そのくー
とりあえずギルドへ向かう。
街のつくりは俺が知っているものと対して違わなかった。
よって速攻で見つかったんだが。
「こんにちはフラグさん。今日は何のご用でしょうか?」
あっれぇ?
「えと、受けてる依頼の確認に?」
「? そうですか、今受けているのは、護衛の依頼だけですね」
おっやぁ?
「ファーガスまで……どうしました?」
「イイエ、ナンデモナイデス」
ちょっと待てちょっと待て、どういうことだ?
すでに登録されていて、しかも依頼まで受けているだと?
思い出したのは、置き去りにしてきた商隊のことだった。
まっじーなおい。
もし護衛の依頼ってのがあれのことなら。
俺、依頼放棄ってことになってるんじゃ?
いやーな汗をたんまりとかいて立ち尽くしていると、バンッと派手な音がした。
振り向くと、ギルド館出入り口のドアが、力任せに開かれていた。
「ふ~ら~ぐ~……」
地の底からの声ってのは、きっとこんな声だろう。
俺は……固まってしまっていた。
恐ろしかったからじゃない。
「でぃ、ディーナ」
ギルド館の扉を押し開いたまま両腕を突っ張っているのは、間違いなく……。
「あんたなに依頼放棄なんてしてんのよ!」
手を離し、一気に距離を詰めてきた。
ドアが勝手に閉まっていく。
俺は、胸ぐらをつかまれて、頭一つ低い位置から、おっそろしい形相で睨み上げられた。
「なんで!?」
「パーティー解除してないでしょうが! 移動先を追ってきたのよ!」
パーティー設定見てなかったし!
パーティーを組んでいると、メンバーが今、どこのフィールドにいるのかは表示されている。
ディーナの名前があったのか!?
「荷物番のくせに逃げ出すなんて! どういうつもりよ!」
荷物番!?
「それも強盗を退治して、依頼を果たしてからだなんて、やり損じゃない!」
ゴッとスネを蹴られた。
「~~~!!!」
カンストスキルでスネ蹴りとか!
俺は足を抱えてうずくまった。
ちくしょうと思って涙目を上げる。
そして俺は固まってしまった。
やべー、なにこの子、ちょーかわいー。
小さな顔に青い瞳と桜色の唇。
白いブレストアーマーを、ほどよい胸が押し上げていた。
背中には赤いマント。その上を金色の髪が腰まで流れて……。
短いスカートに、長いブーツ。間に真っ白な肌。
つまり真正面には絶対領域が!?
……抱きつきてぇ。
……すりすりしてぇ。
……枕にしてぇ。
いや抱きついて枕にしてすりすりしてぇ。
「俺、いつかこの太ももを、抱き枕にしちゃうんだ」
ゴッと、そんな俺の顎をスキルレベル255の膝蹴りが強襲した。