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主人公はそうでもありませんが、ねえさんはチート組です。

 落下まで二十秒。


「!? 高エネルギー反応っ、来ます!」


「なに!?」


 直後、レイドは耐G仕様のジェルに満たされたコクピットの中を、それでも投げ出される勢いで衝撃を受けた。





「むぅうううううううう!」


 ねえさんが唸る。


 術式の円環を、魔力が循環し、魔法が限界にまで熟成される。

 臨界点は、ねえさんの精神力次第だ。集中力の途切れ目が、コントロールの失敗を左右する。

 だから、放たれた魔法は、間違いなくねえさんにとっての最大威力に達していた。


「弱かった?」


 魔法の効果時間と、破壊力は、術式を組んだ時点で決定されている。

 だから、発射後に気合いを入れてみたところで、威力を引き上げることは不可能だ。


 となれば、ドラグ○レイブを選んだねえさんの失敗だと言うことになる。


 地表に放てば、一面がぶっ飛び、焼け野原どころか、灼熱の溶岩地獄が形成される魔法なんだけど、落ちてくるやつは、バリアっぽいのを張っていた。


 平面を組み合わせたような形状をしていて、それがねえさんの放ったビームを弾いている。


「なんだあれ……隕石じゃない……」


 俺は、ことらんを抱き上げたまま、呆然としていた。

 バリアは角度がついていて、受け流すような感じだったが、弾かれたビームは幾状にも別れて、散っていった。

 障壁とか結界って言葉じゃ、違和感を感じる。


 あれは絶対、バリアだ。


 かっけー!





 艦底部に張った四角錐のバリアは、墜落時の衝撃を緩和するために用意したものだった。

 決して地上からの攻撃を想定していたものでは無かった。

 それだけに、消耗されるエネルギーが追いつかず、出力が姿勢制御へと回しているエンジンから奪われていく。


「対空施設でもあるのか!?」


「いえ、人です。発射を確認、撃ったのは人間です」


「ばか言え!? 大気中で減衰されてるって言っても、人間が持てる携行火器程度で……」


「……素手からビーム出してます」


「この星の人間は化け物か!?」


 バリアは貫通されようとしていた。


「対艦砲並じゃないか!」


「確認する時間はありません。バリア角を調整。ビームを真っ正面から受けます」


「なんでっ、余計に……そうか! ビーム圧の抵抗をまともに受けて、減速する気か!? だが持たなければ、貫かれるぞ!」


「やるしかありません。接地まで10」





 ……なんかバリアが盾みたいになって、ねえさんの魔法を受け流さずに受けとめだした。


「なんか必死っぽいんですけど……ねえさんの魔法は、宇宙船でも耐えられんのか」


 ねえさんは渋い顔つきになってた。


「違う。防御態勢じゃない。あいつ、こっちの力を利用して、押し戻されるつもりだわ」


「え?」


「減速しようとしてるってこと。速度を落とすためのつっかい棒代わりにされてる。あたしの魔法」


 よくわかるなぁ。


「え? てことはあれ……墜落中?」


 灼熱の落下物……でけぇよ。

 こういうのも、なんとかが七分に空が三分とか言うのかなぁ。

 相当高いところにあるはずなのに、もう視界を埋めてくれてる。

 尖った艦首から炎が渦を巻いて後方へ流れてる。


 ぼーっと眺めてたら、ねえさんに叱られた。


「フラグ! 防御魔法! 衝撃波が来る!」


「へい!」


 瞬時に換装。白いローブ姿になる俺。

 そして指輪なんかのアイテムをじゃらじゃらと装着する。

 どれもMPの最大値を引き上げるアイテムだ。

 ことらんは相変わらず、背中から両脇に腕を回して抱き上げたまま。ほんと、この状態でも着替えられるって、どうやって成り立ってるんだろうな……。


 ともかく、これだけ極端な装備をしても、ねえさんには及ばない。

 魔法職の中でも、極大魔法が使えるくらいに、極振りでカンストさせてるねえさんは、特別な存在(チートタイプ)だ。

 こっちは、普通に編んだ魔法を使うので、精一杯。

 威力を増す、ということは、それだけ、術式が複雑になり、制御のための精神力が、必要になる。

 何百メートル……キロはないと思うけど、十メートル単位じゃ明らかに足りないっぽい宇宙船を、跡形もなく消失させられるような魔法を使うには、ねえさんくらいに極端な育て方をしてないと、どうしようもないだろう。


 ……普段、下が素っ裸なのって……さっきちょっと見えたのは、なんか白のチューブっぽいので胸隠して、下も白のパンツはいてて、その上から胸の下までもないような黒の皮のジャケットに、前の空いてるショートパンツとブーツで、アラサーのちょっとぽっこりとした下腹部がパンツの際に乗ってて、良い感じに太くなってる足が、えらいエロかったけど……。


 それ、普通のカジュアルですよね?


 まさか、筋力不足で、まともな装備品を身につけられない……とか?

 ローブだけで必要筋力(STR)使い切ってるとか……ありえるな。


 まあ、そんなことを考えつつも、魔法はちゃんと展開しました。

 いわいる一つの絶対領域(A○フィールド)。耐物理攻撃特化型なので、魔法に対しては効果が薄い。それから、俺ではレアアイテムを大量に身につけていても、一回張るので精一杯だ。

 一定のダメージを受けると消滅します。まあ、RPGじゃ、ありがちな魔法だね。


「くっそぉーーー!」


 ねえさんが吼えた。


 魔法が、赤い閃光が、ほとばしっていたものが、細くなって、やがて途切れ途切れとなり、ついに消えた。

 しかしその時には、船は俺たちの頭上を越えて、草原の向こうの森林へと突っ込んでいった。

 衝撃波が俺たちの周囲五メートルの円形領域を回避して流れていく。


「削りきれなかった!」


 いや地団駄踏むのはおかしいでしょ。

 墜落してるのわかってんなら、助けてやってよ。


 そして大地震と衝撃の波が、木々を巻き上げ大地を吹きさらして襲ってきた。


 まるで土砂の津波だな……。


 ……魔法が持っても、俺たち、生き埋めになるんじゃね?

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