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僕が生まれた日



「・・・ァさま」


その日、肌を強く打つ雨の日だった


「ア・・ァ・・ま!」


世界の全てが雨音で埋め尽くされていて


「アリ・・・様!!」


わたしの目の前には唸り声を上げる化け物がいて


「アリシア様!!」


わたしは震える身体と荒れた息のまま立ち竦んでいた


「逃げてください、アリシア様!」


わたしは、こんな非情な運命を呪った


部門の名家であるトーエン家に生まれたわたしはこの日、実技試験としてトーエン公爵領に隣接する魔獣の森。

ディアボリ・シルバに入った


トーエン家はこの森から迷い出てくる魔獣の討伐を担うため、その家の人間は誰もが戦う力を持っていなければならない


わたしも当然ながら、今回は初めての魔獣の戦闘に臨んだ


森の浅いエリアで新人の傭兵が戦うような魔獣を探していた


けれど、大きな十字路に差し掛かった時

それは突然現れた


小さな家屋など吹き飛ばして進むほどの体躯


その身体を覆う針のような毛は逆立ち


赤い瞳は激情を宿し


その遠吠えは雷を喚ぶ


ーヤマアラシ


雷を司るその魔獣は、唐突にやってきた


連れ添った家臣団は雷に打たれて地に伏せた


圧倒的な暴威の前には為す術もなく

わたしの傍に控えていたメイドのリシアも怪我をした足を引きずりながらわたしに叫ぶ


「アリシア様!早くお逃げください!

わたしがあの魔獣の囮のなります。

だから早く逃げてください!」


けれどわたしの足は動かない、動けない

10の歳を迎えたばかりの少女にはこの現実は余りにも絶望的だった


「ルルルルオオオオオオオオ」


ヤマアラシの遠吠えが雷となってわたしの身体を貫いた


「アリシア様ァァァ!!」


ああ、きっとこれが死なのだと

これが命の終わりなのだと

そう思った


お父様、お母様

どうか、先に逝く不幸をお許しください

リシア、せめてあなただけでも・・・


わたしの運命は、ここに終わった










はずだった


ー待っていました人の子よ


ーあなたがまだ生きたいと願うなら


ーその願い、聞き届けましょう



胸の中に入り込んでくるその声は

まるで夜のように寂しくて

月のように綺麗だった


ーただし、その代償として我が願いも叶えて貰います


ー我が願いとは・・・


わたしは迷うことなく頷いた

それでリシアを救えるなら

それでわたしが戦えるなら

それがわたしの運命ならば


安いものだと、心の中で笑ってみせた


ーでは、ここに契約を交わします我が名は『 』あなたの名は?


わたしはアリシア


ーアリシア。我が名と我が才の全てをあなたに授けます


どうか、わたしの代わりに・・・


満足に魔力を操ることすら出来なかったわたしは


この日、魔法使いになった

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