クソゲーってやたら設定が凝ってる上に、直感的には遊べないシステムを取ってるよねw
──転移呪符発動。
魔法陣の外から、ねえさんが。
「一つ言っておきたいことがあるの」
「なんスか?」
「帰ってきたあんたを待ってるのは、子連れ寝取りで親子どんぶりだけじゃない……獣姦もよ!」
テレポートが終了する前にスローイングナイフを振りかぶったんだが、投げ終わった時には転移がおわっていた。
くやしい! さすがねえさん! 獣姦とかねぇよ!
「初めてがモブNPCとか悲しすぎるじゃないですか。そうでしょう、ねえさん……」
せめて人間がいいです。
可愛い子なんて贅沢は言いません。
だってこのままだと、最初すらなさそうなんだもん。
始まることすらないかもしれない。
いかん、泣けてきた。
ところで、ここは母虎さんが住んでいたという森の中である。
母虎さんの縄張りはもっと奥の方らしいから、ここからさらに移動となる。
ギガンディアスの西方に位置する森だ。名前があるほど立派でもないが、直進するよりも迂回した方が、向こう側に抜けるのは速い。それくらいには深くて危険。
俺の背後には、ギルドが置いている要石があった。
使用した呪符の転移目標となっている石だ。
転移符は、ギルドから受け取ることができる。
クエストをクリアするともらえるポイントと交換だ。
特別な場所への転移符になると、イベントでの配布やクエストでの報酬として配られることになるんだが、この森は特別なフィールドというわけでもないんで、呪符の入手はくり返し可能だ。
「んじゃま、行きますかっと」
あ、すんません、どもどもと、腰を低くして通り過ぎようとしたところ。
「ごぶーーーー!」
ゴブリンどもが騒ぎ始めた。
「転移先は安全地帯のはずだろ!? なんでゴブリンが!」
それも何十匹もって!
んでもって俺は、そのど真ん中に!
あ、さっき投げたナイフが、眉間にスコンと刺さってるゴブがいる。
よく生きてんな、あいつ。
ゴブリンは、低レベル冒険者向けのフィールドから、高レベルプレイヤーが挑戦するダンジョンにいたるまで、どんなレベル帯のエリアにも出現してくる小型亜人のモンスターだ。
それだけに、ザコキャラだから、と油断するようなわけにはいかない。
弱いのも居れば、強いのも居る。
油断するわけにはいかない……んだが。
「ごーっぶっぶっぶっぶ!(ふーっはっはっは! 圧倒的じゃないか、ワが群は!)」
「ごっぶーっごっぶっぶ!(左戦力薄いぞ! なにやってんの!)」
「ごぶぶぶぶ、ぶぶぶぶぶ!(ロングソードなど、当たらなければどうということはない!)」
「ごぶーーーーーーーー!(そうだ、おそれるな、みんなのために!)」
……なんかウゼェ!
キャラ的に負けてる気がする、なに言ってるかわかんないんだけど!
そして俺の前に立ちふさがる一匹のゴブリン。
「ごぶっ!(さぁっ、殺し会おう……化け物!)」
イラッ☆
なんか、がっちゃがちゃに鎧を着込んだゴブリンがショートソードをかっこよく突きつけてきたんです。
「なんなのこの状況!?」
「そこのヒキニート!」
「誰がだ!」
「すまん! トレインしちまった! 助けてくれ!」
ゴブリンのような集団種族は、一匹戦い始めると、集うように寄ってくる。
このため、下手な場所で戦うと、あっという間に囲まれちまう。
そういう状況で逃げ回ると、まるで電車ごっこのように後に続いて追ってくる。
増えながら。さながら連結するかのように。
この状態が、トレインだ。
「あんた誰だ!」
「ザ・プラクティスのメンバーだ!」
見た目20代?
弓と細身の剣に、簡易鎧。
レンジャーっぽい。
ディーナとしての記憶を掘り起こしてみてるんだけど……。
こんな奴、いたかなぁ?
「ディーナは?」
「お前、ディーナの知り合いか!?」
「あいつはどこだ」
「奥だ! 俺は戦闘中に絡んできたゴブを引き離そうと思って……」
「こんなところまで引っ張ってきてんじゃねぇよ……MPKかよ」
MPKは、モンスターを使ってプレイヤーを間接的に殺っちゃう悪質なプレイです。
直接やるのと違って、業を上げなくても済むので、非常にお得ですが、みなさんは真似しないでね!
にしても必死だな、こいつ。
「俺は死ねない、死ぬわけにはいかないんだ!」
かっこいいこと言ってるけどさーと。
巻き込まれて死亡とか、間抜けすぎるのでなんとかしよう。
「とおっ!」
なけなしの魔力で閃光魔法を破裂させる。
一瞬遅れて、マクロ起動。
「──蒸着!」
ゴブリンたちが目をくらましているその隙に、一瞬でメイン装備に換装を完了する。
彼らが再び目を開いたとき、そこにはかっこいい鎧騎士が誕生していた。
俺である。
「──説明しよう! 荷物持ちフラグは、マクロを使うことによって、わずか一ミリ秒で武装を変更できるのだ!」
「いやそれ普通だから!」
む? マクロによる装備変更を知ってるってことは、こいつプレイヤーか。
マクロによって、変更された装備は以下の通り。
頭:竜の顎。
胴:竜の胸骨。
腕:竜の爪。
武器:竜の牙。
竜と名の付く防具は、本当は他にもあって、シリーズとなるんだけど、他の部位は、使わないと思って、宿に放り込んだままにしている。
顎は竜を象った兜。開いた口から、俺の顔が覗けてる。
胸骨は、背中から脇を通って、胸と脇腹をくわえ込んでいる鎧だ。
爪は肘から爪のように伸びている部位のある、手っ甲と盾が一体となったもの。
牙はまんまだ。竜の牙から削り出した剣。
竜の骨ってのは、単純なカルシウムではできていない。
でなければ、あの体躯を維持はできない。
竜は、生まれたときはカルシウム製の骨であるのだが、体が大きくなるにつれて、魔力による補助と強化を行い始める。
そうして、骨には強く、竜の魔力がしみこむのだ。
その身の内で魔力に漬け込まれ続け、魔力が物質化し、固化し、カルシウムに変わって骨そのものとなるまでに至った凝縮体。
そりゃ強かろうて。
よって、その骨から作り出されたこのシリーズは、強度──物理的な攻撃に対する防御力だけなら、ゲーム中最強と言われていた。
そして攻撃力に対するブーストも半端ない。
牙がそうだ。牙の剣は、物体の分子結合を破壊するかのような崩壊現象を、対象に与える能力を持つ。
竜の牙にかみ砕かれるように、竜の骨で作られた武器の前には、どんな盾も鎧も紙のように引き裂かれる。
ただし、今の状態では不完全だ。
竜のシリーズは、全部を着ることによって、初めて竜の加護を発動させる。
竜が生まれながらに持っている防御結界を発動するんだ。
つまり、今の状態じゃ、攻撃特化も良いところ。
まあ装備品としてはわりとレアだし、驚いてもらって良いんだけど……。
「待て!?」
「え?」
「マクロだって?」
「へ?」
「なんでお前、マクロが使えるんだよ!?」
……どういうこと?
なんかこの人、違うところに引っかかったみたい。
でもま、今は気にすることじゃない。
竜の武器が放つ剣呑なオーラに、ゴブリンたちが後ずさる。
「確かに俺は、荷物持ちだけどな」
半身に構え、武器の柄は頭の横に。
刃は敵へと水平に。
両手で支持する。
「荷物番ってのは、普通じゃないものを、いっぱい持ってるんだぜ?」
俺は牙を振り上げ、降ろした。
気合いと共に。
「ドラグーン・ブレイカー!」
厨二病っぽい雄叫びと、竜シリーズの放つオーラに、ゴブたちがびくりを身をすくめて……まぶたを閉じた。
うん、天丼は基本です。くり返しさんくー。
彼らが再び目を開いたとき、その時が……きっと彼が死ぬときだ!
「独りで逃げんなぁ!?」
さらば、友よ、君のことは忘れない。
いやちゃんと『BOT妖精/回復の君』を残してきたから。
あの程度の被ダメなら、妖精が消える前になんとかなるだろ。
ちなみに、BOTってのは、自動プログラムね。つまり妖精さんが自動で回復魔法かけてくれるってこと。
この系統のBOTは、大抵のMMORPGで、外部プログラムとして開発され、公式からは違法、違反として取り締まられる系統のものだけど、多くで必要とされると言うことは、需要があると言うことだ。
というわけで、運営さんが作ってくれた公式妖精さんです。
見た目、十二・三才くらいの少女で、手足の細い未発達な姿をしており、背中に四枚の羽が生えている。大きさは手のひらにお尻が乗るくらい。
そんなのがふわふわと目の前に浮いて、にっこりと笑って癒やしをくれるんだ……。
おかげで、三角座りでじっと眺めて癒されるお兄ちゃんたちが続出し、一時期ロリ問題による社会バッシングを受けました。
YES! ロリータ! NO! タッチ!
ドラゴンレジェンドは多くのヘンタイ紳士によってプレイされるVRMMORPG……でした。