さっくり王都に着きました。
それから大したこともありませんで……。
レイドとシルフィードは、仲間になりたそうにこっちを見ている!
……とかまあ、そんな感じで、五人に増えたパーティで、俺たちは王都ラスティアへとたどり着きました。
ラスティアは二重の防壁に囲まれ、外の街と内の住宅地に別れている。
その真ん中には王城があって、大道が北と南を貫いていた。
この街、上から見ると卑猥な形してるんだよなぁw
外門をくぐるだけでも、人待ち、車待ちで、随分と時間をかけられた。
危険物の持ち込み、禁制品の確認、あと、街に入るにも税金を払わなくちゃならない。
まあ、俺たちギルド所属のプレイヤーは、順番待ちと禁制品のチェックをするだけで通れるんだけど。
門をくぐって中へと進む。
人に亜人、中には魔物の姿もある。
魔物と言っても、知性があれば、ステータス的には悪(Evil)であっても、町中で問題を起こさない程度の分別はある。
人間だろうがなんだろうが、良い奴も居れば悪い奴もいる。
とまあ、そんな感じなんだが。
「多いよ! 人っ!」
幅十メートル以上はあるって通りなのに、隙間もないほどの多さで人がすれ違っていて、どっかんどっかん当たられた!
「ねえさん! お願い! 手ぇ繋いでて!」
「なんでよ」
「俺、迷子になる! 自信がいっぱい!」
「マップ持ってるでしょうが」
ですけどねー。
ゲームとしてのラスティアのマップはもちろんあるけど、リアルとして、これだけの人いきれでは、パニックにもなる。
わっけわかんねぇんだもん! 周りの人間が邪魔で、今どこに居るんだか、ぜんぜん見えない。
「ねぇ」
ことらんを抱いてるねえさん。
隣を歩いてるレイドさん。
……なんか様になってて、いやーんな感じ。
「こういうの、ゲームの管理画面だと、キャラクターが点で描写されてて、それがちょこちょこ動いてる感じじゃない?」
「それが?」
「あんたたちって、システムにはどう映ってるのかなって思って」
『普通ですよ?』
告げたのはシルフィードさんでした。
今は透明モードです。
声は、システムでパーティ内TALKに設定されてる。
つまり、仲間内にだけ聞こえるモードだってこと。
だから、今の俺たちは、子供を抱えた、男二人と女一人の、三人組に見えている……んだけどさ。
シルフィードさんへ、こっちから話しかけるには、なにもないところに声をかけなきゃいけないわけで……。
一人でしゃべってる痛い人みたいになっちゃうんだよな。
『わたしたちは、新規ユーザー扱いで、ログインしていますから』
「なにそれ?」
『ここ、システム的には、アドベンチャーパークですから』
わからないと言うねえさんに、レイドさんが笑って教えてくれた。
「ちゃんと金を払って、チケットを買ったように見せかけてるってわけさ」
「それで良いの?」
「お客さまを追い出す施設はないだろう?」
「でも、チート能力が問題になるとか、言ってなかったっけ?」
それはもちろんそうだけどと。
「そりゃあ、あんまり派手にやらかしたらな、ペナルティを食らうだろうけど、少しくらいならガタガタ言われないのは、なんだって同じだろ?」
……この人、けっこう適当だな。
まあ、宇宙で戦闘機乗りなんてやってた人が、常識的で大人しいっていうのもないか。
「んじゃ、その体は?」
「持ち込みの擬体ってことで登録させた。……ハッキングで、だけどな」
「宇宙的には、そういうの、アリなの?」
「どういう意味だ?」
「ん~~~、運営には、テーマとか、イメージとかがあって、登場人物は、それに沿ったものにしてるわけでしょう。持ち込みとか、良いのかなって」
「ああ。そりゃな。ある程度の規制は入るさ。それでも、自分で作ったスペシャルを持って参戦して、みんながうらやましがる中を、チート能力で敵をバンバン倒して勇者、英雄に! ってな。そういう売り込みのところもあるんだよ」
シルフィードさんが補足する。
『まあ、この星の場合、管理者たちが都合をきかせた結果でしょうね』
「そうだな。自分たちが生きやすいように、カスタマイズしたアバターでも参戦可能な設定にしたんだろう」
ねえさんがちょっと不機嫌になった。
「それじゃあ、あたしたちの手助けなんて、いらないんじゃないの?」
そうでもないとレイドさん。
「この世界が、歪んでないなら、気にしなくてもよかったんだろうけどな」
「歪むって?」
「パークとしてだよ。管理者が消えてどれだけ経ってるかわからないけど、そうなると、キャラクターなんて自由に活動しすぎてて、どれだけ設定からかけ離れたことをやってるかなんて、わからないだろう?」
『役割を果たしてないとか、怖いんですよ?』
「役割っスか?」
『はい。例えば、ユーザーが最初に武器や防具を揃えるはずのお店の店主が、悪徳商人になってしまっていたりしたら、どうですか?』
「それは……」
「はへ~~~」
「そういう不安を減らしたいんだよ」
モブのフリした悪徳プレイヤーってのはいる。
お店のNPCの横に突っ立って、プレイヤーが高値だとは知らずに、あるいは間違えて買っていくように、『フリ』をしている連中だ。
だけど、NPCが、そういう真似をするようになってるとなると……。
色々とおかしいドラゴンレジェンドでも、店主がまともにものを売らない、買い取ってくれない、ということはなかった。
それはさすがに、ゲーム性に問題が出て来るからだろう。
ねえさんが、暴れることらんをよこしてきた。
ことらんは、露店で売ってる焼き肉に興味があるらしい。
でけー肉……固まりでつるしてるよ。
「キャラクターってのについて、ついでに聞いて置きたいんだけど」
なんか真面目な話がしたいらしいです。
暇だな-。
「なにが聞きたいんだ?」
「アクターとか、アバターとか、違いについて」
それじゃあ、その辺りのことは、まとめて話しましょうかと、シルフィードさん。
俺たちは、適当な食堂へ寄ることにした。
二軒分の広さを持った食堂だった。中も人でいっぱいだ。
俺たちは出入り口の側に座った。
「綺麗なねえちゃん、肉系のオススメおくれー!」
はやくっ、はやくね! でないと俺の腕がことらんに食べられちゃう!
膝の上のことらんは、俺の腕が美味しいらしいです。いてぇよ!
かぷっ☆ なら可愛いけど、がっぷり行って、ガジガジ言ってるよ! 本気だよ! 両手でつかんで離してくれないんだよ!
そんな俺を見てから……、たぶん、だけど、シルフィードさんの姿見えないし。
シルフィードさんが口にする。
『酒場の看板娘……典型的なモブですね。キャラクターの大半は、ああいったエキストラのことを指します。モンスターなんかも含みますね』
宇宙人がモブとか言ってるよ。
「モンスターも?」
『世界を盛り立て、盛り上げるのが役割ですから』
彩りッスか。
「キャラクターは、こうであるって指標を組み込まれてるんだ。それを元にして行動してる。そこから逸脱するってことは、まあないな」
「AIで動いてるみたいなもんか」
そうですねと、おおむね合っているらしい。
でもことらん見てると、人工知能とか、機械って感じでもないんだけどな……。
『次にアクターです』
意識を戻す。
『これはキャラクターとは違って、役者によってコントロールされている、演出のための存在です』
「プレイヤーとは違って、運営側が操作してるアバターってこと?」
半分あたりだそうな。
「竜に身を投げ出すお姫様。聖剣を与える女神様。勇者の前に立つ魔王。なんでもそうだが、空気とか雰囲気とか、こっちの性格に合わせてくれた方が、盛り上がれるだろう? そういう演出は、役者が一番上手いからな」
『役者が手がけない間は、AIによって独自に行動していますね』
おもわず下、膝の上のことらんに目を落としてしまった。
獣王……あれ、そうなのか?
『そしてアバターですね。これは、持ち込みなら、遠くからの旅人とか、そういった形を取られますけど、あなたたちの場合だと、レンタル品という形になってます』
ショックだった!
「まさかの借り物!?」
『はい。普段はキャラクターとして世界の日常を彩っていて、入園者がレンタルを希望すると、貸し出されるキャラクターの一体であるわけです』
つい遠い目をしてしまった。
「フラグよぉ……、お前、借り物なんだってさぁ」
しかも倉庫だし。
それから、重要なのがと、レイドさんが続けた。
誰か慰めて!
「キャラクターなんだが、AIって言っても、ある程度の行動指針がすり込まれてる程度なんだ。つまり、普通に生きてるも同然だ」
「まあ、見た感じ、そうッスね」
「ああ。これが、第一世代なら問題ないんだ。だけどな、第二世代、第三世代となってくると、やっかいになる」
ねえさんが首をかしげた。
「世代って?」
『キャラクターの間で生まれた子供のことです』
「ことらんとか?」
『はい。キャラクターとは言え、擬体は妊娠が可能なので……普通は、子供などできないように処置されているものですが』
「ここは特別だものね」
それが厄介ごとに繋がるのか?
『アバターやキャラクターと言った人工生体は、設計の段階では、塩基配列に余分なものが含まれていはいないんです。そしてキャラクターとして、意図的に配置がなされる以上、最初の組み合わせは、まず間違いなく同じ種族ということになります』
「つまりな、男と女、雄と雌、それに容姿、容貌、細かな点で、優性遺伝子と劣性遺伝子が混在するようにはなるが、基本的には、親の能力をほぼ劣化無しで受け継いだあげく、運営のコントロールからは外れてる存在が誕生することになるんだよ」
「なんでよ?」
「第一世代は、制作時に刷り込みが行われてる。けど、第二世代は?」
「ああ、だから、悪徳商人ってわけなのね?」
「そういうこと。普通に親とか見て育っちまうんだよ」
俺は思わず、ねえさんに対してトークを実行していた。
(獣王って)
(あたしもそれ、考えてた)
獣王は、システムに乗っ取られてた。
つまり、コントロールを受け付けていた。
(獣王ってキャラ、間違いなく、第一世代よね)
獣王を操作したのが、システムのプログラムなのか、運営の誰かなのかは別として……。
(んじゃことらんは)
(第二世代かも)
運ばれてきたマンガ肉にかぶりついている野生児が……。
こわっ!?
なにこの脅威の事実!
こいつ、育つと獣王と同レベルになるかもしれないの!?
しかもそんな子供たち、いっぱい抱えてるんですけど!?
母虎さんと雌虎さんたちは、世代いくつだ!?
「どうした?」
「何でもないッス!」
聞かれて、俺は焦った。
(ねえさん)
(伏せといて)
「じゃなくて!」
俺は、第一世代ということで考えていたと口にした。
「この世界には、真竜とかいるんスよ。この世界の誕生と同時に生まれたとか、産み落とされたとか、そういうのが……」
「でも、真竜って、ゲームの話でしょ? こっちにもいるかはわからないし……」
「そういうのを探して回るのも、面白いかもな」
この星にたどり着いた連中の話が聞けるかもしれないからと……。
正直、このメンバーに合ったクエストって、どんだけレベルが高いんだよ……とか思うわけなんだが、主目的がレイドさんたちの生活費の確保なわけだから、そこのところは都合が良かった。
実入りの良い仕事が受け放題なわけだしね。
でも、真竜に会うためには、メインクエストと呼ばれるものを受けなくちゃいけない。
でないと、真竜に会えるフィールドまで転送してもらえないからだ。
だけど、これは金になるようなクエストじゃないし……。
どうしたもんかな? とか思っていたら、表から爆発音が聞こえてきた。
爆発音て!?