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音楽戦隊ソウルジャー  作者: 影林月菜
第二曲 リーダーの自覚とエースとは何か
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第二楽章 彼方 黒野家地下一階リビングにて

 その夜。兄貴達の話し合いの結果、『周囲にはソウルジャーであることを誰にも知られてはならない』、『戦闘中はお互いに変身した姿((すなわ)ちカラー)で呼び合うこと』ということを俺や(ひかり)、セイちゃんに知れ渡った。また女神様は何故(ほたる)の体を借りて身を隠しているのか、何故アルマイナとか言う変な組織に追われているのかという詳しい情報も聞いた。






 レイクルス=ミューズ=ハルモニアンは、今からおよそ三千年前に存在していたハルモニアン星という惑星(ほし)の音楽の女神様であり、彼女の歌声を聴くだけで心が癒されるだけでなく、汚れた心も浄化するという素晴らしい能力の持ち主であった。だがある日のこと、ハルモニアン星の民に扮した一人の宇宙人がスパイとして紛れ込み、そのトップが女神様の能力を奪おうと暗殺を企てたこともあって、ハルモニアン星の侵略も兼ねて襲撃して来たのだと言う。それを知った赤の戦士、黄色の戦士、桃色の戦士、青の戦士、緑の戦士という五人の英雄・五大戦士が女神様を護るために宇宙人の組織と戦った。

しかし宇宙人は滅ぼしたものの、ハルモニアン星は消滅してしまい、女神様は組織のトップの呪いにかけられ三千年の眠りについてしまった。

 呪いが説かれた今、女神様を護っていた五人の英雄達は鈴の形をした石と化してしまい、滅んだはずの宇宙人がまだ生き残ってることと、その宇宙人が宇宙侵略組織アルマイナとして計画を実行しようとしていた。アルマイナのトップは未だに女神様の能力を奪おうと暗殺を企てており、力を失った戦士達は時を超えて有名な音楽家と出会い、俺等と契約したことで戦う力を授かったということになった。

 ちなみに石化した鈴(後のソウルベル)にはそれぞれの音楽魂(ソウル・ムジーク)が宿っているらしい。






 「おい彼方(かなた)!お前珍しく手が止まってるぞ。せっかく好きなカレーが出てるってのによ」

 夕食の時間、俺はいつの間にか意識が遠のいていたようだ。兄貴の声で気づいた俺は慌てて食べかけのカレーライスを口に(ほう)り込んだ。

 「ん?どないしたんカナちゃん、さっきギンが『手止まってる』って言うてたけど?」

 一緒に暮らしている月夜(つきや)姉さんも気になったのか俺の顔を窺った。

 「あ…あぁ…何でもねーよ」

 頬にご飯粒がくっついているのを気にしながらアハハと笑った。けど隣に座っている相棒のセイちゃんだけは無表情で皆に俺の心理を打ち明けた。






 「…部活で一人…辞めた人がいました…」






 それを聞いた一同はただ何のリアクションもせず、目が点になっているだけであった。

 「セイちゃん…そういうのはあんまり言わないでくれないかい?」

 確かにその通りだが、そのことに関してはあまり触れられてほしくはなかった。

 「なぁカナちゃん、辞めた人ってどんな人なん?」

 「月夜、何でそこに食いついた」

 姉さんの質問に対し、兄貴は珍しくまともな指摘をした。

 「…」

 ここは答えるべきだと分かっていても、ショックが大き過ぎてその気にはなれなかった。

 「カナちゃんと同じクラスの人なのですが、急に転校が決まってしまいやむを得ず辞めることに…」

 ここでもセイちゃんが言いたいことを代弁した。

 「あー…、それは仕方がないよね~…」

 輝がデザートのプレーンヨーグルトを頬張りながら容赦無く言った。同じくして蛍も食事中ずっとぶつぶつと独り言を言いながらヨーグルトの蓋を開けた。

 「確かにっ!それで落ち込むのは馬鹿馬鹿しいし主将(キャプテン)らしくねーけど…けど、ここまでずっと戦ってきた仲間なんだぞ!今すぐに立ち直れと言われても無理だ…」

 突然立ち上がった俺はとうとうこの思いを皆に当ててしまった。

 何故こんな感情的になって皆にあたってるんだろう…。こんなことがもっと馬鹿みたいなのは分かってるるのに…。

 「そうだったのですか。それは辛い思いをしましたね。しかし、そのようなことでずっと立ち止まってても何も変わりません」

 宇宙(そら)が上品に味噌汁を(すす)った。

 宇宙の発言は妥当だけど、今はどうしても立ち直れない状況に立っていた。それでも話をそのまま聞くことにした。

 「悲しいことを考えるのではなく、先のことを考えて下さい。もしその人が他の学校で同じサッカー部に所属していると明らかになれば、大会で同じ場所で会うか戦う可能性はあります。それが真実かどうか不安なのであれば、直接本人に聞けばよろしいかと思います」

 「そうだぞ彼方、たがが転校するぐらいで本当の別れをすることでもねーし、また会えると思えばいいんだよ!」

 「おっ、ギンが珍しく真面(まとも)なこと言うとる!」

 姉さんが思わず箸を止めて兄貴を指した。

 「おい月夜!それどういう意味だ!?」

 ここで兄貴と姉さんの揉め事が始まった。俺はそんなことに目もくれずさっさと残飯を片付けた。

 確かにここで落ち込んでいたらどうしようもならない。明日があると信じて進めればいいんだ!

 「みんな、本当に悪かったな。こんな空気にしちまって」

 「何言ってんだよ。俺らは家族だぞ?悩みをお互いに打ち明けたり相談したるするもんが当たり前のことだろ?」

 兄貴が白米をもぐもぐと食べながら言った。

 「兄貴…」

 「それに、躊躇しとるだけで何も解決せえへんよ?バンバン言うたれや!」

 「月夜さん、沢山悩みを抱えているのによくそんなこと言えますね」

 「セイちゃん!そんなこと言わんといて~」

 無表情のセイちゃんに対し、姉さんは力無く言った。

 もう俺は些細なことで落ち込まない!これからは前をしっかり見ないとな!

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