ー五ー
それから暫く歩くと女性は立ち止まる。
何処をどう歩いてきたのか分からなくなっていた。
同じ様な見た目の廊下を進み、同じ様な十字路を何度も曲がってソコに辿り着いた。
『開けてくれ。』
刀の鞘で壁を2度ほど叩いてから、誰にともなく言う。目の前の女性が誰に向けて発した言葉か分からない。
《ガチャ。。。。ギィィィィィ》
小さい音だったが金属音がしたので辺りを伺うが、音の出所が分からずにキョロキョロしていると廊下の壁がユックリと口を開く。
廊下の壁に空いた穴は縦横1m程度の小さなものだったが、壁の継ぎ目を利用して造られていた様で外観では全く分からなかった。薄暗い事も見付けられなかった要因の1つであろうとは思うが。
あっけにとられて見ていると刀を持った女性。。。刀女が、その穴に入っていった。向こう側が、どうなっているのか分からないので入る事に抵抗はあるが、またゾンビに襲われて1人で生き抜く自信はない。着いて行くしかないのだろう。
小さな穴を抜けると壁の向こう側に小さな男が立っていた。
『間に合ったみたいだな。ギャッギャッ。』
ネズミを思わせる容貌をしている男が僕を見て笑う。間に合ったとは、僕の事だろうか?
『さっさと着いてこい。行くぞ。』
刀女は、ネズミ男から少し離れた場所にいる。
『佐織を怒らせると面倒だ。早く行ってくれ。ギャッギャッ。』
肩を竦めるネズミ男。どうやら刀女は佐織と言う名の様だ。
扉を抜けた先は広い空間になっていた。サッカーグラウンドが丸ごと入ってしまいそうな広大な空間。その中ではダンボールや木片を立て掛けたりして狭い空間を多数作り上げていて、その小さな狭い空間を人が出入りしている。
生気の無い人たちを横目で見ながらも佐織の後を着いて歩いて行くとダンボール作りの空間よりは、ややマシだろう木片作りの小屋の様なモノの前で立ち止まった。
「うわっ、ごっ、ごめんなさい。」
キョロキョロしていたせいで、立ち止まった佐織に気が付かずに後ろからぶつかってしまったが、特に気にした様子もなく
《コツッ、コツッ》
『戻りました。』
刀の鞘で扉をノックした後に一言だけ発する。
ノックまで鞘で行うのは、刀が佐織の身体の一部となっているからだろうと無理やり考えた。
そうでなければ、この刀女の佐織が敬意を払っているだろう相手の部屋に入るためのノックを刀でする理由が見付からない。どう考えても失礼極まりないのだから。
『どうぞ。』
そんなどうでもいい事を考えていたが、小屋の中から男の声が聞こえた。




