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PvP(8)

ちょっと前に長さがどうのこうの言ってましたがすみません!

切るところが見つかりませんでした!w

 先が見えないことにヤケになる。

 バックラーを投げつけ、こうなれば、と、上級装備を持ち出そうとして……俺はインベントリを操作する手を止めてしまった。


(え?)


 投げたバックラーが……彼によって、剣で叩き跳ばされたからだ。

 俺は弾かれたバックラーを目で追ってしまった。


「うわ!」


 腹の辺りを剣が薙ぐ。

 慌てて下がって……ぎりぎり間に合った。

 間一髪、胸当ての下、布地の部分が横一直線に切れた。


 とにかくと、手当たり次第にものを持ち出し、投げつける。

 それを彼が剣で弾き、あるいは壊す。


(なんだ?)


 そこに、ひっかかりを覚えた。


(何がおかしいんだ?)


 剣、盾、鎧に、本に瓶に箪笥。


「それはないでしょぉお!?」


 彼は突然出てきた箪笥に驚き逃げた。


 インベントリは、種類ごとに上限数の制限はあっても、大きさに制限はありませんw


 どがしゃっと落ちた箪笥に黙祷しつつ、俺はやっと手に入れた隙に考えをまとめた。


(分類?)


 投げた、ということはスキルが発動してる?

 投擲スキルが発動するのは武器だ、防具じゃない。


(え?)


 視界に、弾かれて散乱することになったオブジェクト群が目に入った。


 武器は、壊れてる。

 それ以外は?


 もう一度。


 俺は、二度目のなんたらを狙っているふりをして、武器を投げ、道具を投げ、そして家具を投げつけた。


「何度も!」


 彼は騙されて、いくつをか剣で壊し、弾き、そして家具を魔法で焼いた。


(そういうことか!)


 迫り来られて、俺は二人の間にバックラーを浮かせた。

 投げつけたわけじゃない。

 二人の間に漂うように、彼の剣戟の軌道上に、置くように浮かせてみた。

 それを彼の剣は、壊すことなく、はじき飛ばした。

 わかるだろうか?

 武具を破壊するという特性を持った武器が、防具を破壊できなかったんだ。


(次だ!)


 バックラーが一瞬、彼の視界を奪っている隙に、俺はノックバック走法で横っ飛びに距離を開いていた。


 俺を見つけ、追ってくる。


 その間に、壊されるのは惜しいんだが、オリハルコン製のヒーターシールドを装備した。

 インベントリの下層にあったために、探すのに手間取り、間に合ったのはぎりぎりだった。

 ガンッと、衝撃が来た。


(一撃、受けられた!)


 すぐに消し、バックラーと入れ替える。

 調子に乗って壊されたらたまったもんじゃないからな。


 何かを感じ取ったのか、彼が下がった。

 迷いが見える。

 俺が何かを試しているのを察知したんだろう……勘の良い奴だ。


(一撃でどんな武具でも破壊できるとしたら、それこそ、ひんしゅくものだもんな)


 3パーティ、十八人以上でイベントにのぞんで、それでもドロップするかどうかって武具もあるんだ。

 それが簡単に破壊されたら、ユーザーはそんなゲーム、見限るだろうさ。


(なら、低レベル装備品に限るのか?)


 レアアイテムの中には、低防御力のものがいくつもある。

 ただし、補正効果や、符呪内容がすさまじいんだが。

 もし防御力や攻撃力が品の上下を決めているなら、レアアイテムも、破壊される可能性が高くなる。

 それを避けるためには……でも、低レベルでも装備できるものはたくさんある。

 単純に、装備可能レベルで決められているとも思えない。


(けれど、木製バックラーは、全部が一撃でぶっ壊れたわけだから)


 その数はワンダース以上だ。

 破壊できる条件、あるいは、破壊できるかどうかの確率が存在しているはずだった。

 少なくとも、レアアイテムは一撃では壊れない。

 壊されることはない。

 再取得不可能なアイテムもあるってことを考えたら、非破壊基準だってあるのかもしれない。

 少なくとも、ExcellentRareItemエクレアは外れている可能性もあるんだけど……。


(希望的観測だな)


 コンペ未提出の品だ。

 審査に通るように、デチューンされているとは限らない。

 チューニング前なら、壊される可能性はある。

 さすがにそれは惜しいんだけど……。


(まあ、これで、懐に踏み込むための算段は付いたな)


 レアアイテムを使い回して突貫すれば良い。

 後は、仕上げだ。

 俺は、身を伸ばし、彼に言った。


「悪かったよ」


 彼は、気味悪そうに、後ろ足を引いた。

 傷つくな、おい?


「なんです……急に改まって?」


「正直、なめてた……おぼっちゃん」


 すっと、彼の目が細まった。

 案外、あの口調、ロールプレイってわけじゃなくて、素だったのかもな。

 でも、もう、そんなことはどうだって良いんだよ。


「改めて、言っておく。……俺がディーナ(アバター)の、ご主人様(プレイヤー)だ」


 二人の間に風が吹く。


 彼は、ふっと笑った。


「そうだろうと、気付いてましたよ」


 すっごい嫌な顔をしてた。


「つまり、僕が惚れてたのは……」


「ま、そういうこった」


 なんか、ディーナが赤くなったのが見えた気もしたけどな。


 ……うわ、言葉面だけ考えたら、勘違いされまくりじゃねぇか。

 やばい、フラグはへし折ってこそなんぼのもんだし、ダメになる方向の文句も言っとくか。


 俺、この戦いが終わったら、結婚するんだ……。


 脳内彼女とな!


 ゴゥッと、俺を中心に風が渦を巻いて立ち上る。


 彼が、険しい顔をした。


「この気迫!?」


 ただ事じゃない! とか?

 こいつも良いノりしてるよな……。


 惜しい奴だ。こんな出会いじゃなかったら、良い仲間(ボケとツッコミ)になれたのに。


「いくぜ!」


 勢いのままに地を蹴った。

 もちろん、風魔法も使ってのノックバック走法だ。

 ゲームではこれしかできなかった。

 ただの直進だけだった。

 だけど、だからこそ、一番慣れた、得意技だ!


 砲弾となって、俺は突っ込む。


「食らえ!」


 バックラーを前に突き出し、手を離す。

 右手で生み出した風魔法を、裏面に叩きつけて、それを飛ばした。


「くっ!」


 彼が、盾を召喚した。

 装備品じゃない、魔法の盾だ。

 魔法障壁のエフェクトによって、向こう側がゆがんで見える。

 そこへ、バックラーが激突して、明後日の方向へはじき飛ばされた。

 バックラーを受けたのは魔法の盾だ。

 構える必要も、持つ必然性もない。

 だから、彼に、衝撃はなく、両手は自由(フリー)だ。

 彼は両手に剣を持ち、大上段に構えていた。


(大ぶりじゃなきゃ、いけないのか?)


 防御を考えない攻撃だったのは、それもあったんだろうか?

 あるいはそれが、壊せる武具の範囲(レベル)を決定する要素なのか?

 しかし、もう懐だ。

 考える暇はもう無かった。


 その場その場で、なにかを思いつけるほど器用じゃない。

 だから、持っているハメ技から選択するしかない。

 それを使おうとしたところで、彼が消えた。


「なっ!?」


 ここでか、と思った。


 彼は懐で爆発を起こし、横へ飛んでいた。


 彼の呪文は、普通の呪文だ。

 つまり、ダメージが存在している。

 俺の使っている魔法のように、高機動用にダメージをゼロに設定しているわけじゃない。

 たとえ、ダメージゼロの魔法を即興で組んだとしても、あの鎧のことがある。

 あれは魔法を無効化(レジスト)してる。

 魔法を食らって、ノックバックを受けることができない。

 魔法そのものを消し去ってしまうからだ。

 だから、爆発系の魔法を使って、衝撃波をもらうしかない。

 爆発によって発生した衝撃は、魔法とは別のものという分類をされて、ノックバック判定を発生させる。

 鎧の効果じゃ、無効化できないものだ。

 つまり、彼は、避けるために、自ら少なくないダメージを負うことを選んだんだ。


 だからこそ、驚嘆させられたんだ。


(レベル70の攻撃なんて、通じないってわかってるだろ!?)


 直撃を受けた方が楽なはずなのに。


 なのに、それ以上のなにかを警戒して、自爆ダメージを負ってでも、(フラグ)から逃げようと、距離を取ろうとしてくれている。


(感激するじゃねぇか!)


 感動、かもしれない。

 どれだけ過大に評価してくれてるんだか。


 ディーナの中の奴で、騙してた人間だとわかったんなら、普通には怒って、反吐を吐くもんだろうにさ!


(思わず、応えたくなるよなぁ!)


 投げ出さず、素直に戦いに熱中する方を選んでくれている。

 だから。


「うっ、ああああ!」


 足を、踏ん張る。

 魔法じゃなく、スキルでもなく、ステータスの筋力でもなく、自力を用いて、地面を蹴る。


 地を蹴るモーションによって発動させるジャンプじゃなくて、自分の力で、彼に跳ぶ。


 彼が驚きに目を見張った。

 ノックバックによる高機動追撃じゃなくて、普通に俺が方向を変えて追撃したからだ。

 ノックバックに迫る勢いで。

 つまり、それは。


(ノックバック用に魔法を使わなかった意味、わかるよな!)


 詠唱時間を最小にしていたとしても、発動には一拍の間がかかる。

 それすらも惜しんで作った時間は、『道具』をからめた攻撃のために作った間だ。

 インベントリ操作のための間だ!


 彼は、俺が手に持って突き出したものに驚きを放った。


「呪符!?」


 作ったプレイヤーキャラに、その威力は依存する。

 誰が作ったものかわからない以上、彼が警戒したのも、しかたのない話だろう。

 だけど、これもまたスキル上げのために俺が作ったものだから、威力はそう強くはない。

 彼に通じるものじゃない。

 だけどその枚数は。


ありったけ(65565枚)の大盤振る舞いだ! 受け取れぇ!」


 これらを風魔法によって飛散させる。

 手持ちは65565枚。

 俺はそれだけのアイテムを放り出した。

 出現時点では一枚に見えた。ゲームではアイテムとして固まって表示されてしまい、そう見えるからだったけど。


 ここは現実だから、一気に、爆発的に膨らんで、広がった。

 六万枚以上の符が、一斉に襲いかかるんだ、それは壁にも等しく、符の波は一気に彼を飲み込み押し潰した。


「これっ、は!」


 呪符の布団の下でもがき苦しみ、彼は這い出そうとして慌てた。

 理由はわかる。ここまでで痛いほど理解したはずだ。


 ノックバックの恐怖を。


 俺がこれだけ大量の符を、いくらスキル上げのためとはいえ作り、残していたのは、ねえさんの真似事をしてみようと思ったのがきっかけだった。


 物理演算エンジンの限界。

 それがどこにあるのかを知りたかったんだ。

 同時に起爆させれば、計算できなくなって、暴走して見せてくれるかもしれないってな。


 まあ……真似ようと思ったんだけど、ねえさんのせいで対策されてて、大したことにはならなかったんだけどな。


 だけど……何度も言う。ここはゲームの中じゃない。

 別の世界だ。


 65565枚もの爆裂符が生み出す衝撃ってのは、一体どんなもんなんだろうな!?


「!?」


 奴が赤に飲み込まれた。

 鎧の効果があるから、爆発そのものは利かないだろう。

 だけど衝撃には運ばれる。


 コマンドによって起動された六万枚以上の符は、完全に同時に発動し、四方八方からの衝撃が、彼の身を襲い翻弄した。

…正直いろいろノリ過ぎた。

でも反省はしていない!w

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