…ひどいゲームだな、これ。
クエスト失敗に伴うペナルティ。
これがあるのは、気軽にあれもこれもと受けるだけ受けて、めんどくさいと放り出す奴がいるからだ。
しかしこのゲームは、オンラインRPGである。
討伐系の依頼などは、一定数以上のプレイヤーが受けられないように調整されている。
そうでないと、対象エリアでの、モンスターの沸きが足りなくなるからだ。
だがこの枠を、受けるだけ……という連中に埋められてしまうと、つまらない話になってしまう。
そこで、ペナルティがもうけられている、というわけだ。
必然的に、ペナルティは、護衛、討伐、採取、探索、調査に、尾行などの、サブクエストに限られて設定されている。
メインクエストは、失敗して当たり前の難しさだからな……くり返しチャレンジできないと、攻略法も見つけられんし。
んでもって。
「いーやーだー!」
俺が投げたのはチュートリアルレベルのクエストだって話だ。
だって、チュートリアルをスキップしただけじゃん!
なんでペナルティがあるんだよ!?
「地下送りだけは勘弁してくれぇ!」
と、王城裏手で、兵士に両脇を抱えられてごねていた。
この街は、魔族との大戦を目的として作られた城塞都市である。
その大戦は既に過去のものであるが、かなり派手な攻防があったようで、空に地上に地下にと、魔族の侵攻は苛烈を究めた……ということになっている。
このゲーム、細部まで凝ってるのは良いけど、全部文章ですませてるのがなぁ……。
んで、地下の話。
虫型の魔物が地面を掘って都市の内部にまで侵攻したらしい。その時に掘られた穴が今も健在で、地下迷宮の様相を呈している上、どこかに繋がっているのか、魔物や、魔物とは言いがたい危険な虫などが沸いている。
でも、そこはそれだけの場所なんだ。
お宝なんてものは無く、ただただ駆除して回るだけなんだけど。
出るんだよ。
来るんだよ。
飛ぶんだよ。
カサカサと。
ヌラヌラと。
テラテラと。
それは人類の天敵だ。
そしておそらくは真の魔王。
その姿は闇よりも暗い黒。
人類史が始まって以来、終わることなく果てしない戦いを演じてきた、最強最悪、最初にして最後の敵。
硬くて光ってて臭くて奇妙な声をあげるせーぶつ。
その名を呼ぶのもおぞましく、誰もが仮称でその名を言う。
それすなわち、『G』。
正式名ジャイアントコックローチ。
体長一メートル前後。
知ってるか? あいつら、腹の面って異常にキモイんだぜ?
それを完全再現した開発チームは死ぬべきだと思う。
せめて病院に入ってくれ。
んでもって、こいつら、時々は地上にも現れるため、最重要討伐対象になっている。
あほかと。
殺虫剤で殲滅しろよと。
それができないのは、こいつらが地下での掃除屋としての役割があるからだ。
食物連鎖など存在しない地下道迷宮なだけに、そこで出る魔物や虫や小動物なんかの死骸を駆除する、なにかしらの動植物は、根絶させるわけにはいかないらしい。
というわけで、個体数調整のための討伐が、罰ゲームとして課せられていた。
設定的には。
本当のところは、低レベルプレイヤーのレベル底上げのためだ。
依頼を失敗>お前、レベルを上げて出直してこいや。
というわけで、レベルが上がるまでそこからは出してもらえないんだが……。
俺、レベル70なんです。
限界突破クエスト受けてないんですよー!
いやぁあああ!
もちろん救済措置はあるんだけど、100匹倒すコースなんです。
やめてぇええ!
しかも、現在、リアル化してるんです。
倒したって証拠も、取らなきゃならないんです。
ひぃいいいい!
つまり魔法なんかで、跡形もなくってのはだめで、弓なんかの飛び道具じゃ、刺激するだけだろうし、暴れられたり、ましてや、飛んでこられたりしたら……。
ゾゾゾゾゾゾ!
つまり、方法としては、メイスなんかで。
ぐちゃっと。
「お願い許して、なんでもしますから、神様助けて神様!」
「そのお願い、かなえましょうか?」
神様! って思って振り向いたら、悪魔がいました。