光 二十
「おはよー!神代ちゃん、神原ちゃん、同伴出勤?」
「おはよう、…。同伴出勤って何だ?」
明るい朝の日射しのもとに。病院近くの道を歩いていた神代と神原に、辰野が明るく声を掛けるのに。
首を傾げる神代に、神原が少し遠くをみる。
「ええと、…一緒に出勤する、ということでしょうかね?」
「ふうん、…。で、どうしたんだ、辰野、くっついてくるな!」
「えー、で、本当は何で一緒になってんの?神原先生、家こっちの方?」
「おまえな、…そーいう、こら、人で遊ぶなっ」
肩を抱き寄せて、頬にキスとかして遊んでいる辰野に、神代がうんざりしながらにらむ。
「いえ、…。実をいうと、昨日あれから、泊らせてもらいまして。それで、」
辰野に遊ばれている神代がつい面白くて、笑みを零してから、神原がいいかけるのに。
「神原っ!それはいうなっ」
「マンションから此処まで、案内してほしいと頼まれたんです」
「…――――神代ちゃん、マンションあれよ?見える?どーして迷うの」
辰野があきれて、此処からも見える高層のタワーマンションを指さす。それに、苦い顔をして横を向いて。
「いや、だから、…―――。そこはまだ、」
「そこはって、問題はどこにあるの?」
横を向いたまま勢いで神代が辰野の肩に回した手を振り切って。
勢いよく先に歩き出していく神代の背を見送って。
「おやおや、…いっちゃったよ。で、神原くん、理由はなに?」
神代の背を見ながら、神原の歩く隣に並んでいう辰野に。
「いえ、…その。多分、マンションの中が」
「中がって、…。そんな迷路なの?そこ」
神原が今朝も外へ出て、眉を寄せて立ち尽くしている神代を思い出して微笑む。
「ええ、まあ、…。もう何度か行かれれば、憶えられるんじゃないでしょうか」
「どうかな、それ、…――。あいつ、前にも手術室とICUへの行き方は憶えたけど、ロッカーとか食堂の場所はいくら言っても憶え無かったからな、…」
「そうなんですか?」
あきれてみる神原に神代の背をみながら深く頷く。
「自販機の場所とか、めし売ってる場所とか、そういうのは憶える気ないんだ。あいつと同じ大学で、おれがどれほど苦労したことか、…」
思い出してげんなりしている辰野に、神原が不思議そうに聞く。
「え?辰野さん、僕と同じ大学では?」
「そーだけど、あれからアメリカ留学したときに、あいつと居合わせてな、…――あれで、図書館とかは自動的にいけるんだぜ?ったく、腹立つなあ、…。思い出したら。よしっ!またおちょくっちゃれ!」
「…あの、――――元気だなあ、…」
先を早足で歩いて、相当前をいっている神代の背に、辰野が後ろから走り込んで突然抱き付く。
それに、振り向いて抗議している神代と。
―――それにしても、留学先同じだったんですか。
辰野先輩と神代さんが、と。
「それにしても、元気だ」
朝からテンション高いな、と二人を見ながら微笑んで。
それから、今朝のことを思い出していた。
まあその、はい。
それは、今朝、目醒めたときのこと、――――――。




