そのいちー
ありがちな異世界転生ものをやりたくなって、おかしな方向へ全力疾走中w
剣とか魔法とかある以上、流血もあるかと思うんでご注意を。
「なぜだぁ!」
俺は両膝を屈し、両拳を激しく地面に叩きつけた。
「なんで倉庫キャラの時に! こんなっ!?」
そう、今の俺は倉庫キャラだった。
どのゲームにも、一つのキャラが持てるアイテムには限界がある。
そんなときに、アイテムを預けておくためだけに作るのが倉庫キャラだ。
まあ俺の場合は、ゲームに慣れるために作った最初のキャラだってだけなんだけど。
そんなだから、作りは超適当だ。
顔とか体とかは初期設定のまま。
メインキャラに持たせるかどうかと悩んだスキルを試すため、職業も転職ばっかりで、パラメーターだって遊び丸出しで酷いもんだ。
そんな感じだから、無駄スキルも多すぎる。
というか、だ。
「こんなこともあろうかと! いや、こんなことがきっとあると信じて俺はっ! うぉおおおっ、ディイイイナァアアアアア!」
魂からの号泣だった。
ちなみに恋人の名前じゃない。
俺のメインキャラ、ディーナちゃんのことだ。
きっとある。異世界転生、きっとあるよ!
そう信じてカンストしたディーナちゃん(17才:女エルフ)は、仲間内からエロフとかエロスとか言われるほど完璧な……ネカマキャラだった!
くっそ! マジくっそ!!
女性プレイヤーからも見破れないほど、完璧な演技を身につけた俺の苦労をどうしてくれる!?
女ってのはな! 男と体のつくりが違うんだよ! だから立ってても、背筋の伸び方とか違うんだよ! 足運びとか違うだよ!
ちょっとした仕草どころじゃないんだよ!? 実生活にまで仕草が現れて、オカマと疑われた俺の苦労はどこ行った!?
VRMMOの弊害、ここにあり……ちなみに声は、変声ソフト使ってた。
「あー、マジウゼェ……」
俺、女の子になって、可愛い子とお近づきになるんだ……。
夢も希望も潰えました。
俺は右に林、左に平野、前後の地平の先に山、という場所を伸びる道の真ん中、立ち上がった。
「とりあえず街行くか……」
ふらふらと歩き出す。
ぽかーんとこっちを見ていた、商人の馬車っぽいのプラス護衛団とそれを襲っていたらしい盗賊団の間を抜けて。