覚醒
ロイとジャックは構えていた。
いつ攻撃が来てもいいように、どんな攻撃にも耐えるつもりだった。
「いいか!覚悟を決めろ!」
「そんな無茶な!」
ジャックはロイの言われるがままになっていた。
「コロス…コロス!!!」
悪霊はロイの行った通り、ジャックを狙っていた。
「いくぞジャック!」
ジャックは精一杯の力を込め、槍を立ててガードした。
「ウウオォォォーー!!」
ジャックは今までに出したことのない声で叫んでいた。
「喰らえ悪霊ーー!!」
ロイは鎌を思いっきり振りかぶった。
「コシャクナ…!!」
「今だ!」
ロイがジャックに合図を送る。
「喰らえーー!!」
「ナニ…!?」
ロイの攻撃は悪霊には通じなかったが、ジャックの槍は悪霊を完全に貫いていた。
「ソンナ…ソンナバカナ…!!!!」
悪霊は雄たけびを上げながら、煙になり消えていった。
「勝った…」
そこには、座り込んだジャックと尻もちをついているロイがいた。
「あははははっ!」
ロイは笑っていた。
ジャックはと言うと、座り込み、夢でも見ていたような顔をしていた。
「なにボーッとしてんだよ!お前は悪霊に勝ったんだ!」
ジャックは一瞬の出来事に頭が真っ白になっていた。
「俺…勝ったんですか?」
「あぁ!お前がとどめを刺したんだ!」
ジャックは少し笑顔になった。
辺りを見回せばもう暗くなっていた。
「暗くなってきたな。」
ロイはそう言うと、立ち上がりジャックを抱え起こした。
「急ぐぞ。ズールとブラキに会いに行くんだろ?」
「そうだ!忘れてた!」
ロイはビルの屋上から飛び降りて、ジャックを手招きしていた。
「早く降りてこいよ!置いて行くぞ!」
「まったく…」
ジャックは屋上の手すりに立ち、下を眺めた。
「やっぱり怖い…」
「おい!お前はもう死神なんだ!もう死ぬことはない!思いっきり飛び降りろ!」
「くそっ!」
ジャックは思いっきり飛び降りた。
「あいつなかなかやるな…」
ロイはジャックの根性に感心していた。
ビルから飛び降りたジャックは、地面に近づくとゆっくりとスピードが落ちているのが分かった。
ジャックは綺麗に着地した。
「ズール達のアジトまでもうすぐだ!いくぞ!」
ロイとジャックは再び歩き始めた。
「ロイさん。なんで俺の攻撃が悪霊に通じたんですか?」
「おそらく、属性だ。」
「属性?」
「死神にも色々な種類がある。例えば、ズールとブラキは戦闘向きだし、俺はサポート向き。それに、死気には属性と言って、人間で言う所の、火、水、土、風みたいなもんだ。」
ロイの説明は大ざっぱだった。
「詳しく聞いてもいいですか?」
「そうだな。まだ時間があるし。」
ロイは死気の属性について話し始めた。
「属性には5つある。一つはクローラ。悪霊の持っている力だ。二つ目はイエスト。天使の持つ力。三つ目がグリーニー。聖霊の力。四つ目はブルトン。人間の持つ力だ。そして最後がゴーデン。神が持つ力。もちろん、中には例外はあるけどな。」
「難しいですね…」
「そんなことはない。ジャンケンと同じさ。」
「ジャンケンと!?」
「イエストはクローラに強いし、クローラはブルトンに強い、ブルトンはゴーデンに強い。グリーニーは基本的に全てに対して弱点は無い。」
「じゃあ、グリーニーは最強じゃないですか!」
「所がそうはいかない、グリーニーは弱点がないものの、力が弱い。」
「でも、神の力のゴーデンは、人間の力のブルトンに弱いって、神より人間のほうが強いってことですか?」
「そういうことじゃない。神にとって人間なんて弱き命に入る。だから、力を抑え、人間に対して攻撃や、力を使わないようにしたんだ。」
「じゃあ、最強はやっぱり…」
「ゴーデンだな。」
二人は、やっと死神らしい会話ができるようになっていた。
「でも、さっきの俺の力は…」
「簡単な事さ。大天使ノワールは悪霊に力を与えたろ?つまり、イエストとクローラを悪霊は持っていた。死神の俺はイエスト。同じ属性同士は通じない。逆に悪霊が攻撃してきた時は、クローラだ。だから俺たちはダメージを受けたんだ。」
「でも、俺も死神ですよ!まだ一人前じゃないですけど…」
「それがよかったんだ。まだお前は完全に死神じゃない。だから、イエストとブルトンが入ってた。だから、クローラとイエストを持っている悪霊に、イエストとブルトンを持っているジャックが衝突した場合…」
「イエストはクローラに強く、ブルトンとイエストが衝突する!」
「そうゆうことになる。」
「天使の力に人間の力が勝ったんだ!」
「ただ今回は、運が良かっただけだ。相手が悪霊だから助かったようなものだからな。」
こうして少しずつジャックは成長していった。
ロイも同じような時期があった。
ジョニーに質問攻めをしていた時がなくつかしく思えてきた。
二人は話をしながらブラキとズールの待つアジトへと向かうのであった。