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再会

夜のスラム街を歩くジャックとロイの二人は、楽しげに会話をしていた。


「ロイさんはいつ死神になったんですか?」


「かれこれ200年以上前になるよ。」


「200年!?そんなに前から死神だったんですか!」


「ジョニーのオッサンなんて500年以上になるだろ。」


「歳はとらないんですか?」


「死神になった状態から歳はとらないよ。死神には寿命がないからな。」


「じゃあ、俺もですか?」


「あぁ。まさに、不老不死ってやつだ。」


ロイの言った言葉に嬉しさと不安が入り乱れていた。

良い言い方をすれば死なない。

悪い言い方をすれば死ねない。

不老不死は人が長年、夢見ていたものだった。

しかし、いざ自分が不老不死になると遥かに不安の方が大きいのだ。


「さっきロイさんが言っていた、死神は死なないって本当なんですか?」


「死神が死ぬ方法はある。圧倒的な死気を浴びた時か自ら死を選ぶときだな。」

「圧倒的な死気?」


「自分の死気を遥かに上回る死気で攻撃された時は、自分の死気が消滅する。死気の消滅は死神にとって死を意味するんだ。」


「じゃあ、死を選ぶってどういう事です?」


「自分で死気を消すんだ。これは強者じゃないとできない技だ。」


ジャックはますます、死神が不思議な存在だと認識した。

生きようと思えば永久に生き、死のうと思えばすぐに死ねる。

人間に近く、遥かに遠い生死観だった。


「死神って不思議ですね。」


「まぁ、焦らなくても時間はたっぷりある。気長に考えてれば良いさ。」


ジャックとロイは一軒の廃墟で足を止めた。

その廃墟は昔、何かを作っていた工場で、今は誰も使っていない廃墟だ。


ロイとジャックは工場の中へと移動した。

「何か空気が重い場所ですね。」


「何度来てもあの二人の考えてる事はわかんねーよ。こんな不気味なところをアジトにするなんて。」


ロイとジャックは古びた工場内での不気味な空気とズールとブラキの考えていることが他の死神と少し違っていることに気づいていた。


「不気味で悪かったなボウヤ。」


「!?」


ロイは声のする方を振り向くと、死神独特のスーツに身を包んだ男を見つけた。


「ズール!!」


ロイは大きな声を出した。


「久しぶりだな。」


「脅かすんじゃねーよ!ビックリするだろ!」


ロイはスゴい形相でズールをまくしたてていた。


「そんなに怒るなよ。」


まるでロイが子供扱いを受けていた。

ズールは白人でガタイもよく、軍人の様な体つきをしていた。

「こんなところに何の用で来たんだ?」


「色々あるんだよ!あんたら2人が酒場に顔を出さないから!」


ロイはズールにジャックを紹介した。


「ほぅ。これが新人のジャックか。」

ズールの視線はジャックの方を見ている。

腕が太く、身長の高いズールの視線は自然とジャックを威圧しているかのようだった。


「は、初めまして。ジャック=デップです。」


「話は聞いてるよ。ジョニーにスカウトされたんだってな。よろしくな。」


ズールは笑顔で手を差し出し、握手を求めてきた。


ジャックは握手にただ素直にしたがい、笑顔で答えるしかない。

握ったその手は大きく、硬く、何処か頼もしい手をしていた。


「所でブラキはどこにいるんだ?」


「あいつなら上にいるよ。寝てるんじゃないか?」


どうやらブラキは工場の二階にある事務所として使われていた場所で仮眠を取っているようだった。


「ジャック!ブラキに会いに行くぞ。」


ロイは二階へと続く階段を上がり、古びた部屋へと足を進めていた。


ズールもロイとジャックの後を追うように歩き始めた。


「ジャック。死神になった素直な感想は?」


突然、歩いているジャックの背後からズールの質問が飛んできた。


「素直な感想と言われても、まだ夢を見ているみたいで何とも言えませんよ。」


「1つ面白いことを教えよう。」


「なんです?」


「死神をやっていたら大きな壁にぶつかることがある。人間の時でさえ壁にぶつかることはよくあるが、死神になれば尚更だ。そんな時は、夢を見ている。これは夢なんだと思うことだ。そうすれば少しは楽になる。」


ズールのアドバイスはまるで、自分を信じ込ませる暗示のようなものだった。

それでも、今のジャックに取ってはとても重要な事であり、大切なアドバイスに他ならない。

ジャックはただうなずき、前を向き歩いていた。

「この部屋でいいのか?」


ロイは部屋のドアの前で立ち止まった。


「あぁ。この部屋だ。」


ロイはドアをノックするとドアノブを握り、ゆっくりと開けた。


「ロイか…」


低い声が部屋の中から聞こえてくる。


「今日は新人のジャックを連れてきた。」


ジャックは頭を下げ、紹介をした。


「アンタがジャックか…」


ブラキは黒人でズールより一回りデカイ。

いかにも怪力の持ち主であるかのような重圧のある空気を持っている。

ジャックは、ズールとブラキの2人がしにがみの中でも戦闘向きの死神だということがようやく理解できていた。

まるで、同じ死神でも造りが違う。

姿、形は似ていても中身が違う。

ジャックはそう思った。


「ズールとブラキに聞きたいんだけど、悪霊に手を焼いたってホントなのか?」


「噂話は広まるのが早いな。」


ズールは皮肉混じりに答えた。



この後のズールの言葉でロイとジャックは凍りつくことになるのだった。

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