表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/74

そのとー

「まだガクガクする」


「うっさい! 黙れバカ、キモイ!」


 なんだよぉっと、前を歩くつむじを見下ろす。

 はい、だいぶ正気に戻りました。

 どこに向かっているのかというと、俺たちプレイヤーに与えられている宿場町である。

 長屋のような場所だ。ワンプレイヤーに一戸の宿。ゲームでは、宿場町へのエリア切り替えで、いきなり自分の部屋となっていたんだが、ここは現実、ちゃんと歩いて向かうことになるらしい。

 ちらほらと空き家が見える。満杯になったらどうすんのかな。

 と、ディーナが立ち止まった。


(ここが俺たちの家か)


 見上げると言うほど大きくもない。

 ほぼ真四角の一軒家だ。隣との間は体を捻れば通れるほどの隙間があるだけ。

 ブロックをくり抜いて作ったみたいな?

 というか、窓も穴が開いてるだけ。

 入り口もだ。


(空き巣入り放題じゃん?)


 と思って入り口をくぐろうとすると、一瞬魔法陣が浮かび上がった。

 なんの抵抗もなく、すり抜けることができたけど。


(防犯チェックってわけか)


 ちなみに俺たちは、同じ家で暮らしてる……らしい。

 ゲームでは、別アカウントで倉庫キャラを作り、恋人設定にしてあった。


(げ、マジかよ)


 そうすることで、ハウスの保管量が、2キャラ分に増えるからだ。

 そうしないと、あっちとこっちの荷物をやり取りするために、キャラを変えてログインを繰り返すことになる。

 夫婦とか兄妹設定とかいろいろあったけど……今俺は猛烈に悩んでいた。

 ばふっと、奥にある部屋のベッドに、ディーナが腰掛けた。

 かちゃかちゃと鎧を外し出す。

 俺の前だというのに無防備で……。


(俺、こいつを好きにしちゃって良いの?)


 喜んでるわけじゃない。

 むしろ逆だ。


(ないわー……)


 客観的に見て思った。

 自分で演じてたくせにって話だけど、客観的に見て見ると、こんな子、現実にいるか!? って話だった。

 どう見たってキャラ作ってるよ、なんか被ってるよ。

 仕草の一つ一つが媚びててキモイよ。

 しかもそれやってたのが自分だったわけでして、やべ、死にたくなってきた。


「くぁあああああ!」


 全身をかきむしって転がってしまった。

 ディーナがびくっと怯えて身を引くのが見えた。


(俺、こんなだったの!? こんなこと、男相手にやってたの!?)


 いくら最終目的が女の子とのキャッキャウフフだったとしてもだ。

 ネカマスキルを上げるための特訓だったとしてもだ!?

 なにこれ!?

 確かにさっ、騙されてる-!

 (*゜ε゜*)プププー。

 とかやってたけどさー!

 これ、人に知られたら、俺の方がヤバくね!?

 俺の黒歴史がまた一ページ。


「な、なんなの!?」


「なんでもないです、お嬢様」


「お嬢様!?」


 頭打った!? って言わんばかりの態度ですな。

 わかってます。自分でもおかしくなってます。


「それで、依頼の方はどうなったんだ?」


 俺が大きくため息を吐きながら聞くと、ディーナは……。


「ちゃんとファーガスまで送り届けました!」


「そっか、そりゃよかった」


 俺一人が失敗したってことになるんだよな。

 向こうまで行って、テレポート系の魔法で戻って来たって感じかな。

 そんなことを考えていると……。


「なんであんたは」


「え?」


「できるくせに、途中でやめちゃうのよ」


「…………」


「……ばーか」


 つっかれた、眠いと、ディーナは布団に倒れた。

 大の字になって眠ろうとする。


「なんか人の名前叫んだかと思ったら、逃げてっちゃうしさぁ」


 なんだこいつ?

 赤くなってる?


「靴脱げよ」


「外して~~~」


「よしわかった!」


「え!?」


 小さな体を抱え込むように覆い被さって、膝裏に腕を入れて持ち上げパンツまる見えで逆さにしてやったら……。


 ──ゴッ!


 肘打ち、股間に食らいました。

 だから、スキル255、カンスト攻撃は、突っ込みとしてはきびしいです……ガクッ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ