グレースという人
グレース・イアサント・エルキュール。エルキュール公爵家の一人娘であったわがままな彼女は、この大国の王太子と生まれる前から婚約を結ばれていた。
「グレース様。貴方はいずれ王太子殿下と結婚するお方。この程度でめげてはいけません」
「…っ、はい!頑張りますわ!」
グレースは王太子と結婚する未来のために、努力を怠らなかった。
毎日王宮に上がっての勉強漬けの日々も笑ってこなしてみせた。
その分、両親からは甘やかされて育った。
グレースはやがてわがままで傲慢、しかし誰よりも完璧な淑女となった。
そんな彼女は、婚約者の王太子にも結構容赦がなかった。
「何故俺は王太子に生まれてしまったんだろうか…俺ももっと自由に幸せに生きてみたい」
「なにを弱音を吐いてますの?そんなことを言っている暇があるなら精進なさいな」
「…君は本当に、自分本位だな。慰めてもくれないのか」
「慰めても何にもなりませんわ。それよりしゃんとなさいな」
終始こんな感じだったため、彼女は王太子から嫌われていた。
だがそれでよかった。
自分が嫌われ役になって、それで王太子が将来立派な王となるなら本望だ。
ちなみに義弟にも容赦はなかった。
「姉上、一緒に遊んでください」
「私はそんなに暇ではないわ。貴方こそ遊んでいる暇があるなら勉強なさい」
「…姉上は、どうしてそんなに冷たいのですか?」
「冷たくなどないわ。貴方は我がエルキュール家を継ぐために引き取られた遠縁の親戚。本当の弟ではないもの」
「…っ」
そんな幼少期を過ごした彼女は、貴族の子供の通う学園に入る年齢になっても全く変わらなかった。
おかげで婚約者である王太子や義弟との仲は拗れていたが彼女は自分本位なので気にしない。
そんな時だった。
突然異世界から【聖女】が現れた。
聖女ユリア。異世界から来たという彼女は聖なる力を使い沢山の人を癒して人気を集めた。
そして特例として、貴族学園への入学も認められた。
自分の代わりに爵位を継ぐため養子縁組された遠縁の親戚である義弟ヒューゴ・イポリート・エルキュールと、自分の婚約者である王太子オノレ・エルヴェ・コンスタンタンを含むたくさんの貴公子から愛されるユリア。グレースはそれが気に入らなかった。
グレースはやがて、ユリアに対して学園内で陰湿なイジメを行う。
それはそれとして婚約者がいるのにユリアを愛するヒューゴやオノレは非難の対象にはなった。しかし、愛の前には関係ないらしい。
グレースはやがて、お決まり通りオノレやヒューゴを含めたたくさんの貴公子達に断罪された。それでも彼女が貴族令嬢であることには変わらなかったし、婚約破棄もされず、お咎めも謹慎処分だけだった。




