ステータスが君を決めるんじゃない、君がステータスを割り振るんだ!
お嬢様はギルドへクエストに。
荷物番は街に買い物へ出かけました。
ということで街を散策中であります。
「むーん」
街並は知っているものと変わらない。ゲームと同じ視点、同じ速度で動いているからなおさらだ。
売り子や行き交う人の群れ、波が、見知ったモブとは違うくらいか。
冒険者っぽいのが何人か居るけど、俺みたいな転生者もいるんだろうか?
街の中央、噴水広場まで来て、その隅っこにしゃがみ込む。
ここは別名、シャウト広場だ。
一緒にクエストを受けませんかー?
現在ハイパーポーション200G! 残り10個!
そんな声がここでも聞こえる。
「思ってたのと違うんだよなぁ……」
もちろん転生の話である。
生まれ変わるとか、落とされるとか、そういう展開だと思ってた。
けど実際は、既に存在していた、フラグって人間に重なったッポイ。
そのくせ、フラグとしての記憶がない。
フラグどこいった?
(やべー……ディーナに気付かれたら説明できねー……)
どうなんだ?
ドラゴンレジェンドに似た平行世界があって、ゲームのドラゴンレジェンドが余りにもそっくりで、だから世界が、同じものだと混同しちゃった、とか?
「レベル的には文句ないんだけどなぁ」
ぎゅっぎゅっと、自分の手を見つめ、握ってみる。
ドラゴンレジェンドには、職業という概念がない。
スキルが全てのゲームだからだ。
別に、鍛冶屋が商人として、自分で作ったものを売っても良いじゃん?
魔法屋が、魔法の武器作って売ってたって、かまわないじゃん? ってなもんだ。
ただ、特定のスキルを上げて、戦士だとか、魔法使いだとか、名乗るのは自由だ。
自分を紹介するための職種欄が、ステータスの設定項目に存在している。
そこになにを書くかは自由だ。
はい、ちょっとへこんでます。
昨日、ディーナに無理矢理、荷物番ってさせられました。
んでもって、ディーナは精霊騎士となっている。
偏り方は、精霊魔法に七割、騎士に三割って感じだな。
ついでにレベルについて説明しておこう。
カンストカンストって言ってるけど、カンストについては二つある。
一つはスキル、もう一つがレベルだ。
スキルは使えば使うだけ上がっていく。
ディーナのように、精霊魔法が主体なら、自然とカンストしてしまう。
……剣技系が高いのはともかく、叩くとか殴るとか蹴るとか、突っ込み系が剣技を先回って、カンストしてるってのはどうなのよ。
まあ、ともかくだ、スキルは使ってさえいれば数値は上がる。
技能職や生産職の連中だと、戦闘系よりそっちに偏る。
最終的には、みんな255になるわけだけど。
だったら、最終的には、プレイヤー全員が、代わり映えのしない強さになるじゃないか、というとそうじゃない。
足かせがある、それがレベルだ。
レベルは初期上限が70となっている。
けれど、レベルキャップの解放を受けることによって、最終的には150が上限値となる。
解放条件は、クエストだ。
そしてレベルは、上がる度に、ステータスやスキルに加えられる、ボーナスポイントを与えられる。
つまり、スキルを255で止めずに、上にまで持って行けるし、ステータスの影響によって、スキル値が同じであっても、効果や威力が変わってくる。という現象が起こるのだ。
ステータスはHP・MP・ST/STR・DEX・VIT・AGI・INT・MND・CHR・LUCKとなっている。
普通のゲームと扱いが違うのが、MPとSTだ。
精神力とスタミナ。
魔法はマナとかを消費するんじゃなく、詠唱のために精神力を消費し、精霊を呼び出すために消耗する、という理屈だ。
そしてスタミナ。
長時間連続して行動、あるいは通常以上の運動を行っていると減っていく。
少なくなるにつれて、体が重くなっていく。
VRMMOでは、ただでさえ思考とアバターの動きがシンクロしないというのに、この足かせはかなりきつい。
俺はこいつを上げるために、VITにやたらとポイントを振っていた。
だって! スタミナですよ奥さん!? 一晩ひゃっはーですよ!?
すみません、取り乱しました。
俺、いつか魔法使いになる前に、女の子啼かせるんだ。
……はっ!? 俺、現状で魔法使えるわっ、やべ!?
んまあ、とにかく、システムの話である。
このゲームは、自由にモーションを作れるけども、やはり用意されている技や魔法が存在している。
しかし、最上級のものを使えるキャラは珍しい。
それは平行職ではなく、戦士や魔法使いと言った、特化型の育て方をしていなくてはいけないからだ。
ディーナは精霊魔法の最上級、最大魔法を使えない。
それは冒険者的なエルフとして育てたからだ。
本物の……NPCのエルフは、精霊魔法使いとしては強大な魔法を使い、恐ろしい存在である。
しかし、それに特化していて、体力がない。
装甲も紙である。
そのくらい、ボーナスポイントの極振りを行わないと、極大魔法は使えないのだ。
しかしそれでは、ゲームをするには辛すぎる。
というわけで、ディーナの場合、腕力(STR)やら体力(VIT)にも、ボーナスを振り分けて育ててある。
そのため、格下(レベル的な意味で)の相手なら、騎士としても通用する作りになっている。
問題は俺、フラグだ。
ステータス画面を開いてため息を吐く。
「適当すぎんだろ」
Lv70
HUMAN
HPmax 1200
MPmax 108
STmax 1024
STR 60
DEX 73
VIT 140
AGI 100
INT 41
MND 39
CHR 75
LUCK 102
「レベルキャップの解放クエ、受けるかなぁ」
幸い、上限までにはかなり余裕がある。
「それでも、勇者にはほど遠いなぁ……」
それも悩みの種だった。