飛ばし読みでおkな回
リアル事情が年末進行なため毎日更新できなくなってきました。
この程度のが更新できないとか、すみません(⊃Д`)、
──クリスティア・ディナ・エンタレス・ボノディス・グレンダ・バナ・オレア・ディーン・サリア・サリナ・エンダー・ア・ディアス。
「……です」
「クリスティア・ディナ・エンタレス・ボノディス・グレンダ・バナ・オレア・ディーン・サリア・サリナ・エンダー・ア・ディアス様ですか」
すごいって驚かれた。
「一度で間違わずに返してもらえたのは初めてです!」
……すみません、ログからコピりましたw
王城、王女様の私室です。
王女様、実はアクターで中身有りの人でした。
……中の人、女の子でよかったッスね。
「なんだよ?」
「いえいえ」
生暖かい目で見てたら睨まれましたw
「長い名前ッスねぇ……」
「キャラクターを乗り換える度に足してるんです」
……良く覚えてんな。てか。
「王家なんだから前の人の名前とか足してくんじゃないんスか? 普通は」
「はい、ですから、わたし、ずっと第三王女やってます」
なんで!?
代々第三王女ってどんな職なの!?
「びっくりしました! キャラクターとか中身とか言い出すし、でもレイドさんのそれ、わたしの知らない外装だし、シルフィードさんみたいな精霊仕様なんて初めて見たし! もしかしてとは思ってたんですけど、やっぱり外の人だったなんて!」
なんだかはっちゃけて、口調が普通になってます。
中身と外見が合ってねー……なんかちょっと怖くなってきた。
ところでと姫様。
「その子ください」
「いやです」
その子ってのは、頭に装着してることらんです。
う~~~っとか唸られても、ダメなもんはダメです。
だって押しつけたらどうなるか、わかってんな? って感じでことらんの爪が頭に引っかかってんだもん!
これ、返答次第でざっくりとか、そういう流れですよね!? わかります!
……つか、ことらんの装着具合がハンパなくなって来てるんだけど、こいつ、縮んできてないか?
確か初めて会った時は、俺の腰くらいの背丈はあったと思うんだけど……。
「それより話の続きよ」
求めたのはねえさんです。
「あなたがこの星を作った人たちの仲間だっていうのは本当なの? 子孫じゃなくて?」
「凍結でもしてるんだろ?」
なぁ? っと尋ねたのはレイドさんです。
クリスティア様は、そちらもですねと、レイドさんへと微笑みました。
……仲間意識でも芽生えたかな? 好感度上がってる。
ちょっと悔しい。
「俺は半冬眠だよ。量子通信でつなげて遠隔操作してる」
「そうですか……。漂流者だってこと、ちょっと残念ですけど」
助かる見込みには繋がらなかったってことだもんなぁ……。
もっとも、俺たちはまったく違うし……ってことで、レイドさんにタッチだ。
「……君たちは、遭難者か?」
「はい。船は商船団です。超空間航法中に、なんらかの異常事態に陥って、漂流することになりました」
「理由はわからないのか?」
さあ? とか。
知らないのかよ。
「管理民ならともかく、わたしは労働民ですから。航行中の情報については管制下にありましたし、緊急事態を告げる警報を受けた後はもう」
「そうか」
「ここは、通常空間復帰後に見つかった、一番近い恒星系だということでした。居住可能な惑星はなく、改造に適したサイズのものもなかったため、鉱物資源衛星として良質なものを重力操作でぶつけ、一つにし、崩壊しないようにバリアで固め、艦の修理を始めたんです」
「最初から、こういう星にしようとしたわけじゃなかったのか」
「流れの中から、ですね。人の身では作業時間がどれくらいかかるかわからないし、危険だと。でも、生身の体を凍結して、アバターで作業をするにしても、アバターを維持する酸素と食料源が必要になって、ならどうするかという話になったんです。プラント船を失ってしまっていましたから」
「そこで出てきたのが、売り物の一つであったアドベンチャーワールドを構築するための設備だった……ってわけだな?」
なるほどなとレイドさんが顎に手をあてて掻いていた。
「航行は不可能。だけど疑似惑星は作れた。避難施設を作ったつもりだったわけだ」
「無理をして隣の太陽系を目指したところで、居住可能な惑星があるかどうかはわかりませんし……」
「まあ、迷子の基本は、動かないことだもんな」
助けが来てくれるかどうかは別だけどなと……。
迷子ってレベルじゃないだろう……。
「それがどうして、こうなったんスか?」
「こう、とは?」
「こんなアドベンチャーワールドに、ってことだろ?」
ああ……と理解された。
「使用した商品の仕様です。プログラムの改編には限度があったみたいで」
「キャラクタ以下は、そのままに近い仕様なわけだ」
「素の行動目的や、指針については、そのままです。そこに、ナノマシンの散布や拡散と言った、副次的なものを付与した程度です」
つと、俺はクエスト失敗の罰ゲームのことを思い出した。
なんで根絶させちゃダメなのかって疑問に思ってたあいつのことだよ!
硬くて光ってて臭くて奇妙な声をあげるあいつらのこったよ!
あれも、病原菌の他に、そういうのを運んでるのか?
確かに人が行かないような穴蔵の奥の奥とかにもいるしなぁ……。
「中身が入ってるのは、どれくらいいるんだ?」
レイドさんの質問に、姫様は困った顔を見せた。
「たくさんですけど……」
「わからないんスか?」
「接触は、推奨されていないんです」
「やんわりと、するなって、命令されているってことか」
「何でッスか?」
ちらりと、彼女はレイドさんを見た。
どうも自分では説明したくないらしい。
レイドさんが、言いにくそうに、後頭部を掻きながら解説してくれた。
「もう帰れない……ってなると、ヤケになる連中もいるからな」
なんだそれ?
異世界転生した主役が帰れないとわかって無茶するみたいなもんかなぁ?
んなこと思ったけど、ちょっと違ってた。
「前向きになる奴が居れば、後ろ向きなままの奴も居るってこったろ? 建設的なやつと、悲観的になるやつは、時間と共に悲観的になるやつの方が増えてくんだよ。そりゃ、明るくなれる要素なんて、見つからないからな」
まあ、どんなに頑張ったところで、助からない、戻れない、帰れないってなったら、すさむわな。
「結構な争いごともあったんじゃないか?」
「はい。ストレスが限界を超えた人たちは、キャラクターを巻き込んで反乱や戦争を起こしました。それもまたこの世界には、歴史として記録されていることです」
そうして国ができましたとか。
むぅ。
歴史と来たか。
確かに、ドラゴンレジェンドの歴史には、過去に大戦があった……とか、どっかのぱくり臭い文言があるけどさ。
そうなると、この人、いくつなんだ?
名前の長さから言って、百年二百年ってわけじゃないみたいだけど。
「王女様も、レイドさんみたいに、体を凍結とか、そういうのしてるんスよね?」
「フラグさんは、違うんですか?」
「こいつらは特殊なんだよ」
事情は、後でなとごまかしてくれた。
「わたしたちは……、助けが来るまではと、記憶体をアバターに写し、完全冬眠をすることを選びました」
獣王のことが引っかかる。
「みんなッスか?」
「いえ、一部の技術者は別です」
「なんでッスか?」
「……母船が、いつまで持つかわからないので」
……眠ってる間に、そのまま、とかか?
「人格移植にしても、遠隔操作にしても、アバターは、母船の機能が壊れたら、終わりなんだよ。だから、誰かは、いつでも生身で行動できるように、待機してなくちゃならないわけだ」
「船だけではなくて、この世界についても、どこかに矛盾や不具合が発生していないか。調べる役割を持った人は必要なんですけど」
そのための冒険者ではありますが、と。
「アバターへと移植されている人格には、優先順位を変更してしまう危険性がありますから」
ん……?
なんか……?
「でもな」
レイドさんからの補足です。
「頭だけ起きてるってのも、まずいんだよ。起きてるってことは、活動してるってことだ。つまり、細胞が分裂と死滅を繰り返してるってことになる」
起きっぱなしよりは長持ちするけど、老化は防げないってことか。
でも、この人たちの老化って、基準がなぁ……。
肉体年齢で計ってるんだろうか? 星の公転とか自転とかで、時間や暦を決めてるわけじゃないみたいだし。
「レイドさんたちでも、寿命ってあるんスか?」
「俺たちをなんだと思ってんだ? 生き物だぞ」
「あ、あの」
姫様です。
「あなた……フラグさんは、ドリフターでも、サバイバーでもないんですか?」
待った待ったとレイドさん。
「それはまた後で説明するって言ってるだろ? 話がややこしくなるんだよ」
まったくだ。
まあ、この星の成り立ちがそっちにあって、そこに俺たちが被さったんなら、そっちの話からの方が、色々と省略できるだろう。
「ともかくだ。生物である以上、どれだけ引き延ばしたって、細胞の分裂回数には限界があるんだよ」
「先ほど、レイドさんがおっしゃいましたけど、技術者の方は数が限られていますから、期限を決めて、持ち回りで活動されているようですけど」
「でも、アバターに写してる人格? そっちに管理を任せちゃうとか、させちゃいけないんスよね?」
あ、そか、そこで引っかかったんだ。
「優先順位ってなんスか?」
「……アバターに乗り移っている人格は、アバターの性能に引きずられて、性格が変わっていってしまうんです」
「それじゃいけないんスか?」
まずいよとレイドさん。
「アバターが積んだ経験や体験によって、優先順位どころか人格まで変わっちまって、なにが大事なのか、どれが本当のことなのか、それもわからなくなるってこともある。一応、アバターとして経験した事項は、本人へとフィードバックされるわけだが、その内容の酷さに、拒絶反応が起きることだってあるほどだ」
「人生一個分、まるごと経験し直してくるわけだものね」
ねえさんが挙手。
「だったら、アバターの記憶を戻さないで、新しいアバターへは初期化ってことで、元人格を移植するわけにはいかないの?」
「それだと、対応の問題が出て来るんです」
「対応?」
「えっとですね。どんなに世界に対する修正プログラムが走っていても、時間の経過と共に、多様性というものは発生してしまうんです」
「たとえば、言語だな。同じ言葉なのに意味が違ってしまっている。とかな」
「社会もです。たとえば今ですが。キャラクターの数が億倍にまで膨れあがってしまっています」
増えすぎだろ!?
「キャラクターは魔物も含みますから」
レイドさんも呆れたようだ。
「……それ、もう、コントロール利いてねぇだろ?」
「はい。とっくに、ホストコンピューターの限界を超えてしまっています。そう連絡が回りました。下位モンスターについては、完全自律行動に入らせるので、注意するようにと」
「それと社会が関係あんの?」
「システム側で管理しきれない以上、ユーザー側で都合を合わせるしかないそうです。ですから、定期的に『今現在の社会常識』をバックアップしなければなりません」
「それがフィードバックをしなければならない理由、ね」
「わたしたち、記憶体の移植派も、時々は脳波レベルで解凍されされています。フィードバックを受けるためです。そして新しいアバターに再び心を移して、眠りにつきます」
「いつまで?」
「……助けが来るまで」
「あるいは、この世界を構築してる船が壊れるまでか」
ゾッとした。
この世界……星が作られたもので、それを成り立たせるためにバリアとか張られてて、それを張ってるのが宇宙船で、それがどれだけ持つかわからないって……。
怖すぎだろ!?
「で、だ……」
今度は、レイドさんが俺たちに関しての話を始めた。
何度もやってるので割愛します。
王女様は……。
「そんなことが……?」
信じられない、って感じを見せてくれた。
「でも、それなら納得できます。この頃、キャラクターの動きがおかしくて、あちこちで混乱が起きていたんです。こちらからは理解不能な行動や言動を繰り返していて……」
「あんたちはどう思ってたんだ?」
「別世界のシミュレーションデータの中で生活をしていた人たちが、アバターに強制転移させられたことで起こった記憶混乱ではないのかって」
うーわーあー。
なんか今、知りたくなかった話を知った気がする。
俺、地球人じゃ無いかもしれないの?
地球って星のデータの中で生活してた宇宙人なの?
レイドさんが俺を見る目も、観察するものになってる。
「……そいつらをまとめて保護することはできないか?」
獣王による殺戮も、狂った意識体を消去しただけだとしたら、それは問題のない行為だったのかもしれない。
そっちが消去されても、本体は眠りについているからだ。そっちから新しく意識体を作り出せばいいわけだしな。
でも、もし、そうでないのなら?
姫様は、無理だと首を振った。
「わたし個人の行動……権限は、第三王女というキャラクターに準拠しています。ですから、クリスティアとして、彼らの話を聞いてあげて欲しいと陛下に口を利くことはできますが、それが精一杯になるんです」
ん?
「それじゃダメなんスか?」
「陛下は、キャラクターですから」
なんで一番権力のある奴に中身入ってないんだよ!?
王族や貴族がまとめて中身入ってんなら、話早かったのに!
……と、俺は言葉を失った。
「……先々代は違ったのですが、直系の子をなさなかったために、傍系の……キャラクターの子孫が先代に選ばれてしまったんです」
「キャラクターとアクターとアバターは、見た目は同じでも、ユーザーを受け入れたり、能力について制限や性能が違ったり、持たされている機能に差があるはずだ。よく認められたもんだな」
自律行動中の制限アバターやアクターは、それでもただのキャラクターに比べたら、圧倒的に強くて、賢いと言うことだった。
「もちろん、認めるかどうかで悶着がありましたよ? けれどもそれは、キャラクター同士のイベントの一つとして処理されました。その後なんですが、誰かが再び王という地位に立つためには、まずアバターか、アクターを操って、王の位に就くためのイベントをこなさなければならなかったんです。けど、王族の役は、とにかく行動に制限が付くため、そんな面倒なこと、やりたがる人が居なくて……ですね」
レイドさんは、くっくっと笑って、ピンと指を突きつけた。
「じゃあ、王女様は、物好きってわけだ?」
「そうですね」
ふふふって。
「この役はこの役で、慣れると楽しいものなんですよ? 英雄、勇者のような方から、愛を囁かれたりと、夢も満たせますし」
「乙女の……ってか? まあ、中身が生だってんなら、どうだ? 相手してやっても良いぜ?」
レイドさん、かっけー。
なんて男らしい人なんだ。
「その体は、君のデータを精査したものか?」
「いいえ。実測データでは、この星の環境には耐えられませんよ」
「そうだろうな」
宇宙人って、もっと筋肉あるのかな? でも無重力だと減るんだっけ?
どうなってんだろ?
っていうか。
「子供は普通に生まれるんスよね? キャラクターからアバターが生まれるんですか?」
「キャラクター同士からは生まれませんよ?」
「あれ? じゃあ姫様は?」
「わたしは愛妾として王宮入りしているアバターと、キャラクターである王との間に生まれたユニットを使っているんです」
「優性遺伝子が先に来るからな。キャラクターとの間にできた子供は、大抵アバターとなれる性能を持ってる。そういうもんだ」
例外もあるみたいだ。
「あとは、プロテクトを解除する儀式が必要になるはずだが」
「この世界には、祝福を与えるという、イベントがありますから」
あれか。
精霊が「祝福を」とかやるやつ。
「レイド様は、キャラクターがお嫌いなんですか?」
「嫌いって言うかな……。キャラクターは、こっちが満足するように、自己調整をかけるだろ? それがな」
「ああ……」
なんか納得されている。
どういうことなんだろ?
「親しい相手を連れて歩くのは、自分の趣味を丸裸にしてさらしているのと同じですもんね」
「ここの星だと、そういう規定から外れて、人間らしく相手に合わせることを知らない連中だって居るんだろうし、そういうやつが相手なら、考えないこともないけどな」
人形を相手に愛を囁くとか萎えるわと。そういうもんか。
んでもキャラクターは、人間と同じくらい感情があるから、口も使わないとその気にはさせられないわけで……。
なんで作り物を相手に、そんな手間をかけなきゃならんのかとか。
てか、待てよ?
それって、俺がディーナに手を出せないのと、同じ理由じゃないのか?
「まあ、姫さんとのお楽しみは取っておくとして。フラグ、お前からなにかあるか?」
「そッスねぇ」
そだ、ディーナのパンツで思い出した話があったんだ。 ……と、悩んだ俺は思い出した。
二人に、この世界が本当にゲームの中ではなく、現実である証を手に入れたいんだと訴えた。
けど、レイドさんと王女様、二人に渋い顔をさせただけだった。
「証ですか……」
「難しいぞ、それは」
そうなんだよなぁ……。
「んで、ちょっとした思いつきはあったんスけどね」
「どういうんだ?」
俺は、ドラゴンレジェンドってゲームの仕様について解説してみた。
まあドラゴンレジェンドに限らず、地球のゲームについてだけどさ。
「映像は、データの都合上、テクスチャって呼ばれる平面が組み合わされて、外の皮だけで立体が作り上げられてるんすよ。だからその内側は空洞になってるんス。張りぼてなんス」
おいおいとレイドさん。
「まさか、人の中身を確かめて回ろうとか思ったのか? 開きにして」
「それはないッスよ……俺、人が死ぬとこ、見ちゃったし」
獣王の時のことを思い出す。
グロかった……。
あれは軽くトラウマだ。目の前に転が……うえっ、やめよう。
「それだけじゃ、信じ切れないってんだな?」
「怖くて気持ち悪くて、触ったりしたわけじゃないッスからね。触りたくもないし……だから、ゲームの中では行けなかった場所に行ってみようかと思ったんスけど」
「行けなかった場所?」
そこにどんな意味があるのか説明する。
「ゲームには、移動がブロックされる領域ってのがあったんスよ。それは建物の中だけじゃなくて、例えば、山脈の真ん中だとか、海だとか」
「園内と、園外とか、そういうことですか?」
「そうッス。領域外とされてた空間、場所。それがこっちじゃどうなってるのかって思ったんスよ」
ゲームじゃないのなら、そこにも世界があるだろう。
「でもそれ、証明にはならないだろう?」
ま、ね。
「ならないッスね」
「おい?」
「でも、レイドさんの話で、ちょっと思ったんスよ。俺たちにとっては、この世界って、ゲームに似た世界なんだけど、逆に、こっちに、ゲームの世界が似ちゃってただけなのかもしれないって」
「ん?」
「ゲームで行けなくなっていた場所って、実はこっちで立ち入り禁止に指定されていたから、行けないようにされていたんじゃないかって思ったんス」
「相似性か……同一性か? いや、待てよ? そもそも似たものになった理由ってのがあるな。作り手がこの世界の情報を得て、真似てしまった、か? 無意識の内に、自分の中からわいたアイディアだとでも思って、そっくりにしていった? だけどその時、自分の知らない情報は組み込めないわけだから……」
「俺が思ってるのは、ゲームで行けなかった場所は、こっちでは行かれるとまずい場所だったんじゃないかってことなんスよ。こっちで立ち入り禁止場所に指定されているから、ゲームではフィールド外とされちゃったんじゃないかって」
「逆に言えば、そこには秘密か、隠し事があるって考えはわかったが。だが単に惑星の開発中に、危険だと判断されて、立ち入り禁止の指定を受けただけかもしれないんだぞ?」
レイドさんは、姫様を見た。
「どう思う?」
「わかりません」
「俺たちが想像もしてないようなものが、そこにはあるかもしれない……って、思ったんスけど……」
残念ですけどと、姫様。
「わたしは労働民です。管理階級の人たちが、どこに船を下ろして、どこにどのような施設を置いて、どんな風にこの世界を維持することにしたのかは……」
「概要は知っていても、詳しくはわからないか」
「申し訳ありません」
「仕方ないさ。居住可能惑星の改造をやったのかと思ってたけど。まさか惑星創造をやってたなんてな……かなりの無茶だ。専門家でもなければ、理解できなくて当然だ」
だけどとレイドさん。
「単に、ナノマシンの密度が低くて、人が立ち入れないだけなのかもしれないぜ? 大気散布型ってことは、気流に影響されるんだろうしな。それを見つけて、どうしようって思ったんだ?」
なにかをしようと思ったわけじゃないんだよなぁ……。
ただ知りたかっただけだし。
「とりあえず、なんかないかなーって思っただけなんスよね。でも、それも姫様が教えてくれるんなら、行く意味なくなっちゃったし。それに」
「さっきの、お前らも、実は同じサバイバーかもしれないって話か?」
そうなんだよなぁ……。
もしそうなら……、そうなら?
なにがどうなるんだろう?
わかんなくなってきた。
「でもな、それなら、俺が言ったみたいに、老化の問題が出て来るんだよ」
「何百年もいけるんなら、その内の百年分くらい、夢を見る寝方を選んでも良いんじゃないんスか?」
「確かに、そういう方向を選んだ人たちも居ますけど」
「……自殺の方法は、個人の自由だってか?」
助かる道に希望を求めるか?
どうせ助からないのならと、別の生き方を選ぶか。
あるいは夢の中で幸せなままに、か……。
唸っていたら、俺の話は、シルフィードさんにインターセプトされてしまった。
「行くべきだと思います」
シルフィードさんは姿を見せて、そう言った。
「ほへ?」
「どういうことだ?」
「これを」
みんなの真ん中に、球体映像を浮かべた。
それはこの世界を軌道上から見て作成された惑星儀だ。
緯度、経度を示すラインが走り、幾つかの箇所が赤くコーティングされていく。
「赤で覆った箇所は、確認ができていない箇所です。衛星から撮影することができませんでした」
「シルフィードの探査衛星で精査できないとなると、確実に妨害処置が置かれてる。知られたくない何かがあるんだろうな。……それが?」
「この星を成り立たせているのは彼らの母船です。その母船の耐用年数と、バリアを発生させているエンジンの状況は確認すべきです」
予想外のことに、レイドさんまでほうけた。
「そんなに危険なのか?」
「わかりません、ですが、彼女、クリスティアさんのお話から、この規模のフィールドを発生させ続けているとなると、状態が気になります」
「今日明日……いつ壊れるかわからないってか」
「あるいは、それらもクリエイターによって、終末の到来と言ったイベントとして組み込まれているのかもしれませんが」
確かに気になる話だなと、レイドさんは言う。
「お姫様に回ってきてる管理民からの通達を、そのまま受け入れるのは危険だってことか」
「最悪、わたしたちには船がありますが」
「絶望的だったとしても、全員は救えないぜ?」
「試算してみましたが、『わたし』のエンジンなら、代用可能です」
「宇宙を諦めろってか?」
「予備エンジンがありますよ」
まあ……と、レイドさんは確かめる道を選んだ。
「どうする? 俺たちは行ってみる気だが」
「でも!」
姫様が止めてくれた。
「人の立ち入ることのない場所、行ってはいけないとされている場所は確かにあります。でもそういった場所は、必ずわたしたちプレイヤーでは太刀打ちできないモンスターやキャラクターの生息域にもなっています」
「守護者とか、人払いってことか?」
「ナノマシンの散布のためです。ナノマシンによるエネルギー供給無しでも活動できるタイプのキャラクターが、環境構築のための活動を行っているんです」
俺は、レイドさんの船でのことを思い出した。
こっちは動けなくなるのかもしれないのか。
んで、モンスターはもともとそう言う、ナノマシンがなくても普通に活動できるタイプだと。
……ん?
それってあれか?
レベル制限のかかってる限定フィールド戦ってことになるのか?
だったら……。
俺の思考を断ち切って、どうするよ、と聞かれた。
「来るか?」
「行くッスよ?」
「その体じゃ辛いぜ?」
「んでも、気付いたんスよ」
限定フィールド戦だ。
「水中で呼吸ができるようになる魔法とか、色々あるんス。あれって、ナノマシンの供給が受けられない場所で活動できるようにするためのものだって考えたら、そういう場所でも動けるようにするためのなにかって、あると思うんスよね」
戦いにならないんじゃ、話にならない。
だけど、そういった場所で戦うための方策は、なにかしらある。
なら?
「なるほどな」
「そっちこそ、良いんスか?」
はっきり言って、俺たちはお荷物だろう。
だけど、レイドさんは苦笑するだけだった。
「かまわないさ」
肩をすくめるレイドさんの背後では、シルフィードさんが真似をするように、同じように肩をすくめて苦笑していた。でもそれは、レイドさんが俺に向けたようなものではなくて、自分のマスターへ向けてのものだった。
「宇宙船乗りは、冒険者でもあるんですよ?」
止められないし、人も止めない。そんな人らしい。レイドさんは。
「未知に乗り出すのは楽しいもんだ。あとな」
「なんスか?」
「隠し事を暴くってのも、楽しいもんだぜ?」
「はい?」
「姫様の話だけじゃ、説明の付かないことがまだあるってことさ」
それを隠してるやつが居て、そこにはなにかの目的があるはずだ、と。
そう言うレイドさんを、俺たちはどん引きの姿で見た。
なんていうか、この人って。
酷く悪い顔をする人だって思った。
……いやちゃんと地球人ですよ?
穴だらけの設定にさらに穴を空けてみた。
んでもってハブられたディーナさんの明日は次回だ!w