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悪霊

黒い煙が集まりはじめ、人の形へと姿を変えた。

人の形をした煙の中から声がする。


「ナゼワタシガ…」


その声はまぎれもなく若い女性の声だった。


「ナゼワタシガ…シナナケレバイケナイ…」


はじめてみる悪霊の姿にジャックは後ずさりしはじめた。


「ジャック!ペンを持て!十字架のペンだ!」


ロイはすでにペンを握っていた。


「そんなペン一本でどう戦うんですか!」


ジャックは内ポケットにしまってある十字架のペンを取りだし、右手に握った。


「死神はこうやって戦うんだよ!」


ロイは全身に力を入れると一瞬、爆風のような風が吹いた。


「ロイさんのペンが…」


ジャックは腰を抜かす勢いで座り込んでしまった。


「ワタシハ…シンデナイ…シニタクナイ…」


悪霊はゆっくりとロイに近づいてきた。


「残念だな悪霊さん。俺が相手なのが運のつきだ。あきらめな。」


ロイの手にはさっきまでペンを握っていたのに、今は自分と変わらない大きさをした鎌を持っていた。


鎌の刃の部分は赤く、まるで返り血を浴びたような色をしていた。

「これが死神の武器だ!」


悪霊の黒い影はゆらゆらと揺れ、ゆっくりとロイに近づいていった。


「シニタイ…モットシニタイ…」


「望み通りにしてやるよ!」


ロイは大きな鎌を悪霊めがけて水平に斬りかかった。


「こんなもんちょろいな。」


「ロイさん後ろ!」


「!!」


真っ二つに切れたはずの悪霊は、また一つの黒い塊に変化した。


「モット…チカラガ…ホシイ…」


「そんなバカな!霊気を直接攻撃できるはず!消滅しないはずがない!」


やがて、黒い塊は犬の姿に変化した。

その姿は、全身が黒く、かろうじて犬の姿をしていることしか分からなかった。


「コロス…」


犬の姿をした悪霊は猛スピードでロイの腹部へ突進した。

「くそっ!」


ロイはとっさに鎌の柄の部分で腹部を守り、ダメージを抑えた。


「シニガミニシテハヨワイナ…」


「悪霊の分際で偉そうなこと言うんじゃねーよ!」


ロイは鎌を振りかざし、悪霊の頭をめがけて振り下ろした。

「マダマダ…」


悪霊は頭から真っ二つに別れた。

しかし、またしても煙のように一つにまとまり、黒い犬の姿に変わった。


「どうなってんだ!?鎌が効かない!?」


「モウオワリカ…」


ロイの攻撃は全く聞かなかった。


「そんなはずはない!なぜ霊気が効かないんだ!」

悪霊の周りに異変がおきはじめていた。

「ロイさん!俺はどうすればいいんですか!戦い方が分からない!」


ジャックはロイと悪霊の戦いを見て、自分も戦わなければいけないと思った。

しかし、ジャックはペンを握っているだけで何の変化もない。

ロイの攻撃は通用しなかった。


「ペンを握ったまま想像しろ!今の自分にどんな武器が必要なのか!」


ロイは悪霊と戦いながらもジャックに説明をしていた。


「自分にどんな武器が必要なのか…」


ジャックの動きが止まった。

ロイは戦い、ジャックはロイを助けられずにいた。


「どうすれば…ロイさんを助けられる…どうすれば…」


ジャックは絶望の中にいた。

何もできない自分がいる。

助けられない自分がいる。

ジャックは自分の不甲斐なさに溺れていた。


「ジャック!何してんだ!武器を生成するんだ!」


「無理だよ…そんなの俺にできるはずがない…」


「初めは皆そうなんだよ!」

その時、悪霊の向きがジャックの方へと変わっていた。


「オマエ…コロス…」


悪霊は猛スピードでジャックの方へ突撃してきた。


「ジャック!危ない!」


ロイは一瞬のスキをつかれ、ジャックの方へと向かう悪霊に対応できなかった。


「ウワァー!!」


ジャックの悲鳴がとどろいた。

死神になりたての青年に悪霊は襲いかかったのだ。


「ナニ!?」


悪霊の声がロイとジャックに異変を告げた。


「ジャック!目を開けろ!」


ジャックは自分の異変にようやく気が付いたようだった。


「これは…!」


悪霊の攻撃を大きな槍で防いでいた。


「ジャック!武器を生成できたんだ!攻撃しろ!」


「ソンナバカナ…!コンナコゾウマデ…!」


悪霊は死神の強さにやっと気づいたようだった。


「これが俺の武器!?」


ジャックもまさか自分が武器を生成出来るとは思っていなかったようで、驚いた表情は誰の目でも確認できた。


「フッ…」


悪霊はすぐに後ろに下がり、ジャックと距離をとった。


「何をやってんだよ!攻撃するチャンスだったろ!」


「すいません!あまりの出来事で…」


ロイとジャックは悪霊と対峙していた。


「いいかジャック。奴はまたお前に攻撃してくる。二発だけ!二発だけ奴の攻撃を防いでくれ!二発目の攻撃を防いだら、俺が奴に攻撃する。そしたら奴は俺の方を振り向くだろ。その時がチャンスだ!お前が奴を倒すんだ!」


ロイは横に並んでいるジャックへ小声で作戦を伝えた。


「そんな!二発も攻撃を防ぐなんて無理ですよ!それにトドメをさせなんて!無茶ですよ!」


「心配すんな!お前が行けそうにない時は俺が行く!とりあえず、二発だけ頑張ってくれ!」


ジャックは不安だった。

霊気の攻撃も、ロイの攻撃も通用しない相手にジャックは勝てる気がしないでいた。

はたして、ロイの作戦は通用するのか?


はたして、ジャックの武器は通用するのか?

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