そのごー
どこかで読んだ小説に書いてあった。
魔法はイマジネーションによって、現実を騙す技法であると。
脳から出る波動が、現実という世界の量子に投影されて、世界がそれを本物だと思い込み、実際化してしまうのだという。
そのために、魔法使いは薬を使い、朗々と呪文を唱え、トランス状態へ陥っていく。
人数が多ければ多いほど成功するのも、集団催眠という形で、より大きな波動を生み出せるから……らしい。
とにかくだ、自分で現実、本物だと思えないようなことが、実際になることはないって話だ。
だから、自分を見失うくらい集中し、酔うんだろう。
で、だ。
魔法使いへの第一歩は、頭に白いキャンパスを生み出すことからはじまるのだそうな。
太陽を見上げて、まぶたを閉じる。
するとまぶたの裏には焼き付きが残っている。
この焼き付きを、まぶたの裏に広げていく。
これが中々難しい。
毎日寝る前に電灯を見て、電気を消して、真っ暗な中、寝落ちするまで頑張った。
できるようになったら、焼き付きの色を自分で選ぶ。
どんな色でも、まぶたの裏を染められるようになるまで、やっていく。
次の段階は、妄想だ。
その白いキャンパスに、現実が騙されてくれるぐらいの、リアルな映像を投射する。
第三段階では、まぶたを開いたまま、リアル映像を実際に見ている景色に投影する。
ちゃんとした導師、導き手がいないと、この辺りで現実に見ているものと、空想とか妄想とかと、区別の付かなくなる奴が出るらしい……んだけど、俺はまあ、この辺りで諦めた。
ただ、思ったんだ。
空想が現実と見まがうほどリアルだと、現実が騙されて空想を実際化してしまうというのなら……。
リアルすぎるゲームは、リアル化する可能性があるんじゃないかって。
それが、俺がこのドラゴンレジェンドを選んだ理由だった。
余りにもリアルな作りは、本当に第二の世界、異世界だと思わせてくれるものだった。
そして俺の願いは叶った、と言えるのかも知れない。
……ディーナの件を除いてな!