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「んじゃ、遠慮無く」


「どうぞ」


「この星は、誰が作ったの?」


「宇宙人」


「なんで?」


「僕が頼んだから」


「なんのために?」


「刺激的に生きたくて」


「気に入ってる?」


「いまいち」


「どこが?」


「君は、レベルやスキル制についてどう思う?」


「どう……、って言われても」


「ドラゴンレジェンドについて」


「他のゲームとはちょっと違う?」


「どこが?」


「エディット機能かな? カードの組み合わせ次第じゃ、レベルとか意味がなくなるような、魔法やスキルが作れるって、ゲームバランストルの難しいでしょ?」


 姉さんのチートとかなー。

 素人でもわかるのに、そういうの導入してるとか。

 チャレンジャーだわぁーって……。


 んで、この人は、なんでそんなにうれしそうかね?


「そこに気がついてくれるとは」


 やたらっと手をすりあわせて、そわそわし出した。

 照れてんのか?


「僕はね、常々、不満だったんだ。レベル、経験値、種族にジョブ。アビリティにスキル。ステータス……。ゲームのキャラクターの成長って、あれは成長って言えるのかなってさ。だってそうだろう? 技も魔法も、レベルアップして手に入れるって言うのはさ、逆に言えば、あらかじめ素質や素養として、それらはインプットされているってことじゃないか。経験を積むことで、それが開眼していくんだ……、って言えば聞こえは良いけどさ、そうじゃないんだよね。結局は、そういったものを扱える強さや賢さを手に入れたと判断されると、レベルアップという形の認証を受けて、プロテクトが解除され、新たな力としてスキルが解放されていく。そういうことなんだよね。授かるんでも、手に入れるんでも、編み出すんでもない、元々織り込まれていたものが、使えるようになる、それだけなんだ」


 なにを言ってるんだ、このヒトは。

 俺は、きょとーんとしてしまった。


「だって、ゲームって、そういうもんだろ?」


「でもさ、それが現実だったとしたら? あらかじめチート的能力を仕込まれた上で誕生させられて、魔王の討伐に出かけさせられて、戦ってるうちに能力が解放されていって、魔王を倒しやすくなっていくんだ」


「勇者って、そういうもんだろ」


「でも、それって、結局は、そこに住まう村人に比べたらチート的なだけで、能力については、あらかじめ必要なものを提供されているんじゃないか。新しい力を振り回せるようになる楽しみはあったとしても、自分から努力して編み出したり、生み出したりしてるわけじゃない……。それって、チート?」


 予定調和。


「最初から、倒せるようになる形を与えられているってのは、どうなんだろう? 最終的には、倒せるようになるから、そこまで頑張りなさいってのは、意味のあることなんだろうか?」


 言いたいことは、なんとなくわかる。

 チートってのは、あり得ないことを成しているから、そう口にされるんだ。

 だからこそ、持ち上げられて、畏敬の念を向けられるんだ。

 ただレベルをコンプリしただけの強さじゃ、カンストって評価しか受けられない。

 それは時間さえかければ、誰にだって到達できるものでしか無い。

 魔王を倒せるほどの努力を積んだとしても、それはただ、モンスターを倒すって言う、作業を済ませただけに過ぎないんだよな。


 倒し続ければ、誰にだって到達できる高さなら、自分──プレイヤーの操るキャラクターでなければならない特別性は、ないことになる。


 努力の果てに、なにかを得たって感動も、達成できた喜びも、元々用意されていたものだってわかっていると、ちょっと萎えるよな。


 だってさ、下手すりゃ、事前情報が入って来ちゃってるわけだよ。このレベルになったら、こんな力が手に入りますよーってさ。


 んじゃ、そこまでレベル上げてからにすっかーって、作業的にもなるじゃんか?


「そんな世界を用意されてだよ? それが、これから君が新しく生きていく世界になるだ、なんて言われたって、それってどうなんだろうって、思わないかい?」


 だから、ちょっと違ったことをしてみようって、思ったんだろうか?

 でも、それは。


「人……、宇宙人に作ってもらうんだから、しかたないだろ? システム的とか、ゲーム的になるのはさ」


「そうなんだけどね、そうなんだけど」


 なんか、嫌な笑い方するなぁ、この人って。


「そこで、ちょっと考えたことがあってね」


「ん?」


「最初は、ちょっとした科学番組を見ていたときのことだった。そこから始めて、僕は可能性に至ったんだ」


「宗教的な話?」


 いやいやと。


「もっと現実的な話だよ。荒唐無稽ではあるけどね。手段がちょっと乱暴で、困ってたんだけど、これがなんとかなりそうで、我慢できなくなっちゃったんだ」


 ふわふわと浮いていた椅子の正面をこっちへと向けて、両手を広げた。


「だから君たちを巻き込んだ」


「うおい?」


「怒らないで欲しい。……この世界で動いているのは、キャラクターと呼ばれる存在だけだった。彼らはプログラムに準じて反応し、反射的行動を行っているだけの存在なんだ。メインサーバーによって統括されている存在(プログラム)に過ぎないんだよね。だから、予定外のことは行わないし、反応もしてくれないんだよ。全て予想通り、想定通りに、予定範囲内に収まるように、物事を調整するように思考し、活動するんだよ。そこには偶然を装った失敗さえあるんだ。でもね、それって、パターンさえ確定してしまえば、予測が付いて、結末が選べてしまうってことなんだよね。それじゃあ、僕が望んだ、刺激的な世界には、ほど遠いじゃないか」


「刺激ってのは、先がわからないから、面白いって?」


「うん」


「だから、俺たちを巻き込んだ? どう動くかわからない存在が欲しかったから?」


 ぴんと、こいつは指を弾いて俺を指した。


「君はその中でも、特別だった」


「あ?」


「だから、ここまで通したんだ」


 なんだろう?

 こいつ、表情は笑ってる、けど。

 俺を見る目は、嫉妬で酷く濁ってた。

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