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光   作者: 高領 つかさ(TSUKASA・T)


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プロローグ

プロローグ



「きみが、いま気力もやる気も総て無くしているのは承知しています。ですから、ちょっと手を貸してほしいんです」

薄暗く広い室内に、向き合う壁際に立つ長身の人物が淡々と感情の伺えない声でいうのを、無表情に見返していた。

 陰になる人物の表情が見えないことも、何もかもがまったく響かずに。

 唯、その声を聞き流していたかれに。

 一枚の用紙が受け渡された。

「…――――――、…」

僅かに、視線が動く。受取った用紙に記された、ひとつの名前に。

 壊れたように反応の無かったかれの、微かな反応をしっているように、薄く微笑むように、その声が響いた気がした。

「その赤字で潰れかけている病院で、きみの同僚となる医師の名前です。きみにやる気がなくても大丈夫、そのままなら、その病院は一年もしない内に簡単に取り潰しになるでしょうから、やる気の無いまま赴任してもらって結構です。…唯、そうですねえ、―――」

シルエットになった長身の人物の表情を、初めてかれが仰ぎみる。

 それに、薄く笑む気配がして。

「きみがやる気の無いまま赴任してくれて、この系列病院が取り潰しになったら、僕としても、これ以上経費を使う必要がなくて助かります。ですから、きみが何もせずにいてくれて、よりそれが速まってくれればいいですね。ですが、―――そうですね。その同僚の先生は、経営の責任者に名を連ねてますので、負債を負うことになるでしょうね。経営なんて何も知らないのに、親戚というだけで、こんな病院に赴任させられて、随分と不運ですがね。まあ、それも運命でしょう」

「―――――…」

無言で見返すかれに、淡々としながら、どこか面白がっているような声でいってみせて。

「系列ではありますが、僕は負債を負う気はありません。グループ全体の利益が大切ですからね。経営が下手で、潰れそうになっている一総合病院など、むしろ潰れてもらった方が楽です。潰れる病院なんて、いまは珍しくないですからね」

手にした用紙を、かれが見直す。

 視線を落としたまま佇むかれに。

「では、よろしくお願いしますよ。神原くん」

 虚ろな視線を、感情の動かない視線を向けるかれに。

 いや、何か僅かに、動いただろうか?

 手にした用紙を握ったまま、立ち尽くすかれに。

 薄暗い室内に射し込む、斜めに窓を切り取る光が、長身の姿を浮き上がらせていた。

 立ち尽くすかれ、神原良人の姿を、―――――――。



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