街
屋上にいる2人と1匹。
正確には2人と何者かがいた。
「わざわざこんな危険な所まで何をしにいらしたのです?」
ロイは戦闘態勢に入っていた。
「そんな怖い顔をしなくてもいいでしょ。私は悪霊なんかじゃないんですから。」
ロイはそれでも構えをとかなかった。
「ロイさん。この猫の言う通りですよ。」
「何!?」
「手首をを見てください!」
ジャックとロイの手首にはラグーンが巻いてある。
「ラグーンが反応してない!」
ラグーンは白いまま色は変化していなかった。
「それでも、信用はできない!俺たちが見えるということは只者じゃない!」
「よく言いますね。死神こそ只者じゃない。人のことは言えないだろ?」
ジャックは座り込んだまま動けないでいた。
隙を見てロイのもとへ行こうとしていた。
「何も警戒するかとはない。向こうに行くといい。」
黒猫はジャックの心を読んだのか、ロイのもとへ移動するように言った。
「何故俺たちの後をつけた?」
「おかしな質問をする死神だな。自分の家の庭に他人が入ってきたらどうする?注意深く監視し、追い出すだろ?それの何が悪い?」
ロイは何もいいだせなかった。
彼の言っていることは正論だったからだ。
「目的を聞こうか?一体何をしに来た?」
「仲間に会いに来た。」
「仲間?死神の仲間か?確かにいたな。ズールとブラキとか言う奴が。」
「その二人に会いに来た。」
「それだけか?それだけじゃないだろ?」
「何が言いたい。」
「まさか。スラムの人間を死昇させに来たわけじゃあるまいな?」
「それが俺たちの仕事だ。」
「だったら他をあたれ。俺の街の人間には手を出すな。」
「そんなことあんたにとやかく言われる筋合いはない!」
「悪いが、この街で好き勝手やられては困る。それでもやるというのなら私にも考えがある。」
「その考えを聞かせてくれないか。」
2人の間で異様な空気が漂いはじめた。
それまで、寒いとは感じなかったが急に寒気がし始めた。
「今日の所は一旦お互い引こうじゃないか。ここで争っても意味はない。ただ好き勝手にはさせない。」
ロイは戦闘態勢を解いた。
「そう。それでいい。力で解決するのは好きじゃない。分かるだろ?」
黒猫はロイとジャックにゆっくりと近づいていった。
「悪くは思わんでくれ。死神は死神のルール。我々には我々のルールがある。」
ロイは黒猫の話を聞いていたが、府に落ちないでいるようだ。
「黒猫さんよぉ。あんた何者だ?ただの黒猫じゃないとして死神でも悪霊でもない。それに゛俺の街゛って言ったよな?」
黒猫は尻尾を立て鳴き声をあげた。
「あぁ。この街は俺の街だ。この街に住む猫なら知っている。」
「悪いな。俺達は猫じゃない。それに猫が知っていたとしても俺達は知らない。猫の世界が全てなのか?」
黒猫は笑っているようにみえた。
下を向き、体が小刻みに震えていた。
「お前たちは私を猫だと言うのか?死神とは実に面白い。」
黒猫は二本足で立ち上がり大きな鳴き声をあげた。
その時、空の雲の隙間から黒猫を照らす一筋の光が差し込んだ。
その光は強力で太陽を間近に見ているようでさえあった。
ロイとジャックは手で光をさえぎり顔をおおった。
「これが真の姿だ。これでも猫に見えるか?」
光が収まり人の形をした影が見える。
「あんたはまさか!?」
「名を名乗った方がいいかな?」
光の中から黒髪で長髪の男が現れた。
不思議なことにその男の背中には白い羽がはえている。
「私の名はノワール。大天使だ。」
「何で大天使がこんなところに!」
「さっきも言っただろ?この街は私の街だ。」
「どういう意味だ!大天使の管轄なんて聞いたことないぞ!」
「正確に言うなら担当だ。」
「担当!?一体何のだ!」
「アンジェラ作戦だ。」
「アンジェラ作戦!?」
「そう。この街の人間共はクズでどうしょうもない。ゴミだ。ゴミは燃やして捨てなければいけない。」
大天使ノワールは腕を組みロイとジャックの周りを歩きはじめた。
その威圧感は圧倒的だった。
目を合わせることすらままならない。
近づくことすらできないでいた。
二人の手の中は汗でにじんでいた。
「そこで死神諸君。私は考えたんだ。一人一人ゴミを燃やすのは時間がかかる。そこでだ。この街ごと燃やすことにした。」
「何だと!?」
「そう言えば。君たちの仲間は無事か?ズールとブラキとか言う死神だよ。」
「あんたズールとブラキに何をした!」
「奴らは大天使の私にたてついてきた。だからと言って私が相手するわけにはいかない。そこで、たまたま居合わせた悪霊に力を与えたんだ。なかなか面白い戦いだったよ。」
ロイとジャックは寒気がしていた。
これが天使のやることなのか?
悪霊よりも質が悪くおまけに力が協力だ。
「街ごと破壊するなんて大天使のやることじゃない!あんたは悪霊と同じだ!」
「よく言ってくれたね。まぁいい。君達の相手を用意した。存分に楽しんでくれ。」
大天使ノワールは笑顔で二人に手を振り、小さな明るい玉になり空へと物凄い速さで上がっていった。
「ロイさん!あれ!」
ジャックの指差した方を見ると、黒い煙のようなものが集まりはじめていた。
その煙はだんだん形を表し、やがて見てはいけないものへと姿を変えていくのであった。