そのはちー
……もし、この虎母が俺のモンになったら、俺、ぜったい歯磨きさせるんだ。
臭かったです。
両手を突いてげーっと吐いた。
歯槽膿漏なんてもんじゃねぇ、未開文明の洗礼を味わったぜ。
あと舌がめっちゃざらついてました。
母親は元気になりました。
今は万能薬を飲んでます。
ポーションで体力を戻して、万能薬で毒と麻痺と病気を癒して、最後にハイポーションでとどめを刺す。
結果、すっげー肉付きの良い雌虎になりました。
なにこれ?
効き過ぎ怖い。
てか若いなかーちゃん。
見た目俺より若くねーか?
「元気になって何より」
「はい」
警戒しているのか、子虎を抱きしめてこっちを見ている。
「動けるようになってすぐで悪いけど、目立ってるから、さっさと中に入りたいんだ」
そういうわけでと、強引に腕を取り、門へと向かうため立ち上がらせた。
門まで行くと、母虎は門番に、街にいる知り合いを訪ねてきたと、メダルのようなものを見せた。
それを見た門番が、そこで待てと、番所を指定する。
門番が仲間を呼んで、どこかへやった。
焦っている様子から、かなりの大物を呼びに行ったとわかる。
「んじゃ、俺はここで」
「え?」
「日が暮れるまで時間がないからな、宿とか探さないと」
そうですかと、母虎は微妙な顔をした。
「どうした?」
「お礼も……」
「いや、街に入るのを手伝ってくれたろ?」
「でも」
「そういう契約だからな、ま、同じ街にいるんだし、そんなに宿があるわけでもないんだし、何かあるんなら探してくれ」
じゃあなと、言う。
一人門番が減ったために、検問の手が足りなくなって、忙しくなっているようだ。
こちらを監視している隙がなくなっているのを見て、俺はこっそりと、一人で番所を後にした。
さあて、定番の行動に出てみるか。