ああ、あれねぇ…ちょっとやばかったんだよ、今回は。」


それを聞いたマデリーンさん。艦橋の前でみんな見てるというのに、御構いなしに抱きついてきた。


遅れて、ロサさん登場。同様に、アルベルト少尉に抱きついてきた。甲板の上で抱きしめ合う2組の夫婦。1万隻の我が艦隊でも、この艦でしか見られない光景だろう。


宇宙港のドックに接続した駆逐艦6707号艦。こいつの我々が勝手に呼んでいる艦名は「クレープ」だが、今は「焦げクレープ」だ。早速修理が行われることになった。


そういえば、サリアンナさんは飛んでこなかった。なんとなく気になったので、マデリーンさんに聞いてみた。


「ああ、彼女はこんなに高く遠くまで飛べないのよ。せいぜい自宅からショッピングモールあたりまでを飛ぶのが精一杯。でも多分、今頃宇宙港のロビーにいるわよ。」


マデリーンさんの言った通り、宇宙港のロビーにサリアンナさんはいた。


ロレンソ先輩の姿を見つけると、サリアンナさん、なんと我々の前だというのに、御構いなしにロレンソ先輩に抱きついた。


「もう…心配したんだから…このまま帰ってこなかったらどうしようかって…」


いつもはロレンソ先輩を怒鳴り散らしているイメージだが、今日は全く違う顔を見せてくれる。こんな可愛らしいサリアンナさんを見たのは初めてだ。


だが、今回ばかりはそういうカップルが多い。このロビーには、無事を確認し抱き合うカップルがたくさんいた。砲撃長とエドナさんも抱き合っていた。


「砲撃長殿!なにいちゃついてるんですか!家でやってください!家で!」

「う…うるさい!いいんだよ!俺は!」


モイラ少尉、先日砲撃長に怒鳴られたお返しをしていた。


ところで、駆逐艦6702号艦が沈んだという報を、マデリーンさんも知っていた。ニュースで報道されたらしい。通りでお互いの無事を喜び合うカップルがたくさんいるわけだ。


…しかし、増えたな、カップル。うちの艦だけで何組いるんだ?こんなにいたのか?


モイラ少尉によれば、もう10組以上のカップルがいるようだ。相手は同じ地球(アース)401出身の民間人だったり、この星の騎士の娘さんだったり、奴隷市場で買ってしまった人だったり、駆逐艦艦内の乗員同士だったり。今回も戦場告白でひと組誕生していたんだった。なお、プロデュースはモイラ少尉だ。


この艦には、私とアルベルト、ロレンソ以外に、魔女の恋人を持つ人がいるそうだ。えっ!?うちの艦にもう1人、魔女の相方を持つ人がいるの?聞けば、砲撃科の中尉さんだそうで、王都に住むこの魔女さんとは近々結婚する予定らしい。


なおその人は魔女は魔女でも、二等魔女なんだそうだ。なるほど、だから飛んでこないわけだ。今度その中尉に、声をかけてみようかな?


遅れて到着した駆逐艦6710号艦の乗員もロビーに着いた。ローランド少佐のところには、イレーネさんが駆け寄る。こっちの艦もカップルが多い。


すっかり我々の艦隊の人間も、ここに根付いてしまった。それだけに、駆逐艦6702号艦の件は、実に嘆かわしいことだ。会えなかったカップルが、この周辺に何人かいるはずだ。


マデリーンさんと一緒に、宇宙港のホテルの20階にあるレストランに行く。せっかくだからとアルベルト少尉とロサさん、ロレンソ先輩とサリアンナさん、それに砲撃長とエドナさんも誘った。


タダ券がたくさんあるので、せっかくだからみんなで生還祝いにぱあっとやろうと、マデリーンさんが提案した。そうだな、どうせ持っててもなかなか使う機会がないし、こういう時くらい使わさせていただこう。


レストランに行くと、エイブラムとミリアさんもいた。なんだこの2人、ここでよく会うけど、しょっちゅうここにきてるのか?


「おい!エイブラム!なにやってるんだ、こんなところで!」

「おお!やっぱりきた!多分来るんじゃないかって、ミリアと一緒に待ってたんだよ。」


エドナさんがミリアさんを見て驚いていた。


「あれ?ミリアさん、ちょっとふっくらしてますね。それに男の方とご一緒されて…」


ああ、そうか。エドナさんはエイブラムと一緒になった後のミリアさんに会うのは初めてなんだ。


「ええ!?ご夫婦になられたんですか?おめでとうございます!」


今更ながら、エドナさんからお祝いされていた。


「お前にしちゃあ、洒落た店を知ってるじゃないか。しかもタダ券を持ってるなんて、いったいどういうわけだ?」


砲撃長が私にタダ券の出所を聞いてくる。


「まあ、いろいろあったんですよ。野暮なことは聞かず、食べてください。このお店のステーキは美味しいですよ。」


せっかくの美味しいステーキをいただくのに、いちいちタダ券の出所の話なんてしたくはない。


「そうだ、ダニエル。ちょうどいいタイミングで、お前んとこのロヌギ牛の肉がここにあるんだが、食べていくか?」

「ええ!?もうあるのか?ロヌギ牛。」

「試食用に、ここに持ってきたんだ。ちょうどいいから、お前の知り合いにも、それを食べてもらうってのでどうだ?」

「もちろんだ、是非食べてみたい!」


まさか、今日ここでロヌギ牛が食べられるとは思わなかった。生還祝いにはふさわしい食事だ。


「なんだ!?そのロヌギ牛ってのは!?」


砲撃長が聞いてくる。


「艦隊戦の前に食堂で話したじゃないですか。海賊の事件のきっかけになった、あの村で作っているブランド牛ですよ!」

「ああそうだ、思い出した!女海賊のあれだな。」


頼むから、でかい声で海賊なんてことを言わないでくれ。ここにいる他のお客さんに、ロヌギ牛に変なイメージが植え付けられてしまう。


「ロヌギ牛って、ロヌギ草だけで育ててるの。」

「いや、それだと肉質が落ちるらしい。ほどほどがいいんだよ。」


マデリーンさんがエイブラムと話している。横では、ミリアさんがもしゃもしゃと嬉しそうにステーキを食べている。この人、すっかりここの食生活に馴染んでしまったようだ。


あの艦隊戦からわずか3日。こんな平和な場所に帰ってきたことを、ミリアさんの顔を見て実感する。


そんなことをしてるうちに、ステーキが運ばれてきた。


ステーキ皿には、二つの肉が置かれている。


「味を比べていただくため、帝国牛も一緒にお出ししております。小さい方のお肉がその比較用の帝国牛になっております。どうぞ、召し上がってください。」


早速、私はロヌギ牛を食べる。


なんだろうか?ナイフを入れると、少し柔らかいというか、肉全体がふわっとした感じだ。


口に入れると柔らかい肉、でも重厚感のある味。何というか、このギャップがかえって肉の味を強調する。


帝国牛も美味しい。が、意外性というか、そういうものがない。普通の高級肉、そう表現するのがふさわしい。


味には大きな違いがない。元々が帝国牛だからだろうが、この最初のふんわり感のもたらす意外性がこの肉の売りだ。


「…不思議なステーキね。なんていうのかしら?柔らかいけど、重いというか、そんな感じね。」


マデリーンさんも、私と同じことを感じているようだ。


「どうだ!?面白い肉だろ。これを国王陛下に召し上がっていただこうと思ってるんだ。」

「ええ!?国王陛下に!?」

「そうだ。なんでも、この王国にはいいお肉がないそうで、いつも社交界や晩餐会に出すのは、帝国から取り寄せた牛肉ばかりだと嘆いておられるらしい。その点、これは王国内で作られた牛の肉。絶対、喜ぶと思うんだよ。」


牛というのは、肉牛になるまでにだいたい30ヶ月くらいはかかるらしい。そのうちたった1ヶ月育てただけで「王国の牛」と言い張るのは少々無理があるように思うが、これだけ差が出れば十分別物だと主張できそうだ。


先日の社交界では、高慢ちきな男爵がいた。あの男爵に「私の肉ですが、何か?」と言ってやりたい。エイブラムの提案は、悪くない。


ロヌギ草ビジネスも順調なようだ。ダイエット食というより、健康食品としてのイメージで売り込んでるらしい。ビタミンが豊富らしいから、非加熱処理で取り出したロヌギ草エキスを混ぜたデザートやソースなどを生み出して、地球(アース)401で売り出しているらしい。


おかげさまで、ダミア村、ミリア村のロヌギ草収入は増えつつある。それが還元されて、村の生活環境も変わりつつある。特にミリア村には、人々が戻りつつある。


ロヌギ草を宇宙港まで運ぶのは、馬車を使ってるそうだ。なぜ、わざわざ馬車なのか?トラックでいいんじゃないの?


エイブラム曰く、この辺りは道が悪くて、トラックが通れないそうだ。それに馬車を所有する人々が多いから、そちらに頼むのが一番いいらしい。ミリア村は元々交易で栄えた村だから、馬車が立ち寄るにはちょうどいい。


おかげで、再び交易が盛んになりつつあるようだ。


そんな話をエイブラムから聞く。それにしても、私なんかよりエイブラムを領主にした方が、ずっとうまく領内経営してくれるのではないか?私はそう思う。


実際、領主そっちのけで私の領地を好き放題しているようだ。まあ、悪いことではないから、しばらく好きにさせておくか。


「ああ~美味しいお食事でした~。また呼んでくださいね、男爵様。」


相変わらず調子のいいモイラ少尉。ちなみに今回の食事は試食会ということで、またタダ券を使うことなく食べられた。ということで、モイラ少尉にこの余ったタダ券2枚をこっそり渡しておいた。


「さあ、帰るよ!グズグズするんじゃないよ!」


いつもの調子に戻ったサリアンナさん。ロレンソ先輩を引き連れて、帰って行く。


砲撃長とエドナさんも、仲良く帰って行った。側から見れば、ごく普通の仲睦まじい夫婦だが…私は裏の話を知っているから、どうしても変なイメージで見てしまう。


で、我々夫婦もレストランをあとにする。マデリーンさん、いつもの宇宙港売店の、ふんわりスポンジケーキを買うのを忘れない。


バスで帰ってもいいが、ホウキを持ったままでは乗りづらいし、生きて帰ったことを実感したかったこともあって、宇宙港から自宅まで、2人で歩いて帰ることにした。


もう日が暮れてきた。麦刈りの季節からもう一月が経ち、日が沈むと一気に寒くなる季節だ。


歩いていると、前からペネローザさんが歩いてきた。ああ、そうか。ここはあの会社の社員が部屋を借りている大型アパートの近くだった。


ということは、その隣を歩いているのが、あの噂のレーガンさんか。


アルベルトと同じ雰囲気だというから、もっと暗い人物を想像していたが、近くで見ると意外と明るそうな人物に見える。


「ペネローザさん、こんにちは。」

「あ、あのこれは…ああ、ダニエル様でしたか。こ、こんにちは。」


何か気まずいことでもあったのか、妙に焦っている。いや、彼女はいつでもこの調子か。


「こちらは?」

「ああ、レーガンって言います。よろしく。」


挨拶をするレーガンさん。スパッと短い言葉だけで会話をするスタイル、紛れもなくこれは、アルベルトの雰囲気だ。なるほど、喋ってみるとよく分かる。


「お2人でどちらへ?」

「ああ、ええっと、仕事帰りにショッピングモールのお店に行って…今その帰り道なんです。ええと、私達、同じアパートですし…」


もじもじしながら話しているところが妙に可愛らしい。彼女が宇宙港の貨物用ドックで、10トンを超える荷物を軽々と持ち上げる魔女などとは、到底思えない。


それにしても、村の隅っこでひっそりと暮らしていた頃に比べると、随分と顔色もいい。雰囲気も良くなってきた。


「と、ところでダニエル様?どうしたんですか?こんなところを歩いているなんて。」

「ああ、宇宙港からの帰りなんです。」

「宇宙港?宇宙に行ってたんですか?」


うーん、平和だ。ここから130光年先でドンパチやってたなんて、まるで知らないようだ。


「うちの旦那、戦から帰ってきたばかりなのよ。」

「ええ!?だ、大丈夫なんですか?刺されたり斬られたりして、怪我してるんじゃないですか!?」


いやペネローザさん、我々の戦では剣や槍は使わないんですよ。


そんなたわいもない会話をして、2人と別れる。手をつないで帰るペネローザさんとレーガンさん。この2人、このままうまくいきそうだな。


そのアパート住人がもう一組現れた。


「あれ!?マデリーンさんにダニエル男爵さん。どうしたんですか?こんなところで?」


アイリスさんだ。アランさんもいる。


「戦場からの帰りですよ。マデリーンさんと一緒に歩いて帰ってるところなんですよ。」

「あ!そうか!あの星雲で艦隊戦をやったんですよね。ご苦労様です。大勝利だったようで、何よりです。」

「そう言われても、うちの艦は被弾するし、私は戦闘中は哨戒機での任務だったし、あんまり勝ったって気分じゃないんだよね。」

「ええ?被弾したんですか?あの船。」

「アンテナをやられただけで、中は大丈夫だったけどね。」

「そうなんですか…大変な戦いだったって、ニュースでやってましたけど、本当に大変だったんですね。」

「それはそうと、2人揃ってどこに行くのよ!?」

「え?あ…あの私達、同じ会社で、同じアパートだし、一緒の方角にたまたまですね…」

「いやあ、ダブルベッド買ったら、大きすぎて玄関通らなくって、返品処理してきたんですよ。ダメですね、適当に買っちゃあ。」

「バ…バカ!あんたもうちょっと空気読んで喋ってちょうだいよ!」


相変わらず適当なアランさんと、妙に必死なアイリスさん。


「よかったわね、今度は告白、上手くいって。」

「え?いや、あの、実はですね…」

「僕の方から告白したんですよ。君、おっぱい大きくて可愛いから、僕の好み。付き合ってみない?って。」


さすがのマデリーンさんもドン引きだ。ストレートすぎる上に、どちらかというと小さめのマデリーンさんにはややショッキングな言葉だ。


「…ということなんですよ…まあ私もどうせ独り身だし、面白そうなやつだからいいかなって思って。あんまりデリカシーないやつですけど、なんていうか、そういうところが逆に好きになってきてですね…」


顔を赤くして話すアイリスさん。良かった。これでもう、飛び降りることはなさそうだ。


「でも、あのときマデリーンさんが言った通りでしたね。まさか私が告白されるなんて、夢にも思っていませんでしたよ。ほんと、人生って分からないものですね。」

「え!?あのときって、飛び降りようとしたときのこと?」

「もう!あんたはいいの!さっさと帰るわよ!」

「はいはい。」


ぷんぷん歩くアイリスさんに、寄り添うアランさん。随分タイプが違う2人だけど、なんとなくいい組み合わせだと思う。


「…私のって、ちっちゃいけど、あんたそれで良かったの?」


さっきのアランさんの言葉を気にしているうちの魔女。


「…いや、私はむしろ、小さい方が好きだから。」


これを聞いて安心するマデリーンさん。


しばらく歩くと、今度はマドレーヌさんの登場だ。しかも、見知らぬ男の人と一緒に歩いている。


「ありゃ!男爵様ではありませんか!どうしたんですか?こんなところで。」


本日3度目の質問だ。しかも、揃いも揃ってあの貿易業者従業員ばかり。


「戦場の帰りですよ。宇宙港から歩いて帰ってるんです。」

「いやあ、ご苦労様です!大変ですね!剣だの槍だのを振り回してお疲れだというのに、その上今度は歩いて帰るだなんて。男爵様、帰ってゆっくり奥様のお膝元で寝てくださいね!」


相変わらず調子がいいマドレーヌさん。


「ところで、横にいる人は誰ですか?」

「ああ、この人?誰に見えます!?」


そんなこと急に振られても、なんて答えを期待してるんですか?


「正解は…じゃじゃーん、マドレーヌの未来の旦那様、ブッシュでーす!」


急に男が喋り出した。えらく高いテンションだ。


「何言うてんねん!私の主人はアイリス様ただ1人!誰がお前なんか旦那にするかいな!」

「お前、知らへんのか?お前の購入代金、アイリスさんはこっそり会社の経費で落としてたで。つまりや、お前の主人はうちの会社!俺はそこの社員!つまり、お前は俺の奴隷っちゅうことや!」

「な…なんやて!?じゃあ私は、会社の持ち物やったんか!?これがほんまの社畜…」


頭が痛くなってきた…頼むから、漫才風の会話をやめてくれ。


「ああ、すいません。勝手に持ちネタを披露してしまって…」


急に我に帰るブッシュさん。普通に喋る限りは、好青年といったイメージだ。


「ブ…ブッシュさんは、地球(アース)401から来た方なんですよね?」

「そうですよ。ダニエルさんと同じロージニア出身です。アイリスさんと同じく、会社の公募で応募して来たんですよ。」

「でもまた、なぜこの星に来ようって思ったんですか?」

「そうですね、本社がちょっとつまらなかったんですよ。それで刺激を求めて、この星に行こうって思ったんです。」

「へえ。で、刺激的な人に出会ったと?」

「いえ、最初はただ忙しいだけの会社だったんですよ。でもある日、今日からうちの社員が増えました!ってアイリスさんが言い出したんです。で、現れたのが彼女、マドレーヌさん。いきなり自己紹介が、奴隷でーす!ご主人様についていきまーす、なんて言うから、思わず興味持ってしまって…」


変な興味の持ち方だ。まあ、地球(アース)401には絶対にないシチュエーションだろう。


「でも、マドレーヌさん、アイリスさんにべったりじゃなかったっけ?」

「そうですよ、でも最近はアイリス様はアランさんにべったりなんで、邪魔しちゃ悪いかなあって思ってたら、ブッシュさんに声かけられて、一緒に喋ってるうちに意気投合して…」


これくらい分かりやすい意気投合っぷりは初めてだ。気が合う間柄とは聞いていたが、合いすぎだ。


2人と別れる。手をつないで歩く2人。こっちもお揃いの2人だ。それだけは間違いない。


で、ようやく家に着いた。宇宙港から我が家まで、30分の道のりのはずが1時間近くかかってしまった。


3日ぶりに帰る我が家。だが、まるで久しぶりに帰って来たかのような感覚だ。


前回の戦闘の時もそうだったが、あの戦場での出来事がまるで嘘のように感じてしまう。


でもあの時、もし我々が負けていれば、地球(アース)401と760とは分断され、今頃は大変なことになっていたはずだ。


多くの人々は気づいていないだろうが、あの戦闘によってこの平和な光景が保たれたのだ。戦闘に参加し、帰り道で出会った人々を見て、私はつくづくそう感じる。

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