表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生THE(駄)フラグ(仮題)  作者: nakaya
巻きに入ります。
55/74

真相の三部公開。

 ──FPS. フラグ



「フラグじゃ……ない?」


 きょとんとした様子で小首をかしげる。

 意味がわからない、ってんじゃなくて、それが? って感じだった。


 なぁんかやりづれぇな。


「俺は別の世界の人間で、今はフラグの体を借りてるんだ」


「…………」


「けど、フラグは消えたわけじゃない。俺が出て行くためには、ちょっと行かなきゃならない場所があるんだけどさ」


「…………」


「ええと……」


 どうすんの? どうするの!? この空気!


「まーしょーがねーよなー」


 そんなもんだと告げられる。


「誰もが彼もが|なりきり《Roll Playing》ごっこを楽しむってわけじゃないからな。そういうところを深く考えたりはしないように、思考がブロックされてるんだろ」


「なんかそれ……」


「不憫だとか、不自然だとか言うなよ? そういうところが、作り物なんだってことなんだからさ。キャラクターは、プレイヤーのために存在してる、偽物なんだよ」


 ディーナへと目を戻す。


 やっぱり、きょとんと首をかしげたままで……、でも、微笑は止めないディーナに、俺は……。


「ふふふふふ、ふらぐっ!?」


 思わずディーナを抱きすくめて、後頭部を撫でまくってしまった。


「うしっ!」


 突き放すように距離を開けて、決意する。

 ディーナは頭を鳥の巣のように爆発させた状態で、目を白黒させてる。

 そんな姿に、口にする。


「フラグを返そう」


「良いのですか?」


「仕方ないッスよ」


 ですがとシルフィードさん。


「新しい体……、キャラクターを作成した場合、レベルは1からとなってしまいますよ?」


「うっ……、し、しかた、無いッスよ」


 ぽんぽんと肩をたたかれた……、ねえさんに抱き上げられた、ことらんに!


「レベル上げ、手伝ってくれるってさ」


 にししと笑うねえさんに、俺はがっくりと頭を落とした。


「お願いします」


 ねえさんは、ことらんの肉球を取って、ふるふると振った。


「まかせろって」


「ねえさんは返さないんですか?」


「正直、うちのは、あんたのディーナみたいに、親密な関係だってわけでもないからねぇ」


 そのままでも問題ない程度の思い入れしかないってことか。


「このゲーム、基本的に狩りゲーだから、倉庫キャラって、普通はほとんど使わないでしょ? 実際、あたしんとこの子、レベル1のままだしね」


 普通は、それでも多少のレベル上げを行う物だ。

 なぜなら、インベントリの最大収容能力の拡張クエストなんかがあるからだ。

 最低限、それらをクリアする程度には、キャラクターを動かすもんだけど。

 ホームも倉庫代わりにはできるけど、やっぱ生産職にとって、出し入れはきついからな。

 鞄に放り込んでる物からさくっと出して作れる方が便利だし、そうなると、ある程度の収容能力は欲しくなる。


 もっとも、ドラゴンレジェンドってゲームにおいては、生産職の存在意義なんて、ほんとに微妙なもんだったけどな。


 原因の一端は、ねえさんみたいなチート組にあったんだ。


 いらんことばっかりやるもんだから、生産職のバージョンアップなんかが後回しにされて、修正ばっかり行われたんだ。


 それに、強い武具よりも、スキルや魔法を、チート的に駆使した方が、強かったしな……。


 ぶっちゃけ、初期装備でも問題ないって言う、な。


 酷い話だ。


 普通のゲームは、プレイヤーのレベル上限について、ボスクラスのモンスターよりも高くなるなんてことはないように、設定されているんだろう?


 じゃあどうやって倒すんだと言えば、パーティ組めやと、そういう話なわけで。


 一対一では、当たった、当たらないのランダム判定で、被弾数ゼロだなんて、そんな非現実的なことは起こりえない。


 ゲームバランスってのは、そういう風になっている……もんだろう。


 だけどドラゴンレジェンドはそうじゃない。

 組み合わせ方によって、新しい効果を生み出せるってことは、被弾率をゼロにしてしまう方法だって、編み出せるってことなんだ。


 同時に、防具を着けなくても、防具を着けている以上に身を守れる方法を、考え出せるってことでもあったんだ。


 そりゃあ……、生産職なんてやってられないよな。


 ちまちま素材集めてもの作ってるよりは、スキルとか魔法とかで、遊んでる方が楽しいし。


 この辺りのことで、まあ、おかしなことにはなってたけども。


 このゲームでは、組み合わせによって、新種の魔法を生み出すことが出来る。


 とは言っても、効果、ダメージ、エフェクト、そういった物は共通で、組み合わせの結果が無限大、新種や亜種に見えると言った感じだった。


 ファイヤーボール、ファイヤランス、ヘルファイヤ、ファイヤウォール、ちょっと思い出すだけでもまだまだ出てくる火系の魔法だって、エフェクト、効果、ダメージ、範囲、……プログラム的に見た場合、組み込まれてる土台っていう名前の変数についてはみんな同じだ。


 形となった時の、名前と数値が違うだけ。


 ってことで、勝手に名前が付けられて、魔法やスキルは、もうなにがなにやら、訳がわからなくなってしまっていた。


 自由度が高すぎるってのは、こういうことが起こりやすく……、また、バグりやすくて、酷すぎた。


 おかげで、後発のゲームについては、そんなドタバタを反面教師にした他メーカーが、良いもの送り出してくれましたとさ。


「あれ?」


「なに?」


「……後発のVRMMORPGって、通信回線どうしてんのかなって思ったんスよ」


「……ドラゴンレジェンドについては、宇宙人の技術ありきだったとして?」


 どうなんだろうと、ねえさんと首をひねっていると、レイドさんが口を出してきた。


「ハードとソフトについての話を、一緒くたにするこたはないんじゃないか? 通信は通信、この世界(ドラゴンレジェンド)用のはまた別個かもしれんしな。実はお前らみたいなのが、別のゲームでも発生してたりするかもしれんし」


 工工エエエエ(´Д`)エエエエ工工


「実は、お前らのアバターには、移動について、制限が設けられてるのかもしれんしな。その範囲外には、別のゲーム用の世界が構築されてて、そこではまた、別のプレイヤーが、酷い目に遭ってたりするのかもしれないぜ?」


「だから、話を広げないでくださいよ」


「わりぃわりぃ」


 んじゃ、そろそろ動くかと、レイドさんが言い出した。


「俺たちは船に戻る。お前たちはこのまま進め」


「別行動ッスか?」


「さすがに、本体とのリンク切れはまずいからな。それに、新しい体のこともある。作るのなら、シルフィードが持ってるプログラムを使った方が安全だ」


「そうッスか」


「けどな、どのみち、こっちの擬体製作システムを押さえんことには、手が打てん。そのためには、これから行く場所の攻略が必要っぽい。となると、別に行動した方が早いだろ?」


「俺たちだけでやるんスか」


 何言ってんだって顔された。


「落とせるんだろ?」


「そりゃま、できますけどね」


 まあ、ぶっちゃけねえさん一人で大丈夫なわけだが。


「あんたも、やるのよ」


 見透かされた。


「へーい」


 俺は、ことらんを抱き上げると、よいしょっと肩車した。


「んじゃ行きますか」


 はいはいとねえさんが着いて来る。

 そしてディーナもだ。

 フラグを返して、二人にしてやったら、こんな不自然な感じじゃなくて、もっと自然な感じになるんだろうか?


 で、そこにいる俺、神様タダオ。


 そんな俺を尊敬と憧れの目でもって見るディーナ。


 嫉妬するフラグ。


 やべ、寝取りフラグ?


「……そしてどっちも中身俺って、どんなだ」


 なんかげんなりとしてしまった。


 ちらりとレイドさんとシルフィードさんを見ると、んじゃなと手を振ってくれていた。


 ……あの人らの調子を見てると、たぶん、ちゃんと体を返せるんだろうなって思えるんだけど、だけど、やっぱりちょっとだけ不安なんだよな、だってさ。


 別のキャラへ移動するために、スタート画面を出すために、アルフレッドは自殺って方法を使ったんだぜ?


 もしそれが唯一の方法だったとしたら、どうなんだ?

 俺は、ディーナを見てしまった。


 ん? って、くりっとした目を向けてきた。


 ……俺は、ちゃんと、フラグから抜け出せんのかな?


 やっぱり不安になってくる。

 別キャラに、この世界に縛られないキャラに移動できたとしても、フラグが死んだら意味が無いんだ。

 ねえさんを返したいって考えてたみたいに、フラグだって、フラグのまま、存在させたい。

 完全に俺だってわけじゃなくて、俺の行動をベースに生み出されただけのフラグだって知ったから。

 今まで、ディーナと生きてきたってんなら、その二人に戻してやりたい。

 フラグとは……、気が合うんかね? それとも同族嫌悪を起こすんだろうか?

 俺同士ってことで。


 ……そんなことをつらつらと考えて、自分のことでいっぱいいっぱいになってたもんだから、俺は、レイドさんとシルフィードさんの、不自然な距離感に気が付いていなかったんだ。


 いつもくっついてるあの二人が、微妙に距離を開いていたことに。

 ぴりっとした警戒心を、互いが壁として持っていたことに。





 このとき、俺は気付くべきだったんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ