わたしの日常
「お迎えに上がりました、アリシア様」
わたしが家臣団と訓練しているとメイドのリシアが迎えに来た
栗色の髪を頭の後ろで纏めあげて洗いたての侍女服に身を包んでいる
彼女とは幼なじみで小さい頃からずっと一緒に居てくれている
今年で12歳になるからもう6年になるだろうか
「お、リシアじゃないか。昼飯の時間か?」
「ええ、トゥーリ。ちゃんと汗を流してから戻ってくださいね」
「へいへい、わかりましたよ。お前ら!飯の時間だ!訓練場の裏で汗を流してから帰らないと飯抜きらしいぞ!」
「トゥーリ!」
家臣団にそう呼びかけてリシアをからかっている赤毛の男
彼の名前はトゥーリ・サルバ
同じく幼なじみの1人で脳筋...もとい武闘派一族であるトーエン家の家臣団団長を務めている
総勢30名からなる家臣団はそれぞれが歴戦の猛者で並の傭兵など子供のようにあしらえるほどだ
・・・その団長と渡り合っているわたしはなんなのだという話なのだが
「さあ、リシア様。公爵様がお呼びですからそろそろ参りましょう」
「うん。わたしも屋敷に戻ったらお風呂に入らないとね」
「はい。公爵様ですら見惚れるほどに身支度を整えさせて頂きます」
「ほどほどにね・・・」
公爵様とはわたしの父であるエルド・フォン・トーエンのことだ
トーエン家の家長ということでその実力は推して知るべし
「マリオ。屋敷までお願いね」
「かしこまりました、お嬢様」
わたしはリシアから渡されたタオルで汗を拭きながら
馬車の御者であるマリオに行先を告げた
彼も昔は傭兵をしていてバックパッカーと呼ばれる荷物係をしていたらしい
トーエン家に縁の者はどこまでも武闘派なのだ
「トゥーリ達はどうするの?」
「アリシア様、俺たちは訓練も兼ねて走って行きますよ。30分もあれば着きますからね!」
「それでは汗を流した意味が無いでしょう!ちゃんと馬車を呼んでありますから乗ってきなさい!」
リシアとトゥーリの言い合いにも慣れたもので
わたしは苦笑いしながら馬車に乗り込み窓を開けて風邪を入れていた
「今日もいい天気ね」
きっとこんな日はいいことがある
2人の言い合いを聞きながら
お父様との食事を楽しみにしつつ
わたしは出発を待った
剣が折れたら殴ればいいじゃないbyエルド・フォン・トーエン