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ハデス ~最後のティタノマキア~  作者: 底なしコップ
最終部 神々の黄昏
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第51話 「地球<ガイア>に――!」

 予言者プロメテウスによる反乱は、“ハデス”によって鎮圧された。

 “ハデス”は“畏れの力”によってティタンを戦意喪失させ、その殆どを一瞬で制圧した。

 それでも最後まで抗ったアトラスだが、真の力を発揮した“ハデス”の前には成す術も無かった。

 そしてこれ以降、“ハデス”は人類にとって恐怖の象徴として歴史に刻まれる事となった。

 報せを受け、地上に戻って来たゼウスの怒り様は凄まじかった。

 即座にプロメテウスから“十二神の力”と地位をはく奪し、神器を生み出し串刺しにした。

 ゼウスの加護を失ったプロメテウスは、既に失われていた視力も回復せず、全盲となった。

 ただ、彼は人類にメッセージを残した。

 “ハデス”の脅威と、人類の愚かしさを。

 これはあくまで私見だが、これを知らしめる事こそが、彼の真の目的だったのではなかろうか?

 また、これも私がそうあって欲しいという願望でしかないのかも知れないが、人の心が理解できない友へのメッセージではないだろうか?

 話を戻そう。

 ティタンの反逆を受け、オリンポスは移民を流刑に変更し、冥府を設立した。

 冥府設立に伴い、発案者のハデスが冥王と成り、ティタンは冥王星へ収容された。

 そして物語は現在に至る。

 予言者プロメテウスの過去への旅はこれにて終結した。


「……なに泣いてんだよ?」


 プロメテウスに心配された。

 どうやら私は泣いていたらしい。

 ちっとも気付かなかった。

 ……というか、本当に目が見えないのだろうか?


「……まったく。

 余計なものを見過ぎたな」


 彼は少し悪びれて言った。

 ああ、ダメだ。

 何か言ってあげたい!


「……あなたいい人ですね! ピーター!!」

「ち……!

 本当に余計なものを見過ぎたな!

 なあ? ヘカテさんよぉ!?」

『うふふ、格好良かったですよ?』

「け……!」


 あ、不貞腐れた。

 なるほど、ちょっとかわいいかも、この人。


「そうですよ~!

 カッコ良かったですよ~!

 ねぇ! ヘカテさん!!」

『ええ! クロノスが!!』


 おいいいいいいい!?


「ちょ! ヘカテさん!!

 あなたはいったい何を見てたんですか!?」

『何って、彼を介して見たクロノスですが、何か?』


 ……もうダメだこの熟女。

 早く何とかしないと……。


「まあ、そうだろうよ。

 俺なんかより、クロノスを見た方が百万倍楽しかろうよ」


 あ、照れ隠しだこれ。


「なんだかあなたの事、好きになってきましたよ? 私」

「……そりゃどうも。

 で? 気は済んだか?」

『ええ。

 これでわたくしたちの取るべき道が解りました。

 貴方のお陰です。

 その気高さに敬意を――』


 ヘカテは彼の前に跪いた。

 なんだかんだ言って、彼を認めているみたいだ。


「……フン!」

「じゃあ、そろそろいいかな?」


 ハデスが他人事の様に聞いてきた。

 まあ、彼は記憶を見ていた訳ではないから自然な振る舞いなのだが、少しイラっとした。


「あの、あれからどれぐらい経ちましたか?」

『現実時間にして五分程度でしょう』

「マジっすか!?

 彼の生き様がたったの五分!?」

「……おい、勝手に殺すなよ」


 「すみません!」と頭を下げた。

 もう彼をぞんざいには扱えない。


「随分としおらしいじゃないか?」

「そ、そりゃあ、ねえ?」

『ええ』

「あのぅ、そろそろ……」


 ハデスが困った様に口を挟む。

 気持ちはわかるがウザ過ぎる……!


「うるさいですねえ!! 少しは空気を読んで下さい!!」

『全くです!! 貴方には思いやりが欠けています!!』

「……すいません」


 なんだろう? この勝った様な気持ちは……?

 いや、別に勝った訳じゃないんだけども……。


「そうだな、急いだ方がいいぞ?」


 プロメテウスが一瞬ニヤけた。

 ……なんだろう、嫌な予感がする。


『それではごきげんよう、予言者よ。

 皆さん、行きますわよ?』


 全員が頷き、ヘカテが術を行使する。

 空間と空間を繋げる大魔術。

 不思議な感覚に包まれ、視界が開ける。

 気付けばそこは、母なる大地(ガイア)だった。


「す! 凄い!!

 本当に一瞬で!?」


 私は感心してヘカテに振り向いた。

 だが、彼女の顔に焦りが見えた。

 ……どうしたのだろう?


『……失敗しました……』

「え? 何がです?

 ちゃんと着きましたよ?」

『良くご覧なさい……』


 ご覧なさいって……。

 その場にいた全員を見た。

 ヘカテ。

 モイラ。

 ヘルメス。

 ……あれ? 足りなくね?

 一番重要な二人がいなくねえ!?


『……冥府に戻ります』


 言ってヘカテは、私たちを冥府に戻した。


「……ククククク!

 あれだけ気取っておいて、とんだお笑い種だな。

 ……いて! 腹が……!

 おい、あまり俺を笑わさんでくれ……!」

『…………』


 愉快そうに笑うプロメテウスに、むくれ顔のヘカテ。

 初じゃないか? この構図……。


「あのぉ……これってどういう……?」

「ヘカテの肉体が失われた事で能力が低下したんだろう。

 ハデスとペルセポネは、存在そのものが重い(・・)からな」

『……盲点でした。

 まさか、そんな事でわたくしの力が……』


 珍しく落ち込むヘカテ。

 その姿が妙に色っぽい……。

 大人しくしてれば物凄く美人なんだよなぁ、この人。


「困ったねぇ。

 これじゃ親父たちに追い付けない」


 そうだ。

 ハデスがいなければ、ティタンに追い付けたとしても意味は無い。

 そして宇宙船“渡し舟2号”は奪われたまま。

 ヘカテの能力が使えないとなると、手詰まりである。

 一同はお手上げ状態だった。


「……お前らなぁ。

 少しは頭を使えよ。

 ハデス、お前なら何か思いつくだろ?」

「そうだねぇ。

 ヘカテ―さんの力でポセイドンあたりを呼び出して宇宙船借りるとか?」

「言えよ!! わかってるなら!!」


 思わず叫んでしまった。

 「あ、ゴメン」とハデス。

 まったく、この人は……。


『では早速、交渉してきます』


 言い終わると、ヘカテは姿を消していた。

 取り敢えず、彼女が戻るまで待つ他は無い。

 しばらくして、ヘカテがポセイドンを連れてやってきた。


『お待たせしました』

「よー! 集まって何してんだ!?」

「「アンタも当事者だろうが!!」」


 私とヘルメスが口を揃えた。

 この人は、本当にポセイドンというしか無い……!


「ポー、宇宙船借りていい?」

「おう! いいぜ!!」


 軽! だがそれがいい!!

 話が早くて助かる!


『了解は取りましたので、港に取り付けますね』


 そう言って、ヘカテは再度姿を消した。


「じゃあ、俺たちは港に向かおうか」

「そうですね。

 では、私たちはこれで」


 私はプロメテウスに頭を下げた。


「じゃあな」


 別れはあっさりだった。

 彼にとって、私はハデスの部下の一人という認識しかないかもしれない。

 だが、彼の過去を知った私にとって、プロメテウスは私の中で大きな存在となっていた。


「待て」

「ハイッ!!」


 即座に振り向いた。

 嬉しくてつい返事をしてしまった。


「お前じゃない、ヘルメスだ。

 ……いい返事だったが」

「し、失礼しました!」


 私は恥ずかしくなって逃げ出した。


「お疲れさま」


 顔を隠す私にハデスが声をかけた。

 ……慰めてくれているのか?


「やってしまいました……」

「やっちゃったねぇ……」


 ……こうして接してみると、ハデスはかなり人の気持ちがわかる様になったのではないのか?

 私程度の挙動でその心情を察せるぐらいには。

 そう思えば、彼の苦労は決して無駄ではなかったと信じたい。

 そうこうしてたら、ヘルメスが追い付いて来た。


「あの、何だったんです?」

「説教された。

 あまり無茶するなよってね。

 本当に、あの人は身内に甘い」

「……身内?」

「ああ、あの人アタシの大叔父だから」


 ……そうだった。

 ヘルメスはアトラスの孫だった。

 これはプロメテウスの記憶ではなく、カリキュラムの知識である。

 ん? じゃあ何でプロメテウスはヘルメスを知ってるんだ?


「あの人は勘がいいからねぇ。

 何でもお見通しさ」


 私の表情から読みっとったのか、ヘルメスが疑問に答えてくれた。

 全く答えになってはいないが……。


「良かった。

 電車は動くみたいだね」


 私たちは電車に乗って港に辿り着いた。

 すると、巨大なオッサンが大の字で伸びていた。


「カロンさん!?」

「げ! ハデス!!」


 カロンはハデスを見るとバツが悪そうに目を逸らした。


「なんで船長がこんな所に?

 ティタン共々地球(ガイア)に向かったものだと」

「ケ! んな事できるかよォ!」


 カロンはじっとりと汗を垂らして言った。

 ……意外だ。

 上司(ハデス)を嬉しそうに投げ飛ばした張本人とは思えない。

 忠誠心があるとは思えないのだが……。


「オレたちティタンは、御大将(クロノス様)に背くのに死の覚悟をせにゃならねえ。

 ……けどよォ。

 ハデス(こいつ)に逆らうなんざ死ぬより怖ええ……!

 そんだけのこった」


 改めて聞くと、本当に厄介である。

 ……ウチの上司は。


「でも君、よく俺に逆らうじゃん?」


 空気を読んでか読まずか、ハデスが的確なツッコミを入れた。

 ちょっと面白い。


「あんなモン逆らう内に入んねえだろォ?

 テメエは冥府(ここ)にいる限りは怒りゃしねえ。

 ならそのギリギリで嫌がらせするんだ、オレは!」


 ドヤ顔で屁理屈を宣った。

 この人も相変わらずの様だ……。


「まあ、いいか。

 じゃあ、行くとしますか?

 地球(ガイア)に――!」


 ポセイドンの宇宙船はかなり立派な戦艦だった。

 立派過ぎてあの巨大なカロンも入れるぐらいだった。

 ……まあ、来ないだろうけど。

 それにしても、こんな戦艦まで移動できるとは……。

 弱体化したとはいえ、ヘカテの魔力恐るべし!

 ……と、いうことは、あの二人はこの戦艦よりも強大な存在ということになる。

 改めて、恐ろしい夫婦だ。

 流石は冥王とその女王という他は無い。

 ともあれ、私たちは乗艦した。

 全員持ち場につき、いよいよ宇宙へと船出する。


「発進!!」


 ポセイドンが起動スイッチを押した。

 …………。

 …………だが、船は動かない。


「あ、わりぃ!

 燃料切れてたわ!!」

「「「「お前なあ!!!」」」」


 ……流石はポセイドン。

 見事に振り出しに戻った……。

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