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PvP(1)

予定調和の話は書いててつまらないけど、それを崩すと話が横道にそれて長くなる。難しいです…。

 さて、どの辺りまでがゲーム的なんだろうか?

 実は獣王とやり合った時に思っていたほど、システム的な設定が絶対じゃないってわかってきてる。

 でもまあ、レベル70の俺じゃ、アルフレッドに通じないのは、獣王の時と同じだけども。


 草原の中で向かい合う俺たち二人に、青いエフェクトが舞い踊る。

 ねえさんの魔法だ。


「一応、復活呪文かけておくけど……」


 了解ッスと返しておく。

 まだ何か言いたげなのは、死んだら終わりになるかもしれないという懸念があるからだろう。

 ここに至るまでに見た、即死状態。

 ゲーム的には、瀕死>死亡のはずなのに、獣王にやられた連中は、一撃で引き裂かれてたし。

 ゲームの魔法で復活できるかどうかは、検証してみるしかないことだった。


 野郎を見ると……ディーナに熱のある視線を送っていた。


「僕は、勝ちます。あなたのために」


 あまりにもストレートな告白に、ディーナは赤くなってうろたえていた。

 そんな二人を冷めた目で視ている俺に気がついて、ディーナは。


「あっ、あの! ちがうの! ええっと!」


 まぁ、なぁ……。

 特に続きを聞きたくなかったので顔を背ける。

 ディーナがおろおろとしているのはわかる。

 そのせいだろうか? アルフレッドの顔つきが険のあるものになった。


「ゆるせないな」


「なにがだよ?」


「彼女に、あんな顔をさせる君のことが」


「お前がちょっかいを出してこなきゃ、そんなことにもなってないだろうが」


「君には甲斐性がないと言っているんだ」


「俺たちは幸せだった。お前は人の幸せを壊す魔王だ」


「それ以上の幸せを与えてあげられる。その自信がある」


「嘘だな」


「どうして?」


「目つきがいやらしいんだよ、お前は」


 もちろん、やーらしーって意味じゃない。

 裏がある、隠し事を持っている、つまりは陰険だって意味合いだ。


「なにも考えて無い分だけ、俺の方がマシだ」


 いいやと奴は言う。


「マシなだけで、君は彼女のことを、思ってはいないだろう?」


 レイドさんに言われたことが引っかかって、どもってしまった。


「どうして……そう思う?」


「僕が、君を、知らないからさ」


 意味がわからなかった。


「僕は、何度も彼女と旅をしてきた。彼女を助け、彼女に助けられてきた。君はそのことを知っているのか?」


 ……すまん、知ってるw

 奴の中では、ともに山や谷や樹海を旅して、時には寄り添い合って温めあい、眠りについたことなんかが思い出されているんだろうが……。


「当然だ。僕にさえ届かない君だ。彼女の隣に並んで立ったことなんてないだろう? だけど、彼女の視界には、眩しい者たちがたくさんいた。僕もその人たちと一緒に居たんだ。だから、彼女に似合う人たちが、僕じゃなくてもたくさん居るってことを知っているんだ。その影に隠れることさえできていないような君が、どうして彼女の隣にいるんだ」


「どうしてだと思う?」


「彼女のことを思っているのなら、彼女とペアになったことだってあるはずだ。パーティにだって」


「だから?」


「君は、彼女に好かれているだけで、彼女と並び立とうとしていないように見えるな。いい気になっている。それが気にくわない。そう言っているのさ」


 つまり、頑張れと。


「ケツを叩いてくれるって言うのか?」


「いいや」


 盾は使わないつもりらしく、消した。

 代わりに、大剣を抜き放った。

 両手で剣を保持する。


「身の程をわきまえろって、言ってるんだよ」


 次の瞬間。

 アルフレッドが、剣を振り上げ、駆け出した。





 戦闘を開始する。

 走りながらの攻撃。ダッシュしての大振り、スキルにはそういうものもある。

 効果は、攻撃力プラスだ。大ダメージ。

 当然、それなりにスタミナを消費する。普通は盾役が注目(ヘイト)を集めて、そこへと打ち込む大技だ。


 奴のブーツが地をえぐるように蹴り飛ばす。

 対して俺の足は、草を踏むようにステップする。

 わかりやすいほどに読みやすい剣の軌道。

 当たるわけがない一撃。だけど奴は、地に切っ先が突く前に、膂力でもって剣の軌跡を逆戻した。


 Vの字に大剣が動く。


 身を捻ってかわす。くるりと一回転することになった。

 一周する間に、インベントリーを確認した。盾をアイテムボックスから取り出し付ける。

 円形の盾。ラウンドシールド。

 耐魔法効果付き。

 奴は跳ね上がる大剣の勢いを殺す手間を捨て、左手だけを柄に残して右手で魔法を打ち出してきた。

 ラウンドシールドに炎系の魔法が直撃して火が散った。

 ノックバックを利用して距離を取る。

 炎は噴き出すような火炎ではなく、どろどろとしていて、二人の間の雑草を、一瞬で炭化させていた。

 ぶすぶすと煙が上る。

 アルフレッドが、煙の向こうで不敵に笑って、剣を構えた。


「良くかわすね」


 ドラゴンレジェンドには、物理演算エンジンが搭載されている。

 今では当たり前になっているけど。

 だけど、これは当時では画期的なことだった。

 なぜなら、VRというシステムが一般公開された当初、ラインナップとして登場させられたゲームたちは、結局のところ2D、3Dでやっていたものと、大した違いがなかったからだ。


 ヴァーチャルリアリティー、仮想現実、よりリアルに体感。

 うたい文句はそんなところだ。


 だけど、平面(2D)からポリゴン(3D)へと、見た目が変化しても、内容的なものが大して変わりはしなかったように、MMORPGも、VRMMORPGとなっても、それは結局、フィールド型RPGの延長でしかないものだった。


 決してはみ出して移動できない、段差を乗り越えられないマップ。


 壊したり動かしたりできないオブジェクト。


 戦闘はコマンド方式。


 特に最後のは致命的ながら、今に至っても解決策が見つかっていない状態だ。


 敵が現れた>コマンド。


 マクロやコマンドワード、あるいは動きの頭をなぞれば発動するモーション起動。


 やり方は工夫されても、結局は選択実行形式だ。なぜそうなるのか? 答えは簡単で、プレイヤー自身の反射神経や身体能力がゲームに反映されてしまうのなら、現実世界において能力を持っている者が、そのままゲームの強者となってしまい、それ以外の者たちが、ヒーローになれる機会がなくなるからだ。

 必然的に、レベルやスキルは副次的なものとなってしまい、大多数の人間は、やる前から、決してトッププレイヤーにはなれないのだという話になる。


 成長することによって強くなる。その設定を貫くためには、走る、跳ぶといったことに関しても、走るというモーションを起動する、跳ぶというモーションを起動する、という、コマンド選択方式を維持し、レベルやスキルの上達に沿って、その発動結果の上限値を上昇させていく、という形を取るしか無い。


 結局、VRMMOは、五感の内の幾つかに、現実と錯覚するような情報を与えてくれるだけのものでしかなく。

 ゲームとして見た場合には、挙動のきっかけを見切れば、後の先と呼ばれる行為を取ることは容易かった。

 これはモンスターに対しても、プレイヤーに対しても同じことだ。

 今で言うなら、

 奴がスキルを発動し、実行し終えるまでの間に、それよりも挙動の早いモーションを割り込ませればそれですむ。


 そして、ここは、現実だ。


 モーションを実行するより、実際に動いた方が早かったりする。


 俺は眉間にしわを寄せた。


「おせぇ」


 かちんと来たようで、奴の額に血管が浮いた。


「この僕が、遅い?」


「すろーりぃ! なにお前? この世界に来てからなにやってたの? こっちはレベル70だぜ? AGIは100あっけど、レベル70台なら早い方ってだけで、普通ならお前の攻撃なんて、避けられるはずも、受けられるはずもないんだよ」


 実際、もしもやつがゲームと同様にしていなかったら、俺にはインベントリを開いて、アイテムを選択しているような間なんてなかったはずだ。


 おそらくは、マクロの連続実行で、ダッシュ>パワースラッシュ>サベッジブレード>フレイムあたりでコンボ組んだんだろうけど、現実として見ると、走って大振り、逃げた相手を追いかけるように剣を振って、かわされたんで魔法で追撃。そんなんだ。

 あまりにも動きがお粗末だ。モーション通りの動き出し、頭出しを捉えるだけで、なにが次に来るかわかってしまう。

 別段慌てる必要もなく、トントンと動いて盾を構えたら終わってしまった。

 スキルすら使ってない。


「大口叩いて、この程度かよ」


 正直、がっかりだった。


「言っていたら良い」


 アルフレッドは大剣を消して、片手剣(ロングソード)ヒーターシールドを構えた。


「だとしても、君は僕を倒す術がなく、僕にはある。あとは君が動けないように、スタミナを削りきれば終了だ」


 ほうっと笑ってやる。

 にへらっと。


「できるもんなら、やってみな」


 もう一度言う、このゲームには、物理演算エンジンが搭載されている。

 通信型のゲームで、これははっきり言って暴挙だった。だってそうだろう?

 プレイヤーやモンスターの位置情報だけでなく、破壊されたり設置されたオブジェクトが、どんな形でどこにあるのか、そんなことまでサーバーはやり取りを行わなくちゃならなくなるんだ。

 重い、なんてもんじゃなく、そのために発生したエラーやバグで、ハヴォック様が召喚されまくりになっていた。


 通信ミスによって、あっちには足場があって、こっちにはなく、だけどキャラクターの位置情報的には上にプラスだから、人によっては台の上に、人によってはなにもないところに浮かんで見えるとか、な。

 何かがあるのに通れたり、何もないのに通れなかったりとか。

 見えないものにぶつかったりとか。


 だけど、それらを意図的に再現し、利用できれば、面白いことが可能になる。


「ハヴォック神の信者を、舐めんなよ?」

時間について。お手紙もらいました。

セシウム振動周期とかもちろん知ってますが、これも裏設定上アウトなんです。

フラグは当たり前のように科学前提で話してますが、文明圏によっては宗教前提のところもあります。偉大なる○○様の鼓動一回が一秒だとか。

魔術結社なんて呪文を唱えるのに最適な韻律の拍が一秒だとしています。

科学は科学で、いろんなものを持ち出してきます。

正直、ここらを持ち出すと手に余る、収拾がつかなくなると思い、削ったんですが、書いて置いたら良かったかなぁと思いました。

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