第九楽章 彼方 鈴星学園中等部昇降口前の掲示板にて
数日後。高等部の中庭は、残骸撤去のために使用禁止になり、誰一人立ち入らぬよう指示を促された。このような残骸が沢山残る中、全職員方は勿論依頼を受けた工事の人もかなり苦労していた。この状況は流石に復旧するのは相当時間が掛かるであろう。
アルマイナの手下として操られていた江本はその後、何日か学校を休学し再び通い始めた。だが、アルマイナに操られ悪事を起こしていたことに関して本人曰く、『全く覚えていない』とのことだった。またドルチャーヌの洗脳に掛けられていた生徒や先生も、『誰かの作り話だろう』とか、冗談だとゲラゲラ笑い出す人が多く見られ、恐らく記憶に無い模様だった。その事情について兄貴達に相談してみたところ、『アルマイナによってあの頃の記憶を白紙に戻したのではないか』と宇宙は推理していた。実際には白黒はっきりつけ難いが、今後もこのような事件も起こり得ることは無いとは言えない。まだまだ油断は出来ないようだ。
いつものように朝練で早く登校した俺とセイちゃんは校舎に入ろうとした時、正面玄関前の右側の壁にある掲示板に目を付けた。高等部の新聞部が新たな記事を更新したようで、思わず見とれてしまった。
『正体不明の謎のヒーローが鈴星学園を救う!?』と書かれた大きな見出しを始め、ソウルジャーに関連する内容ばかりがこの記事に記されていた。
『二月十五日(月)の午後四時半頃、突如現れた謎の巨大な穴を始め、アルマイナと名乗る地球侵略組織が鈴星学園を襲った。その組織の最高幹部・フィーネントの人質とされた高等部一年A組のK.Tさん(16)を救うため、地球の平和を守るために現れた正体不明のヒーロー・音楽戦隊ソウルジャーが、悪事を阻止するよう懸命に闘い、見事にアルマイナを駆逐することに成功した。』
『その光景を目撃した生徒達の証言は、「アルマイナはどこかの惑星の女神様の暗殺のためにここに来た」、「地球を侵略するために来た」等の発言が多く挙げられた。事件の被害者であったK.Tさんも同じような言葉を発し、当時の状況やソウルジャーの正体については「気絶していたのでよく覚えていない」と供述していた。』
この記事を読んだ俺とセイちゃんは、少々複雑になっていた。何しろ俺らはソウルジャーなのだから。
その上姉さんがこの事件の第一被害者であり、ソウルジャーの正体を知る第一目撃者ということもあってか、だんだんと背が冷えていくのを感じた。
この戦いが終わるまでに何とか皆にバレないよう警戒しなければ…。
突如俺の左肩を叩いたセイちゃんが、ある記事を指した。よく見てみると、兄貴の目が隠れている顔写真が小さく晒されており、内容はこう書かれていた。
『ソウルジャーの正体を知る!?ある男子生徒に迫る!!』
『ソウルジャーに関する情報提供が困難する中、一人の男子生徒が唯一貴重な発言を表した。ソウルジャーの虜になったという高等部一年B組所属のK.G君(16)が、ソウルレッドの決め台詞を披露した。本人曰く、ソウルレッドは登場の際に「情熱のハーモニー!ソウルレッド!」と名乗る模様である。その他の真相は、まだまだ知らないことばかりではあるが、今後正体が明らかにある可能性も有り得るかもしれない。』
当然、実の兄がこのような危ない発言をしていたことに唖然としてしまった。
「バカ兄貴が…!一体何をしてるんだよ!」
驚愕と葛藤が遂に表れ、最終的にはガラスをドンドンと叩いてしまった。
「ハーイ!話題の情報をこの手で掴め!皆にも私にも教えて!新聞部のお出ましだー!」
「うわっ!びっくりしたぁー!」
唐突に現れたポニーテールの女子高生が、メモ帳とボールペンを手にして俺の顔に近付けて来た。その衝撃で不意にセイちゃんがいる方へと転んでしまった。
勿論セイちゃんも俺に続いて転倒した。
「ゴメンね~!君は確か…。そうだ!ギンちゃんの弟だ!あたしは高等部の新聞部部員の類田麻依よ!」
新聞部か…。兄貴の言う通り、厄介な人だな…。
口にすると失礼なので、ここはあえて無言で尻を擦りながら立ち上がった。一息ついたところで、彼女に問いかけた。
「あの…何ですか…?」
「金髪の少年がいるって聞いてずっと取材したかったの!場所を変えて話しましょ!」
そう言って類田さんは強引に俺の腕を引っ張って、中等部の大教室へと連行された。
後から追いかけて来たセイちゃんも巻き添えになってしまい、取材を受けることになった。
幸いに質問された内容はソウルジャーについてではなく、俺の特徴やサッカーについての質問だった。
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【音楽戦隊ソウルジャー登場人物紹介2】
黒野 彼方(くろの かなた)
銀河の弟。通称カナちゃんで一人称は『俺』。鈴星学園中等部Ⅱ年D組に所属している黒野兄妹の次男。2001年11月7日生まれのAB型。身長168㎝、体重61㎏。
金髪とアヒル口が特徴的な少年。私生活では妹である輝としばしば張り合うことが多く、原因のほとんどはくだらないことである。一見チャラそうな雰囲気を出しているが、実は兄の銀河とは正反対で真面目である。
学園生活にて冬服は黄色のパーカーとネクタイを着用している。中等部のサッカー部主将を務めており、凄まじいキック力を持つエース的存在である。それ故か本人はナルシストな部分が出てしまうのが玉に瑕である。部活動中は下画像右側のように黄色のユニフォームを着用する。ポジションはFW。学業は平均とそこそこであるが、一つ年下の親戚である星に勉強を教えてもらっている一面がよく見られる。
また特徴的である金髪の髪であるが、『髪を染めてはいけない』という鈴星学園の校則は特別に例外となっている。元々は黒髪であったが、初等部入学前に父である遥の実験に巻き込まれ、その結果が現在に至る。父はは何度か脱色をしようと試みたが、結局は失敗に終わり諦めてしまったとのこと。よって金髪は地毛であると周囲に通している。カレーライスとカレーパンが好物。
ソウルイエロー
黒野彼方が黄色の戦士の力と有名な音楽家の一人・ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの音楽の力を借りて契約し変身した姿。個人の名乗りでは左のポーズで決める。ソウルタクトで敵を駆逐する際には、メンバーの中で一番荒い戦闘を仕掛ける。
武器はソウルタクトの他、敵を雷で浴びせ一定時間に動きを止める力を持つソウルトランペットを使用する。
名乗りのフレーズは『シビれるメロディー!』
江本 邦紀(えもと くにのり)
鈴星学園中等部Ⅱ年D組に所属する少年。彼方と同じサッカー部に所属し、つい最近になってエースの座を獲得した。が、前回の練習試合で足を痛めたことが原因で、彼方に一度レギュラーから降ろされたことをずっと妬んでいた。そのことを知られたトゥーリットに目をつけられ、ドルチャーヌに変えられてしまった。
ドルチャーヌ
江本邦紀がトゥーリットによって洗脳され、アルマイナの忠実な部下として変えられてしまった姿。顔の半分は江本本人であるが、半分は怪人の姿をしている(所謂半怪人)。戦闘能力はそこそこあるが、自分の感情を植え付けて洗脳するという特殊能力を持つ。
名前の由来は、音楽記号の甘く・柔らかく・愛らしくの意味を持つ「Dolce」から
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【キャラ設定の解説】
これはレギュラーメンバーの中でかなり悩みました。何の特徴もなく普通の少年だとつまらないので、ちょっと派手な感じにしようとした結果がこれです。金髪は元々するつもりはなかったのだが、もうちょっと何かが欲しい…。「そうだ!アヒル口があった!」…とまあ適当な感じで出来上がりました(笑)普段の学校生活での服装もどんなデザインがいいかも迷ってました。顔?正直前髪が一番描きにくかったです。あと自分は高校野球派なのでサッカーの知識はすごく浅いです(笑)どうしても描きたかったからいいでしょう別に!あと変身後の変なポーズは気にしないで下さい。こんな下手な絵しか描けないのですから(涙)
今回から敵キャラの設定も新たに加わりました。まあ所謂モブキャラの設定ですけどね。怪人は考えた結果、どうしても描けなかったので、あえて半怪人という設定にしました。え?フィーネントは何故最初から出さなかったのかって?それは後々出しますので急かさないで下さい。まだまだ先の話ですけども。あと最後に。誰かぁぁぁ!怪人上手く描ける人描き方教えて下さぁぁぁぁぁぁぁぁい!
…以上今回の設定でした。次回はピンクを紹介します。
児童会長、合唱部のピアノ担当等と初等部の大黒柱とも言える少女・輝は、甘いものが大好物。そんな彼女に悲劇が起こった!次回、音楽戦隊ソウルジャー第三曲『甘い罠にご用心!』絶対に見逃すな!!
※次回の更新は12月31日になります