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音楽戦隊ソウルジャー  作者: 影林月菜
第二曲 リーダーの自覚とエースとは何か
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第五楽章 彼方 鈴星学園高等部中庭にて

 江本(えもと)の不気味な笑い声を頼りに俺は亜利亜(アリア)川の河川敷を通り抜け、高等部の中庭へと急行した。けど途中見回しても肝心の江本の姿がどこにも見当たらない。それでも俺は構わず捜し続けた。

 そして高等部の中庭に辿り着いた先には、緑の派手な服を纏っている一人の男の姿が見られた。

 「ここまでよく見つけたな、黒野(くろの)彼方(かなた)よ。褒めて遣わすぞ」

 声はどう聞いても江本だが顔は彼と似ている反面、半分は怪人のような姿であった。普段の彼は愛嬌がある勇ましい人で、部活の際には俺と同じくらい真剣に取り組んでいたのだが、この人は傲慢な半怪人に変わり果てていた。

 「お…い…、お前…江本なの…か…?」

 その姿に信じられないと思いながら怪物に尋ねた。






 「俺様はアルマイナの幹部・トゥーリット様の忠実なる部下、ドルチャーヌだ!!貴様の邪道な指導に耐えられねーから先に倒してやる!!」






 やはりアルマイナの手下か…!何でこんな所にいるんだ!?というか、邪道な指導…?一体何の話だ?

 「カナちゃん!!一体何事ですか!?…あれは…もしかして邦紀先輩ですか!?」

 この状況に駆け付けたセイちゃんが、ドルチャーヌとか言う半怪人体を見て、説明を聞かずに悟ってしまった。その後から(ほたる)、兄貴、宇宙(そら)(ひかり)、姉さんも合流した。

 「よく分からねぇ。けどもしそうだとすれば…」

 「躊躇している暇はございません。このままでは学校も生徒達にも危害が大きくなってしまいます。ここは戦うしか…」

 宇宙が発言を終えようとした途端、また新たな半怪人体が鼻で笑いながら顕現した。新たに現れた半怪人は、緑色のメッシュと派手なエレキギターを肩に掛けているのが特徴的なビジュアル系のバンドにいそうな青年だった。

 「よう、お前らがフィーネントが言ってた音楽戦隊ソウルジャーってやつか」

 嘲笑いながら俺らの正体をすぐに見破ってしまった。まだ何もしていないのに。

 「お前は一体何者だ!?」

 兄貴が言うと、緑の青年はこう答えた。

 「俺様は宇宙侵略組織アルマイナの幹部・トゥーリットだ!!江本とやらのガキの悩みを俺様の手で解決してあげたんだぜ!!これで地球侵略が確実に実行出来そうだ!!」

 何てこった!!いつも真面目に取り組んでいたあの江本邦紀(くにのり)がアルマイナの手に陥るなんて!!隣にいるこいつが…さっきドルチャーヌが言ってたアルマイナの幹部のトゥーリットか…!

 「おい!江本に一体何をしたんだよ!」

 しかしトゥーリットは何も答えなかった。

 また厄介なことになったせいなのか、それともこれも戦う運命であるという恐怖が表れたのか、左足が(すく)んで思うように動けない。

 「やはりアルカイダの仕業でしたか」

 「宇宙兄さん、アルマイナです」

 このような状況にも動じずさらりとボケをかます宇宙に対し、セイちゃんも同じく冷静に突っ込んだ。

 「そんなことより!早くこの状況を何とかしないと!!」

 輝が焦りながら俺等に一喝した。

 「そうだな!月夜!蛍を連れて避難しろ!」

 兄貴が中等部の入り口付近にいる姉さんと蛍を見て叫んだ。

 「了解!蛍、行くで!」

 姉さんは蛍の手を引いてドアの近くで身を隠した。

 俺らは周りに人がいないかどうか一瞥したところで、ソウルタクトとソウルベルを手にして構えた。

 「よっしゃぁ行くぞ!!」

 兄貴の合図で俺らはソウルタクトの底にソウルベルをはめ込んだ。

 『バッハ・オンステージ!』

 『モーツァルト・オンステージ!』

 『ショパン・オンステージ!』

 『ベートーヴェン・オンステージ!』

 『シューベルト・オンステージ!』

 「「「「「セット!」」」」」

 そして四拍子に合わせてソウルタクトを振った。

 『1(ワン)、2(ツ-)、3(スリー)!』

 「「「「「ムジーク・チェンジ!」」」」」

 その瞬間、俺等は光に包まれソウルジャーに変身した。

そして目の前にいるトゥーリットとドルチャーヌに駆け寄っては、ソウルタクトで斬りかかった。しかし簡単に殺られることもなく、ただ正当防衛をしているだけであった。






 「おい江本!どうしてそんなことになった!悩みがあるのならはっきりと言ってくれよ!」

 ソウルタクトで突き刺そうとする俺に対し、ドルチャ-ヌは堅い腕で受け止めていた。

 「二ヶ月前の試合で俺はやっとのことでエースに昇格した!他の中学(やつら)と戦って勝つことがただただ嬉しかった!だがお前が主将(キャプテン)に指名された途端、この前の試合で俺はまたベンチに引き戻された!どうしてそこまでするんだよ!主将なんぞ…、エースなんぞ…、肩書を持つお前は名ばかりだ!!せっかくのチャンスをぶち壊しにしたお前を絶対許さねぇ!貴様は主将兼エース失格だ!!」

 皮肉な声を上げたドルチャーヌは、その腕で俺を()ぎ払った。持っていた黒い剣で転がり込んでしまった俺に(とど)めを刺しかかるその時だった。






 「先輩!カナちゃんはそんなことをする人ではありません!!」

 ソウルグリーンが俺を(かば)ってその剣を止めた。

 「黙れ小僧!!」

 しかしグリーンもドルチャ-ヌによって薙ぎ倒されてしまった。トゥーリットと乱闘していたレッド、ピンク、ブルーも全く歯が立たず苦戦していた。終いには三人で襲いかかっていても吹き飛ばされる始末であった。

 「今回はこのぐらいにしておこう。ずらかるぞ、ドルチャーヌ」

 「はい、トゥーリット様」

 トゥーリットはドルチャーヌ(江本)を連れて、俺等の目の前で消え去った。

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