おまけ オリンポス十二神について
※プロメテウスを“P-テウス”と表記
※24話終了時点での会話です
ヘカテ 『ごきげんよう。イアペトスの子よ―』
P-テウス「人違いだ」
ヘカテ『あらあら。
ここは予言者プロメテウスの記憶の中だというのに?
あまり年上の女に意地悪を言うものではなくてよ?』
P-テウス「これは失礼した。
まさか本人を差し置いて、
父親ありきで呼ばれるのが
意地悪でないとは知らなかったのでな。
本当に、自分の無知を恥じ入るばかりだ」
ヘカテ『うふふふふ』
P-テウス「フ」
ヘカテ 『まあ、可愛い―』
P-テウス「あのな、ご婦人。
俺みたいな若造は趣味じゃあ無いんだろ?
イアペトスの息子なら他を当たってくれないか?」
ヘカテ『アトラスの一途さはキュンとしなくはありませんが、
真っ直ぐ過ぎて少し味気無いですわ。
メノイティオスもエピメテウスも可愛いらしくはありますが、
やはり話をするのなら、貴方――』
P-テウス「そりゃどうも……。
で?
散々俺の個人情報を漁っておいて今更何が知りたいんだ?」
ヘカテ『貴方こそ、わたくしに興味があるのではなくて?』
P-テウス「……いや、そんなにデカイもんがあったら嫌でも目に付くだろう?」
ヘカテ『うふふ。
豊満な女はお嫌い?』
P-テウス「……怖いもの見たさだ」
(ティタン女は年齢と胸囲が比例するからな……)
ヘカテ『あら? 殿方は胸が豊かでくびれた女が好きではなくて?』
P-テウス「……謝るから、当たり前の様に心を読まんでくれ。
何が聞きたいんだ?」
ヘカテ『あら? 意外とじらさないのですね?』
P-テウス「無駄だとわかってるからな。
早く終わらせたい」
ヘカテ『まあまあ、せっかちな子』
P-テウス(……クソ、苦手だ……!)
ヘカテ『さて、この辺にしておきましょうか。
では早速、この頃のオリンポスについて聞かせて下さいな』
P-テウス(やれやれ、やっと本題かよ)
「この頃のオリンポスはとにかく復興に躍起になっていた。
ゼウスの力で直すって手もあったんだがな。
あいつ曰く、それじゃあ意味が無いってんでな。
かなりのティタン族が駆り出されていたよ。
何というか、完全に当てつけだったがな」
ヘカテ『あらまあ』
P-テウス「復興ついでに技術革新やら産業革命やら色々あったな。
その辺全部語り出すとキリが無くなる。
アンタが知りたいのは知識では無いんだろ?」
ヘカテ『そうですね。
オリンポスについてはもういいでしょう。
では、この頃の貴方がたの関係。
特に十二神について、貴方の思う所を――』
P-テウス「……気が重いんだが?」
ヘカテ『わたくしは平気ですわ』
P-テウス「それはそれは……。
はぁ……。
十二神はゼウスが発案した十二人の議員の総称だ。
あいつ的には尊称と言うべきか?
当時のティタンに言う事を聞かせる為に、
選ばれた十二人に、ゼウスから“威光”を授けられた。
疑似的な“王”の使徒ってやつだよ」
ヘカテ『成る程。
当時のゼウスは既にそこまでの力を得ていたのですね?』
P-テウス「そういう事だ。
お前らがどういう感覚で俺の記憶を見たのか知らんが、
戦争終結後、かなりの期間があったからな。
ゼウスは十分に充電を終えたって訳だ」
ヘカテ『この頃から、彼とよく喧嘩をしていた様ですが?』
P-テウス「ゼウスは、少しずつ変わっていった……。
だが、それは俺たちがあいつを頼り過ぎたせいでもある……。
それがわかっているから、
皆もゼウスを責められなかったんだと思う……。
傍から見たら、
ゼウスが高慢な権力者に変貌したと見えるだろう。
だが、あいつはただの俗物では無かったと信じてる。
ゼウスは“王”に依存せず、
自由を愛する隣人にとっては良き理解者でもあるんだ。
だから、どんなに俺が気に食わなくても、
決して十二神をクビにはしなかったんだ」
ヘカテ「ああ……もう……!
そういう所はクロノスと似てるわぁ~!
あの人も頑固だけれど、そこが素敵!!
うふ! うふふふふふふふ!!』
P-テウス「……おい!」
ヘカテ『あらいやだ。わたくしとした事が』
P-テウス「……結構真面目に話してるんだがな、俺」
ヘカテ『勿論ですわ。
友情、ですよね?』
P-テウス「うるせえよ……」
ヘカテ『うふ。
でも、先程の口ぶりだと、貴方以外とも折り合いが?』
P-テウス「その辺はそれぞれだな。
ヘラなんかはゼウスに倣うように高圧的な奥方になっちまったし、
ヘパイストスはあまり人と話さなくなった。
ケイロンやテミスは完全に中立って感じだな。
あとアフロディテやヘスティアは、あまり政治に関わらなかった。
ポセイドンも遊び歩いているな……」
ヘカテ『本当に彼は奔放ですねぇ。
若い頃のクロノスも、それはそれは――!』
P-テウス(ま・た・か・よ……このおばさん……)
「おい、そこまでにしておけよ?」
ヘカテ『……失礼。
デメテルについては?』
P-テウス「……いや、その、最近は会ってなくてだな……。
どうやら嫌われたらしい……」
ヘカテ『あらまあ。
貴方のプレイボーイぶりに愛想を尽かされましたか?』
P-テウス「……俺のどこがプレイボーイなんだよ?」
ヘカテ『キスぐらいまでならと思っていたのでしょう?
貴方はひと時の思い出で済ませようと思っていたのでしょうが。
過ちは未然に防げた様ですね?』
P-テウス「俺は……!」
ヘカテ『まだ可愛いとは思いますがねぇ。
相手は選んで欲しいものです』
P-テウス(……なんだ? この拷問は……)
「ま、まあ、色々と変わっていったが、
ハデスだけは変わらなかった。
特にゼウスと険悪だった俺の愚痴を聞いてくれたのは、
ハデスぐらいだった」
ヘカテ『まあまあ、期待を裏切らないですね。
そんな所もクロノスそっくりで堪りませんわ~!』
P-テウス「……お前、いい加減
なんでもクロノスを引き合いに出すの止めにしないか?」
ヘカテ『何でですっ!?』
P-テウス「だ! か! ら!
俺の精神世界で!
エクスタシーするのをヤ・メ・ロと言ったんだ!!
俺にとってクロノスとの思いでは掛け替えの無いものなんだ!
お宅の様な変態淑女にはわからんかも知れんがな!!」
ヘカテ『あらいやだ。わたくしとした事がはしたない』
P-テウス「全然反省してねえだろテメエ……!」
ヘカテ『では最後に、貴方について――』
P-テウス「は? 散々見てきただろ?」
ヘカテ『いいえ。
まだ、貴方の気持ちを聞いていません。
貴方はゼウスの覚悟も秘密も知りながら、
それでも彼を諫め続けた。
まるで懺悔するかの様に。
それは、ティタンへの負い目ですか?』
P-テウス「…………」
ヘカテ『貴方は自分を責めるあまり、
変わりゆく友を見ていられなかった。
そして、その罪悪感から、未だ愛する者を遠ざけている』
P-テウス「……説教か?」
ヘカテ『いいえ。
わたくしはただ、貴方の心が少しでも軽くなればと
要らぬお節介をしているだけですわ』
P-テウス「……本当にお節介だ」
ヘカテ『ババアなので――』
P-テウス「フン!
ま、まあ、一応好意として受け取っておく……」
ヘカテ『うふふ』
P-テウス「そういえば、アンタ。
形式上はコイオスの孫って事になってるよな?」
ヘカテ『ええ、形式上は――』
P-テウス「……実はコイオスより年上じゃないだろうな?」
ヘカテ『世の中には知る事で不利になる事柄もあるのですよ?
よく覚えておきなさい? 予言者よ――』
P-テウス(……こっわ)
「お、覚えておこう……」
ヘカテ『ふふふ。
楽しいひと時でしたわ。
それでは、ごきげんよう――』
P-テウス(ふう、おっかない魔女だったぜ……)