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 ──FPS.


 まあぶっちゃけ姉さん無双があったわけで。

 その辺り、特別に語るようなこともなく。


「レベル上げてくから」


 先、行っといて、っと。


 ……ま、いっスけどね。


 そんなわけで、俺、ディーナ、ことらんの三人で先行とあいなりました。


 つってもスニークミッションなんだけどさ。


 この魔物の谷は、正直、最奥に魔王でもいるんじゃないかってくらい、モンスターのレベルがハンパない。


 基本、ボスクラスって、どんなだよ?


 大きさも凄まじい。VRMMORPGで感動を覚えることの一つって、間違いなくこれだろう。


 今は現実なんだけど。


 下から見上げれば首が痛くなり、同じ高さに潜めば眼前を壁のような皮膚が横切っていく。


 視界を埋めるほどの巨大な肉壁が、ゆっくりと、こちらには気付くことなく、通り過ぎていくんだよ。

 四本足の巨獣だった。高さで二十メートル、前後は頭から尻尾までで三百メートルくらいはあるだろう。


 まさしく、怪獣、だ。


 戦闘時には、こんなのが大顎開いて迫ってくるんだ。

 視界を覆う顎。その牙だけで俺たちより太く大きい。口腔には野太い舌が踊ってる。


 顎は地に突き、地面をえぐるエフェクトと共に、襲い来る。


 巨木や土ごとすくい上げられ、ぐちゃりぐちゃりと咀嚼され、飲み込まれる恐怖に、ひっと声を上げるなんて普通のことだった。


 もちろん、ゲームだから、ほんとには飲み込まれずに、真っ暗になるだけだけどな。


 ……ここでそれを試そうとは思わないよ。さすがにさ。


 ゲームだと、踏まれてもどうってことはなかった。ただダメージを食らうだけだった。


 だけど、あんな足が頭の上から落ちてくるとか、そらびびるわ。

 鉄骨が落ちてくるどころじゃねぇよ。車が落ちてくるより怖いわ。


 あっと言う間にずしんと圧縮。

 あ、あれ、死んだな。


 はい、そうです、なんか果敢な冒険者諸君が戦ってます。


 それを崖の途中にある横穴から覗き見てます。


 なにやってんだ、あれは。


 ボスモンスターに近距離戦とかありえねーだろ-。

 うん十メートルの巨体に、一メートルちょいの鉄の塊振り回して突貫とかさー。

 勝てるわけねーじゃん。

 ゲーム脳が抜けてねぇな?

 そんなのでダメ食うのなんてゲームの世界だけだろう……、ってここもゲーム準拠ではあるけどさ。

 足の太さだけで、一回り十メートルは超えてるんだぜ? そんなもんが巻き起こす風圧を考えたことがあるのかと。

 そもそも、剣じゃ、足か、尻尾くらいしか、切っ先の届く部分がないだろうが……。

 なんで、遠距離の火力戦を選ばないんだよ。

 まあ、おかげでこっちは気付かれることなく、通り過ぎて行くことができるわけだけどさ。


 でもあれ、プレイヤーなのか、こっちの人なのかわからんな……。


「いいか、ディーナ、切らすなよ? 切らすなよ? フリじゃねぇからな。違うからな?」


 ディーナに切らすなと言ったのは、隠形系の魔法だ。

 姿が見えないようにするインビジ。

 音を聞かれないようにするためのスニーク。

 臭いでばれないようにするためのデオドラ。


 魔法感知系のモンスターもいるため、基本的には同等の効果を得られるアイテムを使用して進んでいる。


 切らすなよ? 切らすなよ?


 だからことらん、マーキングしようとすんな!


 ……はい、手遅れでした。


 これ、俺たちが離れたら、モンスターが反応すんのかな?


 そそくさと離れて、奥を目指します。


 なんかモンスターが、地面にできた染みに向かって寄ってく影が見えたけど、きーにーしーなーいー。


 最初は、平原から突然切り立った崖にぶつかり、そこに開いている亀裂を奥へと入り込む。


 んで、ちょっと広くなったり、分岐したり、谷間だけど緑があったり、滝があったり川とか池とか。


 オークやゴブ系のモンスターが要塞を築いてたりとか。


 まあ姉さんの良い餌になりましたが。


 爆熱炎熱魔法一発ってなんだあのチートッぷりは。


 効果範囲とかどうなってのかね? ナパームみたいに舐める炎が、ずーっと奥まで波となって流れ込んでいって、「おー!」って姉さんが喜んで。

 相当経験値が入ったんだろうな……どんだけ殺っちゃったんだよ?


 なんかもう、範囲魔法ってレベルじゃねぇよ、あれ。


 でもこっちは中レベルですので? こうやってこそこそと進んでるわけですよ。


 谷の奥まで来ると、そこからは洞窟だ。

 モンスターが拓いてる坑道とか、モンスターが掘り抜いた穴とか、自然の洞窟とか、いろんなのが結合してる。


 そうやって、俺たちは、奥へ奥へと降りていた。

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