トーエン公爵家
緩やかな風を感じながら馬車に揺られることしばらく
訓練場から街道を北に向かい市街地を抜けた頃
一際大きな屋敷が見えてきた
わたしの家、トーエン公爵家
我が家はわたし達が暮らすスペースの他に
有事の際には住民の避難場所とするべく広い敷地を持っている
馬車がすれ違える広さの正門を抜けて
正面に噴水がありその向こうに母屋がある
その右隣が屋敷に住まう使用人達の宿舎
左隣が家臣団の宿舎
噴水から東側が馬小屋とその練習場で
西側には家臣団の訓練場がある
まぁ先程まで訓練していた施設より大分小さいけれど
型の訓練などはここでやっている
ちなみにわたしの部屋は三階建ての母屋の二階、西側にある
マリオの操る馬車は噴水をぐるりと周り、屋敷の入口の前で停車した
すると間もなく屋敷の玄関を開けてメイドや執事といった使用人達が出迎える
「「お帰りなさいませ、アリシア様」」
「ただいま、お父様がお呼びと聞いたのだけど」
「はい。旦那様はただいま書斎にいらっしゃいます。お昼のご用意を致しますので、アリシア様は訓練の汗をお流しください。ご入浴のご用意は整っております。」
一歩前に出てそう告げたのは執事長のアルバートだ
先代、つまりお爺様の代からトーエン家に仕えてくれている
なんでもお爺様の古い知り合いで例に漏れず傭兵をしていたとか
「わかった。では身支度を整えたら一階に降りるわね。」
「アリシア様、お背中をお流し致します。」
そう言って部屋まで連れ添って来たのはわたしの専属世話役のリシアと何人かのメイド達
部屋に入ると着替えを手伝ってくれる
「アリシア様の髪は綺麗ですね」
「本当に新雪のような触り心地です」
わたしの白い髪はいま肩まで伸びている
ある日を境に髪色が変わったのだか
お母様が
ー透き通るような素敵な色だわ!ぜひ伸ばしてちょうだい!
などと言うので伸ばしている
実際、わたしも結構気に入っているのだが
「ご用意が整いました」
「ありがとう」
そしてわたしはメイド達と浴場に向かうのだった
トーエン公爵家はわかりやすく言うと東京ドーム何個分とかの単位です