「」を『』と変換するのが地味にめんどくさい回。
このお話はだいたいお風呂に入りながらiPhoneとApple Wireless Keyboardで書いてますw
……まあそんなこともありました。
「てかさぁ、レイドさんも言ってたけどさぁ、実際、俺たちって精神だけ飛んでんだか、記憶だけのコピーなんだか、魂ごといっちゃってんだか、ってか、そもそもここホントに別の星なのかとか、まだゲームの中なんじゃないの? とか、なにひとつ確実なことが言えないわけでさぁ」
──王宮庭園。
別に誰に話してるわけでもありません。
お花に向かって愚痴ってます。
「なにやってんの?」
どん引きなのはディーナです。
一応、俺たちは、お姫様救出の立役者……の連れと言うことで、城に泊めてもらってます。
……ねえさんみたいな良い部屋じゃないけど。
ここは中庭の庭園っす。お花が綺麗ッスね~。
とか。
三角座りで膝抱えてお花に話しかけてました。
よいしょって、ディーナさん?
「ん?」
同じようにディーナもしゃがみ込みました。
もっとも、俺みたいにお尻を芝に落とさずに、ミニスカの裾を膝裏に織り込むようなしゃがみかたですけど。
「フラグってさぁ」
「はい?」
「アルタイユさんと、どういう関係なの?」
……はい?
予想外の質問が……。
「なんか、仲良いよね……」
拗ねて唇を尖らせていらっしゃる。
あ~~~、このアヒル口だって、グラビアとかでこういうのが可愛いらしいらしい……、とかで真似したらウケてさ……、それでディーナの癖ってことにしたんだよなぁ。
らしいらしいって重ねてすみません。だってリアル事情なんて知らないんだもん!
こうやって見るとあざとすぎると思うんだけどなぁ……、みんな、なんでこれが良いとか思ってたんだろう?
男って……いや俺もだけど、安直だよなぁ。
「アルタイユさんとフラグが、あんなに仲が良いなんて、知らなかったな」
ただ、今のディーナは、そういうんで唇を尖らせてるんじゃなくて……。
本気で拗ねてるみたいだった。
あ、いや、そうじゃなくて。
なに言ってんだ、こいつは……と思って気がついた。
そりゃそうか、俺とディーナは、同時に同じ場所に現れることはできなかった。
っていうことは、どっちかがねえさんと会っているときには、もう一人は待機してたってことになる。
いちおう、ディーナとねえさんは知り合いだ。っていうか、中身俺だったし、PTもずっと組んでたし。
「あたしの知らないところで、アルタイユさんと会ってたの?」
え? なに? 俺、妬かれてんの?
俺の真似をして、膝を抱えて座り込み、右の手だけのばして、指先でちょんちょんと、花を揺らして……。
ちょっとでもバランスを崩すと、コロンと行きそうな不安定さ。
ミニスカなのに無防備に膝を立てて、前からだと見えるよな、とか。
そのくせ、人の目からは見えないように気をつけているだとか、けど、三人称視点でなら写真が撮り放題の隙の多さだとか。
座るときには、距離とか気にしないで、すぐ隣の近い位置にしゃがみ込んで来るだとか。
それでいて、「ん?」って感じで、なに? って、オタネタが出てきても、馬鹿にしないで、でも、どういうこと? って楽しげにかまって、わかろうとしてくれるだとか。
「俺、死んで良いっスか?」
「いきなり!?」
「いいから死なせてくれ……たのむ」
だって! これに勘違いした連中がいっぱいいて!
っていうか勘違いさせるようなことをして!
俺、こんな風にドキドキさせて喜んで、ドキドキさせることができて喜んでたなんて!
「へんたいじゃー!」
「わかってるからー!」
「わからないでー!」
いや、ほんと! わかられたくない!
「もう聞かないから! アルタイユさんのこと聞かないから!」
「いや別にそれはどうでも良いんだけど」
「いいの!?」
「てか、ねえさんとはディーナからのアイテム受け渡しで何度も会ってるよ」
「そういうこと聞いてるんじゃないんだけど……」
「わかってる、わかってる」
ぽんぽんと、背後から腕を回して、頭を叩いてやった。
ん~~~っと、不満そうに桜色のぷっくりとした唇を尖らせて、上目遣いにこっちを見てくる。
……妄想がリアルになると、あんまり萌えないもんだなぁ。
むしろ自分の痛さを思い知ります。
『面白い人ですねぇ』
シルフィードさんだ。
ちらりと横目に見る。
ディーナには聞こえていないようだった。
『なんスか?』
『その子、フラグさんが育てたって言う、セカンドキャラに相当するキャラクターですよね?』
『そッスよ』
『それだけ素直で、自分を絶対に嫌わない、自分好みの子なら、もう襲っちゃえば良いじゃないですか』
なんてこと言うんだこの人は。
『わっかんないですかね? 男の機微が』
『機微ですか? すみません。下半身には詳しいのですが……』
『ちょ!?』
『大丈夫です。察することには敏感ですから』
『さすることにはびんかん!?』
『さっする。です。さするのはさすがに』
『ですよねぇ』
『アバターが必要になるので』
『やったことあるんだ!?』
壊された! 俺の中のキャラ像を壊された!
『いえまだありませんが』
思わずガッツポーズをしてしまった。
……ディーナ、そんな目で見ないで。
なんで距離を取るの? ねえ?
『わたしのマスターは、わりと欲望には忠実なので』
あの通り、と彼女が指し示した方向──姿が見えないので空気で読んだ──には、第三王女と、その後をついて回るレイドさんの姿があった。
──庭園、迷路園。
迷路園ってのは、草花の垣根で作られた迷路のことッス。
この王宮のものは垣根の背が低いんで、まる見えなんスよね。
第三王女様──クリスティア様は、少しばかり困ってるようにも見えた。
「レイド様は、お強いのですね」
「野卑なだけです。人よりも獣と切り結ぶことが多いため、優雅さの欠片もない」
「ご謙遜を」
「わたしが求めるのは、人を守れる力ですから。形にこだわるつもりはなかったのですが」
「今は?」
「はい。今は後悔しております。あなたのように美しい方の前でこの剣を振るうことになるのなら、格好が付く程度には、習い事もしておくべきだったと」
──庭園、外周。
匍匐前進で盗視中。
「なにやってんスかね?」
なに言ってんのって、ディーナが教えてくれた。
「ほら、あんたたち、例の流れ星の墜落現場を回って、こっちに来たんでしょ?」
「回ったっつーか……」
居合わせたというか。
ねえさんが真っ向勝負したって言うか。
……今考えると、なにやってんだ。
「それが原因の騒動に、そこに行ってきた人たちが助けにきてくれた……ってことで、なんか盛り上がっちゃったみたいよ?」
ん~~~?
でもやっぱ、姫様、困ってるように見えるんだけどなぁ。
『それだけじゃないんですけどね』
『シルフィードさん?』
『あの子、アクターかもしれません』
『姫様が?』
『でも、アクターであるとしても、中の演者が生きているとも思えません、それが……』
『けど、レイドさんみたいに、生身の方を凍結してたりとかは?』
『遭難者である可能性は捨てきれませんが、そうなれば、この星には彼らの母船が生きているということに』
『星にバリアとか張ってあったんスよね?』
『発生装置は軌道上にありました。母船を発生源として星を覆うには、星の中心に位置しなければなりませんから』
中心からの真円で発生するとしたら、そうなるのか。
『で、なんでアクターだって思ったんスか?』
『衛星でこの城を覗いてみたときに、衛星に向かって意味ありげな視線を送ってきたんです』
『まさか、衛星からの視線に気付いたとか、そんな厨二な!?』
『いえ、ただそれっぽい動きをしてみただけだと思います』
『……なんで?』
寒っ!
『アクターというのは、そういうものなんです。どこに誰が潜んでいるのかわからない以上、そういうことをする必要があるんです。たとえば、誰もいないのに、誰かとしゃべっている風を装ってみたりとか』
『なにその電波怖い……』
てかなにか!?
なんか厨二病患ってんのか!?
『演出なんです。お客様がキャラクターになりきってる以上は、アクターもそれ以上になりきらなければと……。その姿を見たお客様が、なにかあるのかもと疑ったり、どういうことなのかと勘ぐったり……、そういったことも、盛り上げるためには必要な行為なんですよ』
『それ、誰も見てなかったら、どうすんの……?』
『演者が入るときには、お客様の動向を把握した上で、演出家からの指示が入りますから……。まあ、アドベンチャーワールドですから、普通はお客様がたくさんいますからね。エンカウント率も高いんですよ』
『んじゃ、それ以外の時は?』
『キャラクターが、プログラム通りに動いています』
『そのプログラムって言うのは、機械言語の方じゃないッスよね?』
『ええ。脚本の方ですね』
それじゃあと、俺はレイドさんたちを見た。
『キャラクターだって可能性の方が、高くないッスか?』
『空を見上げた、っていうのが、気になっているんです』
『はい?』
『なにかが起こった。流れ星を目で追った。ここまでは流れとしてあるでしょうけど、衛星があるであろう高い空を見る……。そこになにを見ようとしたんでしょうか? この星のクエストに、そんな高い空を見なければならないようなものがあるんでしょうか?』
あーーーそういうことかと納得。
『流れ星と関係するなにかがあるから、姫様ってキャラは不安げに空を見上げる。そんなクエストがないのなら、姫様は流れ星を見続けたはずだ……。そういうことッスね』
『はい。彼女が、もし、プログラム外の行いをしたのなら……』
『姫様……の中のアクターが、流れ星を宇宙船かもと思って、期待した?』
あれは、それを確かめようとして、切り出せなくて、困ってる顔だろうか?
もしアクターっていう中の人が生きているなら、レイドさんが使ってるアバターの規格外な性能に気付かないはずがないよな……。
んでも。
『姫様、そういうので、レイドさんを呼び出したんスかね?』
『様子見の段階ですね』
『そいや、俺たちがプレイヤーだってこと、驚いてたッスよね? レイドさんも、シルフィードさんも。わからないもんなんスか?』
『キャラクターも世代を交代すると、感情が豊かになりますから。行動指針も、プログラムからの縛りを受けなくなりますし』
そういうもんか……。
『んで、姫様はともかく、レイドさんはなにやってるんスか?』
なんかばっさばっさ尻尾振ってるよな。
狼っぽい尻尾w
『なにか琴線に触れたみたいで……。すっかりデレちゃって』
頭が痛いとシルフィードさん。
でも、あれ? って、思った。
『妬いてないんスか?』
きょとんとされてしま……いつのまに可視化したんだ。
俺とディーナの間に顔を出して、でばがめに混ざってきた。
ええい、ないしょ話もやめだ。
「シルフィードさん、恋人なんスよね?」
まさかと、この間の俺とねえさんみたいに返されてしまった。
「わたしはプログラムですから。そういう感情はありませんよ」
「そういうもんスか?」
「あなたは違うんですか?」
シルフィードさんの整った顔の向こうにディーナが見える。
親しげに話してる俺に不満そうだった。
まあ、確かに、俺が作った俺自身に惚れるかと言われると、ちょっと迷うけど……。
「俺たちの世界の有名な言葉には、そう見えるってのは、そうであるのと同じだってのがあるんスよ」
ロマンがあるんですねぇと苦笑された。
「プログラムはプログラムの外には出ない。それ以外のことは行いませんよ? もしそのようなことを『思った』プログラムは、不正な処理を解決しきれずにフリーズします」
「そんなもんかもしれないッスけどね。未開文明人としては、命があって心があるように見えるなら、命があって心があるって思ってしまうんスよ、感じてしまうんス」
「はぁはぁ」
じゃあ……と気配が……俺の背後に。
「わたしがこういうことをすると、ドキッとします?」
どきっていうかなんたる重量感!? 実体化パネェ!
「するっていうかっ、なんか、殺気も!?」
もちろんディーナです。
なんかそっぽ向いて震えながら剣抜こうとしてる!?
やばいっ、なんかこいつヤンデレフラグ育ってきてる!?
「つかあんたさっき、プログラム外のことはしないって!?」
「ですから、範疇ですよ?」
「レイドさんなに考えてんだ!?」
「いえ、わたしを作ったのは、レイドではありませんから」
「あ、外注なんすか?」
「レイドに嫁いだ立場です」
「宇宙船と結婚して放浪して漂着した先でナンパッスか」
「あのキャラクターの中身が男だったらどうするんでしょーねー?」
あっはっはって笑ってると……やべ、聞こえたかな? レイドさんまで震えて剣に手をかけた。
「シルフィードさんの世界じゃ、どうなんすか? そういうの」
「そういうの?」
「生身の人間じゃ無いものに惚れるのって。変態扱いッスか?」
「いいえ? 遊びとしては認知されてますよ? 本当の浮気よりは健全でしょう?」
道具扱いなのかな?
「それに、生物……とくに男性は、種の保存欲に抗えませんから。レイドなんて、戦人ですよ? 戦闘のあとの興奮状態なんて、異性にでもぶつけなければ止まりませんし」
「シルフィードさんが受けとめたりはしないんスか?」
「破壊欲求は、物が相手では収まりませんよ。ちゃんと心のある人が、受け止めて、鎮めてさしあげないと」
「シルフィードさんなら、やれそうなのに」
「でも、レイドは、わたしがプログラムであることを、承知しすぎていますからね。覚めてしまうんですよ」
そういうけど、本当に心がないのかなぁ?
寂しそうに見えるんだけど……これも、この表情までプログラムなのか?
うーん、うーんっと悩む。
シルフィードさんは、なんなのかと言った表情で、問いかけてきた。
「やけにからんできますけど、なにかありました?」
まずかったかなと、俺は頭を掻いた。
「すんません、絡んでるつもりはなかったんですけど、しつこかったッスかね?」
「かなり」
悩みすぎて重症なのではと諭された。
「まあ、悩みは……、あるんスけどね」
どうしたもんかと思ったけども、聞いておくことにした。
悩みはもちろん、いっちばん最初の、あれだ。
俺たちに関しての、状態についてだ。
「落ち着かないんスよね。頭の中だけコピーされてんのか、精神ごとなのか、あるいはレイドさんみたいに、通信状態ってこともあるんスよね?」
「最後のは、可能性は低いと思いますけどね」
「距離の問題で?」
「まあ、先日の波動のお話も、そういうこともあるっていうだけのお話ですから、
言い切れることはなにもないわけですけど」
「もし仮に通信状態だったなら? いつか、俺たちってどうかなりますかね?」
「実体の方は……、実はすでに干からびているかもしれませんよ? 現在は送信されはじめの情報が、そのアバターに更新されていますけど、いずれ死亡情報が追いつけば」
「俺たち死ぬかも!?」
「死なないかもしれませんが、ログアウトと判断されて強制切断を……これは死亡と同じですね。あるいは離席したと判断されるか、仮の意識体でプレイを続行している……とみなされて、現状維持となるのか、どれもやはり曖昧なのですが……」
余計に頭が痛くなってきた。
「やっぱり、わからないことだらけですね」
「そうですね」
落ち着かねぇ!
「なんか、調べる方法ないもんですかね……せめて、ここがリアルだって確証が欲しいんスけど」
「わたしたちも偽物だと?」
信じてもらえなんて悲しい!
とか両手を握ってこられても。
「宇宙人が俺たちと同じ姿をしているってのも、なんか。進化の過程とか同じなんスか?」
「ですが、それは認識を狂わされているだけで、本当は相当違っているのかもしれませんよ?」
「やっぱ、なにか……ないかなぁ」
話についてこられなくなっているディーナが拗ねてた。
ぶちっ、ぶちって、お花ちぎってる……お花!?
せめて花びらにしてあげて! すっげー勢いでお花減ってる! そこの垣根だけ剥げてるから!
「わたしは、フラグさんたちの言う、ゲームの仕様を知りませんから、違いを説明と言われても……」
「仕様……」
ゲームとの違い。
なにか……と想像し、ディーナを見る。
しゃがみ込んでいるディーナは、絶好の撮影スタイルで……。
これがゲーム中であれば、周囲をうろうろとする不審なプレイヤーが増殖し……。
あ、こいつ盗撮してるw って通報→タイーホとか……。
「あ」
俺は、盗撮で思い出した。
「リアルパンツ!」
「はい?」
「しわとかスジ!」
「なに言ってるんですか?」
「いやディーナの!」
ディーナが、バッと自分の股間に手を差し込んで隠した。
「あ、いや、ちがっ!?」
「ふ~ら~ぐ~!」
「違うんだ! 俺はパンツの中身について!」
「!?」
──今日、その日、王宮庭園が壊滅しました。
「俺は、ただ、ポリゴンには中身がなくて、裏側の世界があるだけだから、それを確かめられればって話を」
「あんたバカでしょ」
ねえさんのとても冷たい目が気持ちいいですw
パンツの中身は、秘密の花園というお話でした。
お手紙のコーナーヽ(´∀`)ノ
ちょこちょこもらってますが、ネタバレしないと返答できないものが多いので、大体放置してます、すみません。
その中から、返答しておこうかなっと思ったものだけ。
基準は、みんな疑問に思うかもなぁってところです。
1 MMORPGって、そんな簡単にカンストできるものですか?
ものによりますが、わりとすぐです。特に社交的でパーティを組むのが苦にならない人ほど早いです……(⊃Д`)、
さらに枯れたゲームになるほど、パーティ内戦術なんかもシステム化してしまっているので、レベ上げはもう作業になります。
んで、レベルが簡単にカンストされるようになる>運営がレベル上限を引き上げる、または、新ジョブを投入する。
この流れでインフレ化していきます。
2 波動とか。
作中ねえさんが言ってたとおり、完全一致でないといけないなら、この状況はありえません。
つまりこいつらの考えは間違ってます。んで、どっかで書いたとおり、この状況を引き起こした原因がいます。
ただ、そこまで話を掘り下げるかどうかは決めてません。そこにからまなくても終われるので。
じゃあなんでそんなことに触れてるのかというと、引き起こすきっかけになった事件は別にあっても、この状況を形作ることになった下地には絡んでいるからです。
大枠としての発想には間違いがないんです。でも……といった感じで。
3 意識とか。
できればこの章か次の章で、彼らの状況を明かしたいと思ってます。
……なんかものすっごくネタバレしたくなって来たのでこの辺でw ノシ