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物理勇者の理不尽戦記

作者: 超人合体ハシライン

初の短編です、残酷な描写はなく、コメディですので気軽に読んで下さい。

 人の国と魔族の国の折衝地点、人の国の城壁の外、幾度も魔族に戦争を仕掛けられ、草の1本も生えなくなってしまった荒野、そこに人の陣営と魔族の陣営がそれぞれ分かれて向かい合っている。

 戦前のピリピリとした緊張感の漂う荒野に、無駄な筋肉のない細身のおっさんの大声が響き渡る。


おっさん「お前たちにはまだ足りていない物がある! それが何か分かるか!?」

マッチョA「経験! でしょうか?」


 マッチョAは背筋と肩甲骨周りの筋肉を強調しながら答えた。


おっさん「違う!」

マッチョB「技術! でしょうか?」


 マッチョBは大胸筋を強調しながら答えた。


おっさん「違う!!」

マッチョC「(ブーメラ)(ンパンツ)!でしょうか!?」


 マッチョCは腰のあたりに手でブーメランパンツの形を作りながら答えた。


おっさん「惜しい! お前ら! 俺の教えを忘れたのか!? お前たちに足りない物はただ一つ!」


 そこまで言うとおっさんは一度言葉を区切り、不敵な笑みを浮かべてこう言った。


おっさん「敵を圧倒する火力(物理)だ!!」

マッチョ集団『はい! 師父!!』

おっさん「声が小せえ!!!! もっと腹から声を出せ!!!!!」

マッ集『はい!!!! 師父!!!!!』

おっさん「いいか!! 筋肉は信じた分だけ答える!!!」

マッ集『筋肉!!!!』

おっさん「筋肉を鍛えれば俺のように勇者と呼ばれる存在にだってなれる!!!」

マッ集『筋肉!!!!!』

おっさん「さあ!!! 行くぞお前ら!!!」

マッ集『応!!!』

おっさん「筋肉の夜明けだ!!!!!」

マッ集『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!』




                       敵陣営

 眼前の荒野には半裸で筋肉の鎧を纏う総勢30人の大男の集団とその先陣を切る一人の細身のおっさん。

 敵軍の熱気が凄まじく、3キロ以上離れているこちらも先程の怒号で耳鳴りがしている程だ。

 なお、敵は31人全員が10年に1人の逸材が修行の果てに達人の域に達することで纏えるという()を纏っている。

 そして何故か、我が軍の一部隊を一撃の拳圧のみで全員をなぎ倒す度に、または、攻城兵器を素手で破壊する度に、更には突撃の姿勢に移る前など、事有る毎に必ず(いず)()かの筋肉を主張するポーズをとりつつ、≪ニカッ☆≫と擬音の出そうな程にいい笑顔を此方の陣営に向けてくるマッチョ集団。

 その先頭には、達人ですら一目見れば理不尽だと叫び出したくなるような、異常な程に濃密な(けい)(こう)を自身の持つ圧倒的な量の気を(もち)いて纏っているおっさんがいる。


 本来、軽功と言う物は水に浮く木っ端に乗っても沈まない程に自身の体重を軽くする筈の(わざ)である。

 しかし、おっさんは例として挙げれば、鯨以上の体重を持つ物でさえ風で吹き飛ばされるほどに濃密な軽功を纏っている。

 にも関わらず、一般人と言うには少し逸脱しすぎている背後のマッチョ集団よりも重い足音をたてながらこちらに迫って来ている。

 そして、それでもまだ余裕のある気を用いて自身の筋肉をいじめ続けているおっさん。

 細身に見えるが、気を用いて巨大過ぎる筋肉を異常な密度に纏めあげている、鍛えすぎた筋肉によって鯨以上の体重を持ったそのおっさんの名は【勇者 ゴレリア・マッスル】。


魔族軍師「我々はアレを倒さなければならないのですか?」

魔族将軍「ああ。」

魔族軍師「勝てると思いますか?」

魔族将軍「正直に言っていいか?」

魔族軍師「ええ。」

魔族将軍「ぶっちゃけ勝てるビジョンが浮かばない。」

魔族軍師「ですよね~(笑)」

魔族将軍「寧ろどうやったら勝てるか本人に聞いてみたいな。(笑)」

マッスル「そうだな、筋肉が足りんな!」

軍師&将軍『そうそうそんな感じで答えそう(笑)……え?』

マッスル「鍛え方が足りん! まずは基礎体力作りからだな!」

軍師&将軍『いやああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!』




                   後日、魔王城にて

魔王「よく来たな、勇者よ。」

マッスル「ああ、俺が【勇者】改め【筋肉神】のマッスルだ!」

魔王&家臣『……』

魔王「まぁよい、しかし、よくここに顔を出せたものだな? 裏切り者の将軍と軍師よ?」


 呼ばれた二人は最近になって出来上がりつつある見事な筋肉を主張するポーズをとり、グッと筋肉に力を入れる。


軍師&将軍『……』(ニカッ☆)

魔王&家臣『……』

魔王「……なぁ、もう降参して逃げていいか?」

家臣「……駄目です、ここが魔族の最後の砦なんですから。」

マッスル「俺が勝ったら共に筋肉を鍛えようぞ!!!」

まおー「もうやだ帰りたい。」

かしん「ここが魔王さまの家ですよ。」

まおーん「自宅に筋肉が押し寄せて来て詰んだ件について。」

かしーん「心中お察しします。」

マッスル「筋! 肉!」


 勿論勇者の鍛え上げた筋肉に魔法や武器など通用する事もなく、圧倒的な火力(物理)で余裕で勝利を収める。


 マッスルの勝利後、勇者マッスルを筋肉神マッスルと崇める筋肉教が正式に発足し、全世界に一神教として人、魔族の別なく広まり、やがて強制するでもなく全ての宗教が筋肉教に塗りつぶされる事となった。

 世界は今日も筋肉教徒であふれ、平和と筋肉と豪快な笑い声に満ち溢れていた。


                     完!!

筋肉の夜明け、ここに来たれり!

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[一言] 筋☆肉☆炸☆裂 魔族達よ、悲しすぎる。
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