後日談 その② 「冥府の女王と魔女」
※最終話終了後の会話です
?????「もし? ペルセポネさん」
ペルセポネ「だれ?」
?????「誰とはご挨拶ですわね。
ヘカテですよ?」
ペルセポネ「わっか!
……ウソだろぉ?」
少女ヘカテ「あら、いやですわ。
その物言いでは、
わたくしが若作りしているみたいではないですか?」
ペルセポネ(……こっわ!
笑顔こっわ!)
「ちょ、ちょっとビックリしただけだろ!?」
少女ヘカテ「うふふふふふ――!」
ペルセポネ「……何で年増――姿が違うんだよ?」
少女ヘカテ「先の騒動で、わたくしも罰を受けましてね。
今後一切の魔術行使を禁じられてしまいましたの」
ペルセポネ「え?
じゃあつまり……」
少女ヘカテ「はい。
このわたくしは現代のわたくしですわ。
どうです?
まだ汚れを知らない少女のままでしてよ?」
ペルセポネ「ヤメロ……!
ヘンなモン見せるな! この変態!!
……心が汚れてやがる!!」
少女ヘカテ「あらひどい」
ペルセポネ「こっちのセリフだ!
……たく!」
少女ヘカテ「うふふ。
まあ、丁度肉体も再生した所でしたし。
ハデスにしては寛大なお裁きと言えましょう」
ペルセポネ「……確かに、ひと昔前のアイツだったらオマエ。
ただじゃ済まなかったぞ?」
少女ヘカテ「でしょうね。
それもこれも、全て貴女のお陰ですわ」
ペルセポネ「……別にオレは何もしてないだろ?
全部ハデスが片づけただけじゃないか……」
少女ヘカテ「いえいえ! とんでもない!
貴女がいなければ“ハデス”は確実に
”偉大なる者たち”を滅ぼしていたでしょう。
“原初の巨人”とその力を授かったゼウスとクロノス。
そして、“ハデス”自身さえも。
貴女こそが、今の世界を救ったと言ってもいい――」
ペルセポネ「イチイチ大袈裟なんだよ……!
あの時オレは自覚無しだったし……。
頭ん中グチャグチャで意味不明だったし……」
少女ヘカテ「だからこそ、奇跡を起こせたのでしょう。
貴女の想いが彼を救ったのです!
礼を言います。
ありがとう、ペルセポネさん――」
ペルセポネ「……ポネでいい。
てか、何で今更さん付け?」
少女ヘカテ「いち魔術師として、貴女の起こした奇跡に敬服せざるを得ません。
それに本来わたくしは貴女より年下ですからね」
ペルセポネ「あっそ……。
そんで?
オマエ、これからどうすんだ?
魔術禁止令なんだろ?」
少女ヘカテ「許しが出るまで、ハデスの傍にいさせてもらいますわ。
勿論監視の為に。
ああ……!
あの人を見ていると……!
若い頃のクロノスを連想して……!
下腹部がゾクゾクと……!!」
ペルセポネ「……オイ!
テメエ、よくも嫁の前で下品なこと言いやがったな!?
ぶっ飛ばすぞ!? コラ!!」
少女ヘカテ「あらやだ。
わたくしとしたことが」
ペルセポネ「……オマエ。
いつアイツに惚れたんだよ?」
少女ヘカテ「あら?
わたくしたちは共にあの人に燃やされた仲じゃないですか?
自分で言うのも憚られますが、
我々をここまで支配できる者は他におりませんわ。
あそこまでされては、ねえ?
わたくしも、貴女と同じですわ」
ペルセポネ「ちょっと待て!
それじゃオレがマゾみてえじゃねぇか!
ふざけんな!!
テメエみたいな変態と一緒にすんな!!」
少女ヘカテ「変態はお嫌い?」
ペルセポネ「当たり前だ!!
……てかオマエ。
オレと同じって言う割にはアイツを怖がってないな?」
少女ヘカテ「まあ、あの時のわたくしは霊体と成って逃げたので、
大したトラウマにならなかったのしょうね」
ペルセポネ「……なんかズルい!
ん? オマエは未来から来たんだよな?
じゃあ今回の件は全部知ってたんじゃないのか?」
少女ヘカテ「いいえ。
わたくしはあくまで、
未来から現代に時間跳躍しているだけですので。
この時系列で何が起こるのかは知らないのです」
ペルセポネ「……ん?
ちょっと待て。
別にオマエが直接知らなくても
過去の事はわかるモンじゃないのか?
誰かの残した資料とかで」
少女ヘカテ「鋭いですね。
まあ、貴女になら話しても良いでしょう。
秘密ですよ?
特に、ハデスには」
ペルセポネ「……わかったよ」
少女ヘカテ「実は、わたくしのいる未来には、
既に貴女とハデスはいないのです。
貴女たちだけでなく、
“原初の巨人”も、ゼウスも
そしてクロノスさえも――」
ペルセポネ「……もしかして、あの時ハデスが!?」
少女ヘカテ「人類の脅威と成り得る存在を道連れに自爆したのでしょうね。
その事について一切記録は残っていませんでした。
しかし、今回実際に目にして
隠されていた真実が明らかになったのです」
ペルセポネ「……じゃあ、お前のいる未来は――」
少女ヘカテ「未来のわたくしがいる時系列には
偉大なる者たちは既に消滅していました。
人類は徐々に魔力を失い、
わたくしは最初にして最後の魔女となった。
だからこそ、わたくしが呼ばれたのです。
“原初の巨人”たちに――」
ペルセポネ「ってことはつまり……」
少女ヘカテ「今回の真の黒幕は“原初の巨人”です。
彼らにとって、
自らの生存を懸けた戦いでもあったのでしょうね」
ペルセポネ「……アイツらか!
クソ!
全裸土下座なんかさせやがって!!」
少女ヘカテ「……あれは貴女方が勝手にやっただけでしょう?」
ペルセポネ「好きでやったんじゃねえよ!!
あのバカが! クソ!! ハラ立つ~!」
少女ヘカテ「まあまあ。
あの状態で服が燃えるのも不可抗力でしたし。
それにある意味、
貴女の活躍によって彼らは代償を払う事になりました。
自らが生き延びる事と引き換えにね」
ペルセポネ「……全部オマエの仕組んだことかよ?」
少女ヘカテ「そんな仕組んだだなんて。
わたくしはただ、良かれと思って
少しだけ運命を変えただけですわ~」
ペルセポネ(……オマエが一番怖いんだよ!)
「そういやオマエ。
全裸に飛びつかなかったな?
変態のクセに」
少女ヘカテ「わたくし、別に裸を見ただけでは興奮しませんのよ?
裸になって何をどうするかが本題でしょう?
その辺の低俗な変態と一緒にされては不愉快ですわ」
ペルセポネ「うるせえよ!!
やっぱ変態なんじゃねえか!!」
少女ヘカテ「うふふ。
調子は戻ってきたようですわね」
ペルセポネ「……ふん!
べ、別に落ち込んでねえし!!」
少女ヘカテ「先程も言いましたけど。
あの人は貴女に感謝してると思いますわよ?
だから、自信を持ちなさい」
ペルセポネ「……そうかなぁ?
アイツ……やっぱ消えたかったんじゃ無いかなぁ……」
少女ヘカテ「もしそんなたわけた事を言おうものなら、
わたくしが小一時間説教してやりますわ!
貴女も思う存分折檻して差し上げなさい!」
ペルセポネ「……そうだな!
それも楽しそうだ……!
ククク……!!」
少女ヘカテ(あれ……?
何だか不穏な香りが……。
わたくし、変に焚きつけてしまいましたか?)
「冗談ですわよ?」
ペルセポネ「クヒヒ……!
わかってるわかってる……!
冗談ジョーダン……!」
少女ヘカテ(……目がマジですわ!
わたくし知ーらない!)
ペルセポネ「よし!
取り敢えずあのバカを殴りに行くか!
ジョーダンで!!
……あれ? ヘカテ?
クソ!!
あのババア逃げやがったな!!
ムカつく~!!
ムカつくからハデスに八つ当たってやる!!」




